天郷醸造所 福智町 クラフトサケ 在る宵 ハンズオンsake オンライン酒蔵留学

【福岡県・天郷醸造所】2025年新設の酒蔵が贈るクラフトサケ「在る 宵」をご紹介。

オンライン酒蔵留学レポート

オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」、そして「推し蔵」が生まれる場となります。

本記事では、これまでオンライン酒蔵留学にご出演していただいた酒蔵さんをご紹介!
この記事を通して、酒蔵さんの想いやこだわりについて是非触れてみてください♪

今回は、第63回オンライン酒蔵留学にご出演いただいた天郷(あまのさと)醸造所(福岡県)をご紹介いたします♪

天郷醸造所(あまのさとじょうぞうしょ)について

天郷醸造所
天郷醸造所 正面
画像引用元:天郷醸造所Instagram

福岡県に、かつて労働者が希望を抱きながら働き、経営者が栄華を誇った町がありました。
しかしその後、時代の波にのまれ、盛衰し、生活保護者が急増した町に。
そこは"福岡県筑豊地区"。

かつて日本のエネルギーの6〜7割を担った石炭の大産地で、炭鉱と製鉄で栄え、全国から人が集まった地域です。
炭鉱経営で財を成した人々が大いに影響力を持ち、雇われていた炭鉱夫たちは豪快に酒を飲み、周辺の酒蔵が潤った歴史がありました。
しかし、エネルギー資源が石炭から石油に変わった流れで、街は一気に没落します。

そんな繁栄と没落を同時に体験している土地・福智町(ふくちまち)に、2025年3月、クラフトサケ醸造所が建てられました。
その名は天郷醸造所(あまのさとじょうぞうしょ)。



「僕はこの町で育ちました。でも子どもの頃、この町にもう未来はないと思って外に出たんです」とこの町の出身である中山雄介(なかやまゆうすけ)社長は苦々しくも、悔しそうに語ります。

それでも故郷に戻ってきて、酒蔵を造った理由は何だったのでしょうか。
それは"故郷を外から改めて見たこと"だといいます。

「東京へ出てみて、改めて地元のことを考えると、ここは自然は豊かで、長い歴史もある。でもずっと衰退して生活保護がとても多い町になっている。それが何だか忍びなくて...」

中山社長の胸には、故郷への深い愛着とともに、失望という相反する感情が渦巻いていたのです。
しかし外から故郷を眺めるうち、その心境は地元愛に惹かれていきました。

さらに中山社長を地元に帰らせる芽はすでにありました。
それは、地元を立て直そうとする人々の存在です。無農薬でレモンやいちご、いちじく、桃などを育てる農家さんたち。
かつての炭鉱の町は、静かに“土の町”へと姿を変えつつあったのです。

この「天郷(あまのさと)醸造所」という蔵の名称。ここにも中山社長の想いをうかがい知ることができます。
というのも、もともとこの場所には「天郷(てんごう)青年の家」という施設があり、 代表が子どもの頃に訪れていた思い出の場所でした。しかし街の衰退とともにやがて施設はなくなり、草に覆われてしまいました。

「せっかくご縁があって、またこの土地に戻ってきたんだから、この周りをもっと豊かにしたいと思ったんです。」

そこで生まれたのが「天郷(てんごう)」から発展させた、「天郷(あまのさと)醸造所」という名称。
「故郷をもう一度照らしたい。アマテラスの“天”と、故郷の“郷”をかけて“天郷”(あまのさと)という読み方にしました」。
再生させたい土地の名前が先にあり、そこに造り手の希望が乗り、そこから新たな蔵の名前が生まれました。
これは単なるマーケティングや思い付きのブランド名ではなく、本気の地元の再生への意思表示といえる、中山社長の心から生まれた蔵の名称です。
さらにそれに追随する形で、クラフトサケブランド「在る 宵(あるよい)」が誕生します。

そんな天郷醸造所、そもそもは町の誘致事業としてスタートしたそうです。

「筑豊は歴史的に資源を出して消費する町でした。何かを作る町じゃなかったんです」と中山社長は語ります。
かつてエネルギーを掘り出していた土地で、今度は微生物の力を借りて酒を醸し、町を元気にする。
実は福智町は水が豊富な土地であることも、偶然とは言えない好条件となっています。かつて"八幡製鉄所を支えた水資源は、今は酒造りの命"になるのです。

2025年9月の蔵開業後は、新嘗祭である11月23日に蔵開きのイベントも行われ、日本の伝統文化を大切にする同蔵らしく「雅楽の演奏」なども行われました。
さらに2025年末には、福智町の「ふるさと納税返礼品」として同蔵のフラッグシップクラフトサケ『在る宵(あるよい) 天郷』をリリース。
福智町の水、米(ヒノヒカリ)の魅力をぎゅっと凝縮したこの一杯が、地域再生への参加証となります!

"炭鉱の炎が消えた町に、醸造の火を灯すという挑戦。"
これは、町の栄枯盛衰を肌身で知った地域の人々が強い地元愛を秘め、本気で取り組む町おこし"ではないでしょうか。

すべては”感謝”から。地元で酒造りを目指した一人の男の物語。

天郷醸造所 代表取締役社長 中山雄介
※株式会社天郷醸造所 代表取締役 中山雄介 氏
画像引用元:天郷醸造所Instagram


福智町に誕生した「天郷(あまのさと)醸造所」の代表を務める中山雄介さん。
酒造りとは全く結びつかない、というよりむしろ真逆のような経歴の持ち主であることにも、驚かされます。

まず防衛大学校を卒業後、自衛隊へ。
その後は誰もが知る複数の有名大手IT企業でマーケターとして活躍してきました。
しかし40歳を迎えた頃、心と体に限界が訪れることになります。
"うつ病"です。

「何かを得続けなければいけない、前に進み続けなければいけない。そんな思いで走っていました」。
そう語る中山社長は、病の中、ある気づきを得ます。それは、
「自分には感謝が足りなかった」ということ。
ただひたすら「足りない、足りない」と走る日々の中で、当たり前のように手元にあったもの、今まで支えてくれていた人や環境にしっかりと目を向け、感謝ができていなかったといいます。

そんな気付きを得たタイミングで、故郷・福智町がクラフト醸造所の立ち上げ人材を公募していることを知ります。
「見た瞬間に電流が走ったような感じでした」。

というのも、酒蔵を起点に町を元気にしたいという自治体など、全国にほとんどないに等しいのが現状。けれども、中山社長の地元の町が本気で「酒蔵を中心に町おこしを!」と動いていることを知り、 Uターンを決意しました。
IT業界での実績はあるものの、酒造の経験もないばかりか、蔵を建てるには費用も労力もかかります。全く未知の世界。それでも、中山社長は
「もう、導かれたような感じです。天の思し召しだと思います」と笑って答えます。

新設された酒蔵は、画像をご覧になっていただければお気づきの通り、
外観は炭焼きのような深い黒で統一され、あくまで周囲の緑や空を引き立てるデザインになっています。
「周囲の木々や自然には人の手を入れたくないという考えがまずあって、それを反映した外観なんです」と中山社長。

ところが、蔵の内部はAIやITを活用した最新設備を導入している、というユニークさ。
その根底には"これからの時代に合わせた酒蔵の在り方"=「取り入れるべき最新のものと残すべき伝統の調和」という代表の強い想いがあります。 さらに「人はもっと楽に働けるべき」という、うつ病の経験をしたからこその言葉もありました。
伝統を尊重しながらも、無理のない醸造環境を目指す。

この「楽に働く」という言葉。軽やかな一言に聞こえますがIT業界の最先端を走り続け、苦難を味わったからこそ出てくる、深い言葉だと感じます。
「合理的」「効率的」という冷たい表現ではなく、「楽に働く」という中山社長の言葉は、
デジタルやテクノロジーは、あくまで自然や人間を軸にしたものであり、酒造りという伝統を守るための手段、という位置づけになっているのです。

そんな信念を抱いたからとはいえ、ここに至るまでの道のりはもちろん、平坦ではありませんでした。
まず蔵の建築の総投資額は約1.3億円。
町の誘致事業とはいえ、町がすべてを用意してくれるわけではなかったそうです。土地探しや融資の交渉などは、中山社長が担い、しかも「1年という期限内」で行うという厳しい条件もありました。

「本当にきつかったです」と一言でさらっと語ってくれましたが、 当時は資金繰りも厳しく、期限ぎりぎりで友人から3,000万円を借りて乗り切ったこともあったそうです。
加えて、まだ酒造りの実績もブランドもない新規事業に対する金融機関の目は厳しかった。それでもあきらめず、一歩ずつ、前に進み続けます。

また、当然ながら、蔵が完成しても、すぐに酒造りを始められるわけではありません。必要なのは酒造免許です。本来よりも大幅に遅れ、交付までに約半年を要しました。しかも、その間も固定費はかかり続けます。
不安と向き合いながらの日々...。

そしてようやく免許が交付されたのは2023年9月1日。
喜びと安堵と同時に、"本番一発勝負という緊張感"もあったといいます。というのも、試験醸造なしで挑んだ最初の仕込みであり、またクラウドファンディングでも応援してくれた方々の期待を裏切るわけにはいかない、というプレッシャーも抱えていました。
ですが、製造責任者とともに全力で向き合い、ようやくスタートを切ることができたのです。

そんな中山社長の現在の構想は、酒造りだけにとどまりません。
将来的には、酒蔵をワインでいうオーベルジュとして発展させ、
「この誘致事業は、食べて、飲んで、泊って楽しむ場所にするのが絶対です」と力強く話します。
さらに、"AIを徹底的に活用した醸造ラボとして、伝統的なレシピや作業工程をデータ化し、
「廃業に追い込まれているような伝統ある酒蔵さんに、このAIやシステムで酒造りのやりかたや業務の改善をしてみませんか?といった提案もできると思っていて、それが結果的に日本酒業界の底上げの発展につなげる構想も描いています」とのこと。

かつては職人の口伝や経験則(「いわゆる技は盗んで覚えろ」といった良くも悪くも残っていた慣習)を、
データ化し共有することで、これからの日本酒蔵の在り方と伝統をつなぐ。まさしくIT業界に長く身を置いていたからだこそ着想し実行できる試み。

これは日本酒に限らず、様々な後継者不足などで悩んでいる日本の伝統産業の継承に、一石を投じます。

"伝統とテクノロジーを共存させる"――その挑戦は、福智町という小さな町から始まっています。

販売ルートについても、IT業界での経験を活かし、国内ECや越境EC(海外販売)、さらに業界時代にお付き合いのあった酒蔵さんなど、経験と実績を活かす方向に進んでいるようです。

さて、今回の酒蔵留学では、中山社長は自身の弱さや迷いも隠さず参加者様に語ってくださいました。
モノが有り過ぎ、選択肢が有り過ぎ、情報が有り過ぎ、いつしか心に余裕がなくなる日々。
モノや情報があり過ぎるから、それが当たり前になり、もはや「有る」ことすら意識しない。それでも「足りない」と追い求める。

しかし本当は、自分の周りにはたくさんの“在る”="ありがたい"ものがあるということに、中山社長の言葉から気づかされます。

天郷のクラフトサケブランド「在る 宵」

天郷醸造所 クラフトサケ 在る宵

天郷醸造所のクラフトサケブランド「在る 宵(あるよい)」
この一本には、中山社長の人生哲学がそのまま溶け込んでいます。

「『在る』という言葉は仏教的にも実は深い言葉でして、僕はずっと“ないもの”を追いかけていたんです」

かつて有名IT企業で成果や効率性を求め続け、40歳で心身の限界を迎えたことは前述のとおり。
2ヵ月間、全く動けなかったという療養中に気づいたのは、「自分の人生に感謝がなかった」「ずっと何かが足りないと思って生きてきた」という事実。

「ないんじゃない。もともと「在る」んです。だから追いかけなくていいんです」

この深い気づきが、「在る 宵」という名前の原点です。

酒を酌み交わす宵の時間のなかで、今、目の前、足元に在るものを思い出してほしい。ご先祖様の存在、周りにいる人、豊かな自然――そんな願いが込められています。

また原料は無農薬栽培を基本とし、ケミカル(人工的なもの)な要素は極力排除したといいます。
「ケミカルなものを排除すれば売れるから、ということではないんです。農家さんと“これいいよね”って思えたものを、そのまま出したい、それだけなんです」。

さらにラベルにも代表の人生観が、とてもスタイリッシュにあしらわれています。
画像の中の黒と白の粒が渦を描くロゴは、「感謝の渦」を表現しているそうです。

「黒があるから白がわかる。苦しかった出来事も、あとから見れば意味がある」と。

世界は白黒はっきりつけられるものではなく、価値観やこれが正しいといった絶対的なものはない。どんな出来事もモノも、自分の気づきによって新しく意味づけができるという世界観。
苦しかった過去を、心の持ちようによって「感謝」に転換した中山社長の、とても希望に満ちたメッセージではないでしょうか。

今までの人生、今日一日、いろいろあったけれども、この酒を通じて今この瞬間の「美味い!」や「楽しい!」といった感情から、「感謝の渦」が生まれることを、中山社長は静かに願っていると感じます。

フラッグシップクラフトサケ「天郷」

天郷醸造所 フラッグシップ クラフトサケ
天郷醸造所 フラッグシップ クラフトサケ「天郷」
画像引用元:天郷醸造所オンラインショップ

あらためて「天郷(あまのさと)」という響きは、どこか静かで、凛としているイメージを感じさせます。
天郷醸造所のフラッグシップ・クラフトサケ「天郷」は、その名の通り“天と郷”──自然と土地、人の営みを一本に閉じ込めたような酒。

クラフトサケは、従来の日本酒の枠を大切にしつつ、自由な発想で造られる新しいカテゴリー。
その中で「天郷」は、奇抜さではなく「発酵そのもの」を磨く道を選んだ一本と言えます。

まずグラスに注ぐと、透明感のある穏やかな香り。
口に含むと、やわらかな甘みと繊細な酸が重なり、後味はすっと引いていきます。
派手に主張しないからこそ、白身魚や出汁の効いた料理と寄り添ってくれます。

そんな「在る 宵 天郷」の大きな特徴は、酒造好適米ではなく、あえて“飯米”を使用していること。

その味わいは、飯米由来のどっしりと力強いさと、ふくよかな甘みといった、米本来のコクがしっかりと感じられます。
口に含んだ瞬間、豊かな旨味が広がり、その後に複雑で奥行きのある余韻が長く続きます。いわゆる“すっきり系”とは異なる、重厚で包み込むような味わい。
派手さではなく、深さが存在感を残すいっぱいと言えるでしょう。

また商品名にある「フラッグシップ」とは、蔵の哲学を最も表す「旗艦」という意味ですので、
「天郷」は、天郷醸造所の座標軸ともいえる酒なのです。
流行を追うのではなく、自らの中心・軸を深め続けていくというメッセージ。

そもそも発酵とは、目に見えない微生物との協働であり、
人間はその調整者であり、指揮者のような存在。
そんな神秘的な役割分担が、香りや味わいとなって立ち上がる。

「天郷」は、そんな発酵の面白さを、そこはかとなく感じさせてくれるクラフトサケです。

定番クラフトサケ「緒奏」(しょそう)

天郷醸造所 定番クラフトサケ 緒奏
天郷醸造所 定番クラフトサケ「緒奏」
画像引用元:天郷醸造所オンラインショップ

天郷醸造所が手がける定番クラフトサケのひとつが「緒奏(しょそう)」。
特に料理と調和しながら味わいが広がっていく――
そんな一杯を目指して醸されています。

原料米には“酒米の王者”とも呼ばれる地元福岡県産の"山田錦"を使用。
この米が持つきめ細やかな旨味を軸に、上品な風味と透明感のある味わいが組み立てられています。
グラスに注ぐと、穏やかな香り。派手に香るタイプではなく、静かに寄り添うようなアロマ。口に含むと、甘みと香りを抑えた質感の旨味がすっと入ってきます。
とにかく雑味がなく、シンプルに広がる飲み口は、やはり食事との調和を重視した設計になっているのです。

華やかさを前面に出すというより、料理と響き合いながら両者の味わいが完成する酒。まさに"緒(始まりという意味)”に“奏でる”という名が似合う酒ですね。
酒が主役になるのではなく、料理、空間、そして人との会話が重なって一つの味わいになる。そんな時間を静かに奏でてくれそうです♪

限定フルーツ酒

天郷醸造所 限定フルーツ酒
天郷醸造所 限定フルーツ酒
画像引用元:天郷醸造所オンラインショップ

天郷醸造所では、米を主体としたクラフトサケに加え、四季の果実を取り入れた「限定フルーツフレーバードシリーズ」を展開しています。
日本の四季をテーマにした酒です。
さらに"それぞれのボトルにも春・夏・秋・冬の情景が重ねられ"、果実の個性と発酵の味わいを通して、季節の移ろいを感じられるようにデザインされています。
単なるフルーツ酒ではなく、米の旨味と果実の香りを重ねることで生まれる、クラフトサケならではの味わいであると同時に、福智町の自然と四季の美しさをグラスの中に映し出したシリーズです。

まず、
春:『在る 小暖(こはる)』。
無農薬で育てられたイチゴ「あまおう」を贅沢に使用した、春の訪れを告げる一杯です。
やわらかな春の日差しのように、穏やかで優しい味わいが広がり、酒の甘さをほんのりと残すことで、イチゴ本来の甘み・酸味・香りのバランスを丁寧に引き出す。
春の訪れを感じさせる、柔らかな余韻を味わってみてください♪

次に、
夏:『在る いづみ』。
パッションフルーツが生む爽快な夏の一杯。
真夏の日差しの中、ひっそりと湧き出る泉のような清涼感をイメージ。
副原料にはパッションフルーツを使用。トロピカルな香りと心地よい酸味が爽やかな一本!
その酸味をやさしく支えるのが、やはりベースがしっかりした米由来のほのかな甘み。
酸味と旨味が調和することで、暑い季節でも軽やかに楽しめる味わいに仕上がっています。ひんやりと涼が広がるような爽快感。夏の食卓を心地よく彩る一本です♪

そして、秋の情景を映すのが、
秋:『在る 秋暁(しゅうぎょう)』。
いちじくの深みが広がる、しっとりとした味わいです。
夜明け前の静かな空気の中、やわらかな光が差し込む瞬間を思わせるような、落ち着いた味わいの酒です。
副原料にのいちじくのやわらかな酸味と自然な甘みが、米の旨味と穏やかに寄り添います。 香りは控えめで、口に含むと甘みがゆっくりと広がり、しっとりとした余韻が残ります。 また、温度によって表情が変わるのも特徴の1つ。
常温やぬる燗にすると香りがふんわりと開き、より深い味わいを楽しめます♪

そして、冬を象徴するのが、
冬:『在る 寒夜(かんや)』。
レモンの透明感が広がる冬の一本となっています。
イメージは、澄み渡る冬の夜空に浮かぶ月の光のような、静かな透明感。
副原料のレモンの爽やかな香りと酸味。冷えた体に心地よい清涼感をもたらします。そこに重なるのが、米由来の控えめな甘み。
酸味をやさしく引き締めることで、すっきりとしたバランスのよい味わいになっています。 冷酒はもちろん、ぬる燗でも楽しめ、飲む温度によって表情を変え、冬の夜にゆっくりと寄り添う一本です。

グラスを傾けるたびに感じる、季節の移ろい。
このシリーズは、「福智町の自然とともに四季楽しむクラフトサケ」といえます!

伝統と自然、AIが調和するハイブリッド酒蔵

天郷醸造所 中山社長
※ハンズオンSAKE代表まっすーと中山社長


伝統的な酒造り、自然の恵み、そしてAIやデータ技術を融合させた“ハイブリッド型の酒蔵”。
中山社長は、酒蔵を単なる製造場所にとどめるつもりはないと語ります。

「酒蔵をやる動機は、地元おこしももちろんあるんですが、業界そのものを改革していかなきゃいけないと思ったんです」

現在、日本酒業界では後継者不足といった問題もあり、小規模な蔵の廃業が相次ぎ、それと同時に長年培われてきたレシピや技術が失われつつあります。中山社長は、その状況に強い危機感を抱いています。

「今、日本の酒造りのレシピとか工程って、どんどん消えていってるんですよ。ローカルだから記録も残っていない。だからデータとして残していく必要があると思って」。

そこで考えたのが、酒蔵の工程をAIとデータで管理・蓄積する仕組み。

「いろんな工程のデータをAIに入れていくと、新しい世界が見えてくるんです。僕たちの蔵を“研究所みたいな場所”にして、そこから業界全体に広げていきたい」

つまり天郷醸造所は、日本酒業界の未来を試すテストケースでもあるのです。
ただ一方で、酒造りの現場には、"長年の経験に頼る工程が多く存在します"。たとえば温度管理や発酵の判断などは、杜氏の感覚が重要な役割を担っています。
ただ必ずしもそういった“職人の勘”を、AIで置き換えるというわけではない、と中山社長は語ります。

「AIやシステムで手を抜きたいわけじゃないんです。人間がやるところは、もちろん人間がやります」

"単に効率化や合理化をすれば、プラスになるわけではない"という、病の中で得た気づきと想い。
先人、そして貴重な職人の知恵をデータとして保存し、次につなげていきたい想いから「道具としてデジタルを使う」、それだけ。
そこで蔵では今後、温度管理や発酵工程などのデータを蓄積し、AIで分析する仕組みを導入する計画が進められています。

「失敗した経験も全部データに残していけば、業界全体の底上げになると思うんです」

目に見えない発酵の世界。その魅力を残しながら、目に見える部分はデータ化していく――そんな新しい酒造りが始まろうとしています。

「この酒蔵は、まだ“初期バージョン”みたいなもの。これからです。」と中山社長は笑いますが、
伝統、自然、そしてAIが、ひとつの蔵の中で調和する未来が見えてきた気がします。

天郷 NFCタグ
画像引用元:天郷醸造所Instagram

NFCタグで広がる“体験”――
同蔵の革新性は、酒の楽しみ方にも表れています。

たとえば、フラッグシップ酒「在る 宵 天郷」のボトルにはNFCタグが搭載されています。
これは、スマートフォンをかざすだけで専用ページにアクセスでき、酒に込められた想いや原料について詳しく知ることができるという仕組み。
スマートフォンの扱いが苦手な方でも、さっとアクセスできます!

その専用ページでは、完全無農薬で酒米を育てる地元農家さんの取り組みや、福智町の自然環境なども紹介されていて、土地の声や人のつながりまでを知り、日本酒特有の地域性と風土を感じながら酒を味わうという体験ができてしまいます。

グラスの中の味わいを超えて、デジタル技術を駆使した「日本酒体験」と言えるのかもしれませんね。

萬年亀酒造を事業承継。天郷醸造所は清酒とクラフトサケの二刀流へ。

天郷醸造所 作業風景
画像引用元:天郷醸造所Instagram
 

前述のとおり、天郷醸造所は、クラフトサケを中心に酒造りをスタートしました。
しかし、中山社長の中には、以前から日本酒(清酒)を造りたいという思いがあったといいます。

ただし、日本酒業界には大きな壁があります。それは"清酒製造免許の取得が非常に難しいこと"です。ですから新規の酒蔵が日本酒を造るには、原則として新しい免許が下りないため、今ある蔵の免許を引き継ぐ必要があります。
中山社長はこう語ります。
「やりたいんですよ。本当は日本酒(清酒)を。でも免許がないと造れない。準備はできているのに造れないんです。」

そのため、天郷醸造所ではクラフトサケを造りながら、並行して清酒免許の可能性を探り続けていました。
事実、福岡県でも酒蔵の数は年々減少しており、地域の酒造文化をどう守るかが大きな課題になっているそうです。

「酒蔵がどんどん無くなっていくのは良くない。レシピやノウハウも含めて、きちんと次に繋げないと、日本酒文化そのものが衰退してしまう。」

この考えに共感する人々や企業の支援もありつつ、やがて大きな転機が訪れます。
福岡県久留米市城島にある「老舗蔵 萬年亀酒造」の事業承継の話を持ち掛けられました。

天郷醸造所の製造・営業を担当する本村雄斗(ほんむらゆうと)さんは、当時の状況をこう振り返ります。
「萬年亀酒造さんは、ここ数年はもうお酒を造っていない状態でした。ほぼ廃業に近いタイミングで、福岡県内の酒蔵さんから『引き継いでくれないか』という話をいただいたのがきっかけです。」

久留米市城島城島は、筑後川流域の穀倉地帯に位置する酒造りの名産地。現在でも複数の酒蔵が集まるエリアですが、
「ここ数年で蔵が廃業していて、やっぱり元気がなくなってきている。それをなんとかできないか、という声があったんです。」と本村さん。

ただ、残念なことに、萬年亀酒造の蔵は、熊本地震による被害や老朽化もあり、そのまま使用することが難しい状態でした。
そのため、清酒免許を福智町の天郷醸造所へ移転する形で計画が進められています。
これにより、天郷醸造所では、
「今の福智町の蔵で、清酒とクラフトサケを両方造っていく予定です」と本村さんは語ります。

これまで培ってきたクラフトサケの技術と発想を活かしながら、"清酒とクラフトサケを両立させる酒造りへの道"が開かれたのです。
例えば現在のラインナップの中には、米を主体とした酒で、ほぼ日本酒に近い味わいのものもあります。
「天郷」や「緒奏」などの酒は、米の旨味を中心にした設計で、後味にわずかにハーブなどを加えたクラフトサケです。
将来的には、
清酒 → 地元の米を使った食中酒
クラフトサケ → 福岡の農産物を生かした新しい酒

という形で、2つのジャンルを並行して展開していく構想です。

「地元の福智町のお米、あるいは福岡県のお米を使って、ゆっくり飲める食中酒の日本酒を造りたいと思っています。」と本村さん。
一方で、日本酒だけでは表現できないクラフトサケも継続しつつ、地域の食文化や農産物の魅力を伝えていく。

2026年3月現在、清酒免許の移転手続きが進められており、順調にいけば2026年夏頃に手続きが完了する見込みで、その後すぐに仕込みが始まれば、早くて11月頃に最初の日本酒がリリースされる可能性があります。

他の日本の伝統産業と同じく、日本酒業界は、いま大きな転換期を迎えています。
蔵の数は減り続け、伝統の継承が難しくなっている一方で、クラフトサケのような新しい酒文化も各地で生まれています。
ここ天郷醸造所では、「二刀流の酒造り」が始まることで、日本酒文化にまた新しい一石を投じようとしているのです。

 

【天郷醸造所】

822-1212
福岡県田川郡福智町弁城1813
TEL:0947-85-8540
HP:https://amanosato-sake.com/
オンラインストア:https://shop.amanosato-sake.com/

天郷醸造所のクラフトサケとペアリングをご紹介♪

在る寒夜(かんや)おりがらみ レモンフレーバード

天郷醸造所 クラフトサケ 在る寒夜
天郷醸造所 クラフトサケ 在る寒夜
画像引用元:天郷醸造所オンラインショップ

冷たく、澄みきった空気の中で、月明かりが静かに地上を照らす——。

「在る 寒夜」は、そんな冬の情景を思わせる、透明感のある味わいの一本です。
口に含むとまず広がるのは、レモンの爽やかな香りと軽やかな酸味。
その後から、米由来のやさしい甘みがそっと寄り添い、全体をすっきりと引き締めます。
このレモンは、蔵の地元、福岡県福智町で育てられた無農薬のものを使用。
醸造責任者の上田杜氏は、有名蔵での経験を活かし、
「飲み疲れしない、ずっと付き合える酒」を目指して酒造りを行っています。

派手な香りを追うのではなく、料理と寄り添い、ゆっくりと楽しめる味わいに仕上げる。 レモンの存在もまた、日本酒の味わいを壊すのではなく、あくまで調和を大切にしています。

また「在る 寒夜」は、温度によっても表情が変わる酒です。冷やせばレモンの爽やかさが際立ち、ぬる燗にすると米のやわらかな甘みがふわりと広がる。

寒い夜、静かに盃を傾ければ、心までほっと温まるような時間が訪れる。
冬の夜に寄り添う、しっとりとした一杯です。

購入する

■在る寒夜(かんや)おりがらみ レモンフレーバード スペック■

原材料 米(国産)・米麹(国産米)・レモン(上野産)
原料米 山田錦(福岡県産)100%
精米歩合 70%
アルコール度 16度-17度

「在る寒夜(かんや)おりがらみ レモンフレーバード」におすすめのペアリング

天郷醸造所 在る寒夜(かんや) おりがらみ レモンフレーバード おつまみ ペアリング ハンズオンSAKE オンライン酒蔵留学
※在る寒夜(かんや) おりがらみ レモンフレーバードに合うペアリング


"おりがらみ"ならではのやわらかな口当たりと、柑橘の軽やかな酸味が特徴。料理と合わせることで、その魅力はさらに広がります。

おすすめのペアリング1つ目は、「カプレーゼ」です。
トマトの酸味とモッツァレラのミルキーなコクに、レモンフレーバーの爽やかさがよく合います。

次に、「鯛のカルパッチョ(ハーブ+柑橘)」
料理に使われた柑橘の香りと、お酒のレモンフレーバーがリンクし、香りの相乗効果が生まれます。爽やかな風味が鯛の旨味を引き立て、すっきりとした余韻を楽しめます。

そして3つ目は、 「イチゴとクリームチーズの生ハム巻き」
おりがらみのやわらかな口当たりがチーズのコクを包み込み、生ハムの塩気が酒の甘味を引き立てます。
さらにイチゴのフルーティーな酸味が、レモンの爽やかな風味とよく調和します。

意外な組み合わせと楽しめるのがクラフトサケの魅力。ぜひお気に入りの料理とともに、福智町の風土を感じる一杯を楽しんでみてくださいね♪

天郷醸造所Q&A

今回の留学中に挙がった天郷醸造所への質問を一部ご紹介します。

誘致事業として売上や経営の縛りはあるのですか?
特に縛りはないです。ただ基本的には「潰れたらあなたの責任です」っていう世界です(笑)。
福智町からのサポートは、あくまで補助金の交付までで、その先の売上や経営については、特別な保証や縛りがあるわけではないです。
なのであとはもう、自分たちでやるしかないんですよ。
もちろん、これは自治体によって違うかもしれないですが、うちの場合はとにかく「やるしかない!」んです。
「在る寒夜」は三段仕込みですか?また、副原料を入れるタイミングはいつですか?
仕込みは全部三段仕込みでやっています。
副原料を入れるタイミングは、搾る前日ですね。
というのも、発酵の途中で入れてしまうと、もろみの味に紛れてしまうんじゃないかなと思っていて、仕上げの直前に入れることで、レモンならレモンの香りや風味をしっかり立たせるようにしています。
クラフトサケに含まれる副原料の割合の規定などはあるのですか?
法律上、割合の規定は特にないんです。
極端な話、例えばレモンをほんの少し入れただけでも「その他の醸造酒」として扱われます。
でもそれが理由というわけではなくて、この土地のレモンの魅力や蔵の取り組みを伝えたいからというのが一番です。ほかの副原料も同じ考えですね。
フルーツなどの副原料は入れれば入れるほど分かりやすくなりますが、私たちが目指しているのはあくまで果物と日本酒の融合ですね。
レモンならばレモンの風味を感じつつ、ちゃんと日本酒の味わいが残るバランスを意識して造っています。

まとめ

福岡県福智町の天郷醸造所は、かつて炭鉱で栄えた故郷の再生を想い、元ITマーケターの中山雄介氏が設立したクラフトサケ醸造所。
中山氏は自らの闘病経験から得た「今ここに在るものへの感謝」を理念に掲げ、最新のAI技術と伝統的な酒造りを融合させた独自のスタイルを確立しつつあります。
具体的には、地元の無農薬米や果実を原料にして、四季を彩る銘柄やフラッグシップの「在る 宵」という酒を展開し、地域の魅力を発信しています。
さらに、廃業の危機にあった老舗蔵の清酒製造免許を継承し、伝統の保存と革新的な醸造の「二刀流」を目指しているところです。
IT業界での経験を活かし、デジタル技術を活用した醸造データの共有やNFCタグによる顧客体験を通じ、日本酒業界全体の底上げを図る挑戦を続けています。
この取り組みは、「衰退した町に再び醸造の火」を灯すだけではなく、日本の伝統文化を時代に合わせた形で次世代に渡すモデルケースとしての第一歩となっています。

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とも 日本酒ライター ラジオ番組制作者を経て、Web・EC事業に長らく携わっています。
趣味:立ち飲み、ロックバー巡り、ジム、料理、映画
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じゅん 日本酒ライター ものづくりに携わっている傍ら日本酒ライターをしています。
日本酒の美味しさに目覚め、すっかり虜になりました。
是非、日本酒の文化を広めていきたいです♪

趣味:ガラス細工、旅行、フットサル
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