オンライン酒蔵留学とは?
オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」が生まれます。
離れて暮らす仲間と「たのしく学ぶ」ことで、いつものお酒がさらに美味しく味わい深くなっていきます。
・酒蔵見学に行ってみたいけど、時間が取れない…
・もっと色んな日本酒の知識を増やしたい!
・日本酒好きの仲間が欲しい!
こういった想いを抱えている方には是非おすすめの場です!!
46回目となる今回のオンライン酒蔵留学は、佐賀県多久市に蔵を構える東鶴酒造から野中社長にご登壇いただきました!
野中社長にご登壇いただくのは今回で2回目!2021年8月以来3年ぶりとなります。
蔵の歴史やお酒造りに対する想いなど改めてお話しいただきましたのでご紹介していきます♪
第46回 オンライン酒蔵留学
■日時:8月31日(土)19:00~
■登壇者:東鶴酒造 六代目蔵元 野中保斉氏
■参加留学生:21都道府県から47名
■留学内容■
<前半>
・東鶴酒造についてご紹介
・東鶴酒造のお酒で乾杯&ペアリング紹介
・質問タイム
<後半>
・留学生同士でディスカッションタイム
【今回の東鶴に合うペアリングは?】
・質問タイム
・まとめ
・次回予告
今回で2度目のご登壇となる東鶴酒造さんですが、今年の5月に行われたハンズオンSAKE企画【第2回 月間推し蔵ランキング(母の日におすすめの日本酒)】で東鶴酒造さんが見事1位に輝いたことから再度注目させていただき、リバイバルという形で登場していただきました!!
イケメン野中社長の人柄が画面越しに伝わってきて改めて東鶴酒造を推せる内容になったと思います♪
東鶴酒造(あづまつるしゅぞう)について
創業は、江戸時代末期の天保元年(1830年)。
蔵のある佐賀県多久市は、自然豊かな山々に囲まれたお酒造りに適した土地。
創業以来、経済酒を醸し地元に根差した酒造りを続けてきましたが、戦後のビール人気や日本酒需要の低迷のあおりを受け、平成元年には休業を余儀なくされました。
約20年の休業期間を経て、2009年(平成21年)、廃業寸前の状態の蔵を復活させたのが、六代目蔵元である野中保斉(のなかやすなり)社長です。
心機一転、新たなスタートを切った東鶴酒造は、今まで10mの深さだった井戸を、100mまで掘り下げて良質な軟水を汲み上げるなど、地の利を活かしたお酒造りと伝統を重んじつつ革新的な発想で着実に蔵を復活させていきました。
今では定番銘柄だけではなく、黒麹を使用した「東鶴 BLACK」や白麹を使用した「東鶴 WHITE」など毎年チャレンジシリーズと題して、これまでになかった日本酒造りに励み、日本酒の楽しさを提供してくれています♪
【東鶴酒造】
〒846-0012
佐賀県多久市東多久町大字別府3625-1
TEL:0952-76-2421
FAX:0952-76-2432
HP:http://azumatsuru.com/
“友人の母の一言”が日本酒造り復活のきっかけ
窮地に陥っていた蔵を見事復活させた野中社長ですが、実はもともと日本酒は苦手だったとのこと(笑)
野中社長の中での日本酒は、悪酔いする飲み物というイメージでした。
そのため蔵を継ぐ意思も日本酒造りを復活させる選択肢も毛頭なかったようです。
そんな中、友人の母から
「佐賀県内で頑張っている酒蔵があるから見学に行ってみたら?」
と助言をもらいます。
その酒蔵というのが佐賀県唐津市にある「小松酒造」です。
小松酒造もかつては酒造りを休止し廃業の危機を迎えていましたが、脱サラして蔵入りした七代目蔵元が見事盛り返した復活蔵。
そんな小松酒造の代表銘柄「万齢(まんれい)」を飲ませてもらった野中社長は、そのきれいなお米の旨味と香りの純米酒の美味しさに衝撃を受け、“今まで自分が飲んできた日本酒は何だったのか…”と考えを覆されました。
このことがきっかけで日本酒造り再開への一歩を歩み始めます。
当時、日本酒に関しての知識がゼロに近かった野中社長は、東京の醸造試験所で行われていた研修に参加し、実技・座学を通してお酒造りについて一通り学びました。
しかし、それだけでは現場レベルの酒造りを体験できないため、代表銘柄「貴(たか)」で知られる永山本家酒造場(山口県)にワンシーズン修行させてもらうことに。
今では経営者自らが杜氏を務める蔵元杜氏の酒蔵は珍しくないですが、当時はあまり多くなく、若くして取り組んでいた永山本家酒造場のスタイルは野中社長にとってとても勉強になったと振り返ります。
こうして修業期間を終えて蔵に戻った野中社長は自ら杜氏となり、自身が目指す美味しいと思える日本酒造りをスタートさせます。
仕込み水と相性のよい米を探し、製麹(せいきく)の工程を見直すなど試行錯誤を繰り返して復刻した「東鶴」は、徐々に消費者に受け入れられ、初年度わずか25石だった生産量が6年目には220石にまで増えるなど着実に軌道に乗せていきました。
日本酒造りを再開して16年。
東鶴酒造は再び佐賀県を代表する酒蔵へと返り咲き、多久市の町おこし【多久未来プロジェクト】に参加するなど地域に根差した酒造りを続けています。
苦難を乗り越えた先に見えたスタートライン
蔵を再建してようやく軌道に乗ったと思った矢先の2019年(令和元年)、東鶴酒造は「令和元年八月九州北部豪雨」の被害に遭います。未曽有の水害でした。
蔵の隣を流れる川が越水し、ものすごい勢いで流れ込み成す術もなく蔵全体が膝下浸水となりました。
物は散乱し、内部は泥だらけ。ほとんどの機械が損傷するなど絶望的な状況。
蔵の存続を諦めかけますが、地域や同業者の方々、クラウドファンディングの支援などにより東鶴酒造は再び息を吹き返します。
復興後、数年間は水害の泥水や雑菌の影響によりお酒が濁ってしまうという現象が起きてしまったため設備を一新することに。
麹室を2階に新築し、薮田式自動醪搾機を導入、仕込タンクなどがある部屋を大きなプレハブ冷蔵庫で囲い清潔な環境に整えました。
これにより今までと発酵の仕方が変わり、クリアでお米の味わいをピュアに感じられるお酒になったとのこと。
野中社長の目指す理想のお酒に近づいたと思いきや、自身の中での評価は60点ほど。
これには、酒造りの環境、設備を整えたことによって“ようやく酒蔵としてスタートラインに立てた”という想いがあったからこそ。
酒造りの環境を整え、今後、蔵人としての技術的な面が合わさっていくことで理想のお酒に近づいていくと野中社長は考えます。
苦難を乗り越え、進化した東鶴酒造は今後私たちにどのような日本酒を楽しませてくれるのか?
期待が膨らみます♪
東鶴酒造の日本酒2本で乾杯!!ペアリングもご紹介♪
【1本目】 東鶴 THE ORIGIN 山田錦
これまで定番商品としてあった「東鶴 純米酒」、「東鶴 純米吟醸酒」を廃止し、東鶴酒造の新たな看板商品として誕生したのがこの【東鶴 THE ORIGIN(ジ・オリジン)】!!
佐賀県産山田錦を使用し、クラシカルな製法である“生酛造り”にて手間暇かけて醸されたお酒です。
一般的に生酛造りで醸された日本酒は野生的な味や香りが感じられますが、このTHE ORIGINは生酛の乳酸菌の良いところだけを活かし味わいをクリアにしています。
お米の味わいをストレートに楽しめるまさに東鶴が求めていた新たな看板商品にふさわしい集大成と呼ぶべきお酒に仕上がっています!
定番酒をTHE ORIGINにリブランディングした際、ラベルデザインもリニューアルし看板商品としての存在感を強調しました。
また、敢えて純米酒などと表記しないのは、純米酒や純米吟醸などの先入観に捉われず、純粋に「東鶴」として飲んでもらいたいという気持ちが込められています。
そんな東鶴酒造自慢のお酒「東鶴 THE ORIGIN 山田錦」を是非ご賞味くだだい♪
■留学生の感想■
出来れば赤色のラベルにしてほしいです(笑)
「東鶴 THE ORIGIN 山田錦」と相性の良いおつまみは!?
東鶴 THE ORIGIN 山田錦 ペアリング
- 豚バラ大根の麺つゆ煮つけ
- 冷しゃぶ
- 焼き鳥(塩系)
THE ORIGINは、開栓後にガス感を感じるほどフレッシュなお酒なのでさっぱりとしたあっさりめの料理やおつまみに合わせるのがおすすめです♪
定番の焼き鳥や夏にぴったりな冷しゃぶなど肉の旨味を噛みしめながらクリアなお米の旨味が洗い流してくれる。
まさに至福のひとときを味わえます!
燗をつけて味わいの変化を楽しむのも最高です♪
【2本目】 東鶴 純米生 Spring Sun
原料米の「春陽」からちなんで名づけられた純米酒【Spring sun】。
実はこの春陽、酒米でもなければ食用米でもありません。
血糖値の高い方が糖質を気にせず食べられるように開発された病態食用米「低グルテリン米」なのです。
そのためお酒を醸すとアミノ酸度が低くなり、雑味もなく、ライチのような軽やかな香りとなります。
しかし、アミノ酸度が低いと旨味が感じにくくなるため、このSpring Sunでは日本酒度を低めに設定し、“甘味”で旨味部分を補うことにしました。
そして酸度を高めにし、キレ味で引き締めてくれるバランスの取れたお酒に仕上げたのです。
東鶴酒造らしいモダンなSpringu Sunは非常に飲みやすく、日本酒に抵抗がある方や女性などにおすすめできる一本となっています♪
■留学生の感想■
時間が経つにつれて味わいが顕著に変化するお酒だと思いました。
「東鶴 純米生 Spring Sun」と相性の良いおつまみは!?
東鶴 純米生 Spring Sun ペアリング
- 白身魚のカルパッチョ
- チーズ(カマンベール等)と生ハム
- 蒸し鶏のサラダ
爽やかな味わいのSpring Sunに合わせたいのはやはりさっぱりとした酸味のあるおつまみでしょう。
純米酒ながら白ワインのようなテイストもあるためカルパッチョやチーズ、生ハムなどは間違いないです!!
東鶴酒造の直売所【酒といろいろ】
2024年2月、東鶴酒造では、従来より事務所兼直売所として使用していた建物をリニューアルし、「酒といろいろ」として装いを新たに直売所がオープンしました。
【酒といろいろ】という店名には、野中社長の酒蔵としてお酒だけを売るのではなく“東鶴にまつわるプラスαを発信していきたい”という想いが込められています。
その中でも注目なのが、東鶴酒造の酒粕を使って造られた赤酢です。
この赤酢は、米どころである佐賀県を清酒王国とし、赤酢の産地とせんとする【佐賀県赤酢プロジェクト】によって造られたお酢で、東鶴酒造はじめ県内の酒蔵5社が参加し、それぞれの酒粕で造られています。
酒蔵の酒粕を1年以上熟成させ、自然と酢酸菌のチカラだけでお酢を造る日本古来の伝統製法「静置発酵法(せいちはっこうほう)」で発酵90日、熟成90日かけて造られるため、まろやかな風味と旨味成分が多いのが特徴です。
また、健康効果が高いとされている黒酢よりも美容・健康成分が多いのも魅力的。
赤酢は、江戸前寿司のシャリに使われることで有名ですが、その他にも炭酸で割って飲んだり、餃子のタレや唐揚げにかけたりなど汎用性に優れた調味料なので、是非みなさんもこの機会に赤酢デビューをしてみてください♪
酒といろいろでは、赤酢以外にも酒粕を利用したかりんとうやビスコッティなどのお菓子も販売されています。
今後、東鶴酒造からどんな「いろいろ」が発信されるのか楽しみですね♪
【留学生で考える】日本酒「東鶴」に合うペアリングは?
オンライン酒蔵留学の魅力の一つでもあるディスカッションタイム!
今回のテーマは『今日の東鶴2本に合うペアリングは?』です!!
留学生からは、日本酒の概念に捉われない「東鶴」ならではのおつまみや料理が挙がり、野中社長も非常に関心を寄せていました。
「東鶴 THE ORIGIN 山田錦」「東鶴 Spring Sun」それぞれに合うと思うペアリングをご紹介します!
- 女山大根
- タイ料理などのスパイシーな料理
- 佐賀牛
- 季節野菜と海鮮のオリーブオイルサラダ
- 鳥南蛮
- 塩くじら
- 麻婆豆腐
- 鶏ハムとドライトマトのバゲットサンド
- 酒盗入りポテトサラダ
- シャインマスカットとマスカルポーネと生ハムのオリーブオイルがけ
- 赤酢のカルパッチョ
東鶴酒造Q&A
今回の留学中に挙がった野中社長への質問を一部ご紹介します。
- 春陽は、低タンパクということですが磨かなくても綺麗なお酒になりやすいですか?
- そうだと思います。
大吟醸や吟醸のようにアミノ酸を少なくすることと同じ要素だと思います。 - 今回の2本は時間が経つと甘みが増すように感じられますが、燗酒にはTHE ORIGINが合いますか?
- 飲食店やご家庭でお酒を保管される際は冷蔵庫が一般的だと思うので、弊社では冷やした状態の時にバランスが良くなる酒質設計をしています。
そのため時間が経つと甘みが出てくるのですが、アミノ酸の量で考えるとTHE ORIGINは燗酒に間違いなく合うと思います。 - Spring Sunのラベルデザインは印象的ですが何か意味があるのですか?
- 高校時代の同級生にデザイナーをしている者がいて、彼に頼んで春をテーマにしたラベルを用意してもらいました。
弊社では変わり種の日本酒を造る時は、敢えて洋酒のような外見にすることがあります。
まとめ
東鶴酒造さんは今回2度目のご紹介となりましたが、改めてお酒造りを続けていく難しさや環境を整える大切さなどを知ることが出来ました。
もともと日本酒が苦手だった野中社長だからこその消費者目線という部分が活かされた商品開発なども非常に目を引くところもあり、これからの日本酒業界に必要な酒蔵なのではないでしょうか。
お話ししていただいた中で
“ワインみたいに日本酒も世界の酒として認知させていきたい”
と語っていただいたように是非今後の日本酒業界を佐賀県から牽引していってもらいたいと思います!
野中社長、留学生の皆さん、今回もご参加いただきありがとうございました!
留学生の方たちも積極的に交流していただき非常にいい学びの場となったと思います。
また次回のオンライン酒蔵留学でお会いしましょう♪
- 蔵元さんのお話が面白かった。
- the originとspringsun共にとても美味しかったです!
- いつも通りで楽しく過ごせました。
- いつもありがとうございます。これからも私が知らない酒蔵さんを教えて下さい。
- 東鶴がますます好きになりました。
<次回予告>第47回 オンライン酒蔵留学 髙澤酒造場・七代目蔵元杜氏 髙澤 龍一氏
■次回日時:9月28日(土)19:00~
■登壇者:髙澤酒造場 七代目蔵元杜氏 髙澤龍一氏
次回のオンライン酒蔵留学は、富山県氷見市に蔵を構える「髙澤酒造場」さんにご登壇いただきます。
能登半島の東側に位置する氷見市。
能登半島というと石川県をイメージしますが、富山県の北西部にあたります。
今年の元日に発生した能登半島地震により、髙澤酒造場は米蔵・酒貯蔵庫が全壊という甚大な被害を受けました。
そんな蔵の再建を目指す髙澤酒造場さんを応援させていただきたいと思い、北陸応援シリーズ第4弾として次回ご登壇していただきます。
復興に対する想いや髙澤酒造場が守り続けてきた伝統の製法など色々なお話を伺いたいと思います!
つくり手さんと「つながる」
つくり手さんの想いを「のぞく」
自分たちの世界観を「ひろげる」
次回もハンズオンポーズで乾杯!
※過去のレポート記事はこちらから!!