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【愛媛県・近藤酒造】日本酒「華姫桜」と蔵元の魅力にギャップ萌え不可避!

オンライン酒蔵留学レポート

オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方の酒蔵さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」、そして「推し蔵」が生まれる場となります。

本記事では、これまでオンライン酒蔵留学にご出演していただいた酒蔵さんをご紹介!
この記事を通して、酒蔵さんの想いやこだわりについて是非触れてみてください♪

今回は、代表酒「華姫桜(はなひめさくら)」を醸す近藤酒造(愛媛県新居浜市)をご紹介いたします♪

近藤酒造(こんどうしゅぞう)について

愛媛県新居浜市 近藤酒造
※近藤酒造 外観正面
画像引用元:近藤酒造Facebook

まず、今回のサムネイル画像をご覧になった方は、ハットにヒョウ柄のストールといった派手な衣装に身を包んだ男性に目を奪われたのではないでしょうか?

何を隠そう、この方が「近藤酒造」の5代目蔵元兼杜氏、”ジュリー”の愛称で親しまれている近藤嘉郎(よしろう)社長なのです。
なぜ、このような蔵元=作務衣といったようなイメージを大きく覆すいで立ちをしているのでしょうか?
その外見とは裏腹に、内に秘めた地酒に対する想いを伺いましたのでひとつずつ紐解いていきたいと思います。

「近藤酒造」は愛媛県東部、新居浜に唯一残る蔵で、創業は1878年(明治11年)。

この街にはかつて日本三大銅山の一つとして栄え、日本の近代化を力強く支えた「別子銅山」の存在があります。 江戸時代の1691年から1973年までの283年間、住友によって経営されたこの銅山は、総産銅量約65万トンを誇り、最盛期には世界有数の規模にまで成長しました。
現在は、山深くに残る採鉱本部跡地が「東洋のマチュピチュ」として人気を集めており、観光坑道や温泉が楽しめる「マイントピア別子」が観光スポットになっています。

そんなかつて活気を帯びていた新居浜で、明治11年(1878年)から140年以上にわたってお酒を造り続けているのが、「近藤酒造」 です。

1970年代には市内に6軒あった酒蔵も、時代の波とともに少しずつ姿を消し、今ではここ近藤酒造さんが新居浜で唯一の酒蔵となり、この地に根差した酒造りを守っています。

別子銅山を抱く「赤石山系(四国山脈)」は、美味しいお酒を造るための豊かな恵みも備えており、この近藤酒造の仕込み水は、平成の名水百選にも選ばれた「つづら淵」と同じ水脈の伏流水です。
この清らかで優しい「軟水」を使うことで、代表銘柄である『華姫桜(はなひめさくら)』が生まれました。 ちなみにこの「華姫桜」の名前についてですが、愛媛の商品のネーミングにはよく「媛」という漢字が使われるそうです。
それなのに、「なぜ“愛媛”の“媛”ではなく、“姫”を使っているのでしょう。
その理由について近藤社長は、

「実は愛媛という地名は、太古の昔、この地に天女(お姫様)が舞い降りたという伝説から、“姫を愛する国”という意味で名付けられたと言われているんです。だからこそ『華姫桜』では、あえて"媛"を使わず、“お姫様”の『姫』の字を使っているんです」

愛媛の由来にもつながる物語を込めて名付けられた「華姫桜」。その名前には、地域の歴史とロマンだけでなく、愛媛という土地の歴史を深く愛する近藤社長の想いが込められています。
社長の地元愛についてさらに加えるならば、新居浜市内のブランド米や愛媛県独自の酒米、愛媛の酵母を積極的に使うなど、地の米・地の水・地の酵母で醸すことを大切にしています。
そういった原料を使用しながら、伝統的な純米酒や吟醸酒の品質をさらに磨き上げつつ、同時に愛媛産ボタニカルを使ったクラフトジン「PACHI PACHI(パチパチ)」を手がけるなど、現代的な蔵としての挑戦も行っています。

そんな近藤社長には、子供時代に見た蔵の記憶が、新しい取り組みに強くつながっています。

「昔は井戸端会議みたいに、顔見知りやご近所さんが気軽に立ち話をしたり、人が自然に集まる場所がありましたよね。でも最近はそういう場所が少ない。だから立ち飲みのような感覚で、ふらっと立ち寄れる場を作りたかったんです」。

そこから、「蔵元直詰 量り売りイベント」を毎月1回開催することとなりました。
主に土曜日の午後に、しぼりたての生酒や季節限定酒など、その時期おすすめの日本酒を蔵で直接瓶詰めし、量り売りをしています。まさしく蔵元ならではの新鮮な味わいを楽しめる人気イベントですね!

日本酒をきっかけに人が集まり、会話が生まれるこのイベントは、新居浜の地域コミュニティをつなぐ“現代の井戸端”のような存在になっています。

ただ歴史の長い蔵ほど、時代に翻弄され、苦難に満ちた時期を何度か経験します。近藤酒造もそうでした。
酒造りに適したこの地の酒蔵でも、かつて「酒造りが止まっていた時代」があったのです。
焼酎やワイン、洋酒の人気が高まり、日本酒の需要は大きく落ち込んでいった時代の渦に、同蔵も抗えませんでした。
そして近藤社長のお父様である4代目は、いよいよ酒造りを休止する決断をします。
蔵や免許は残っているものの、酒を造らない「休蔵」という状態です。

実は近藤社長。キリンビールに就職し、充実した社会人生活を送っていました。順風満帆なキャリアのスタート。
しかし就職して4年ほど経った頃、「実家の蔵の酒造りの停止」という知らせが入ります。
ほどなく蔵に戻った近藤社長の目には、かつての賑わいとはまったく違う光景が広がっていました。
蔵はひっそりと静まり返り、蒸米の湯気も、人の声もない。

「ここは僕が子供の頃は、仕事場というより、大きな遊び場のような場所だったんです」と近藤社長は懐かしそうに語ります。
蔵には杜氏や蔵人が6〜7人ほど泊まり込みで働き、蒸米の湯気が立ちのぼる中で酒造りが行われていました。
蒸し上がった米の具合を確かめる杜氏、道具を直す蔵人たち。そんな光景や音を近藤少年は体験しています。
蔵に遊びに来た近藤少年のために、蔵人たちは竹馬や水鉄砲を作ってくれたり、蒸米で作る「ひねり餅」を神棚に供え、彼の分まで残してくれる杜氏もいました。

幼き頃の近藤社長にとって酒蔵は、まるで家族や親戚の集まりのような温かい空間だったのでしょう。
幼少期に刻まれた、蔵で働く大人たちの声、息遣い、笑い声――
しかしいまや大人になった近藤社長の眼前には、ただ時が止まったような静寂が広がっていました。

そんな"深い眠りに入ってしまった蔵"は、2001年(平成13年)にそっと目を覚まし始めます。
近藤社長が自ら杜氏となり、600リットルの小さなタンクから酒造りを再開したのです。
蔵に、再び蒸米の湯気が立ちのぼりました。
近藤酒造、そして近藤社長の心に、小さな火が灯った瞬間でした。
勿論、再開した酒造りは決して順風満帆ではありません。それでも近藤社長たちの地道な努力は確実に実を結びます。

近藤酒造 華姫桜 純米酒
※近藤酒造 華姫桜 純米酒
画像引用元:近藤酒造オンラインショップ


平成20酒造年度、日本酒の全国大会ともいえる全国新酒鑑評会において、銘柄「ひめさくら」(後の華姫桜)が金賞を受賞します。
眠っていた小さな酒蔵が全国の舞台で評価されたとともに、華姫桜が代表銘柄へと返り咲いた瞬間でもありました。

「華姫桜」のロゴは、一見すると桜の花びらのように見えますが、実は“お米の粒”で形づくられたデザイン。
"休蔵から復活した酒蔵と、再び咲いた桜を重ねたもの"という意味が込められ、米から生まれる日本酒と、蔵の再生の物語を象徴するロゴとなっています。

ただの色物ではない!郷土愛溢れる”ジュリー”こと近藤嘉郎社長

近藤酒造 五代目蔵元 近藤嘉郎社長
※近藤酒造 五代目蔵元 近藤嘉郎社長

 

派手なピンクのスーツと斜めにかぶったハットがトレードマークともいえる近藤社長。
「愛媛のジュリー」と呼ばれる蔵元・近藤嘉郎さんを紹介する前に、若い方にはもちろん、懐かしいと感じる年代のあなたに、まず「ジュリー」のご説明を!
ジュリーとは、歌手で俳優の「沢田研二」さんの愛称。1960〜70年代に大人気だったバンド ザ・タイガース のボーカルとして一世を風靡し、今もソロ歌手として長く活躍し、日本の音楽界を代表するスーパースターです。

ステージでは、ハットを斜にかぶったスタイルや個性的で派手な衣装がトレードマーク。今で言えば“元祖ロックスター”のような存在。その圧倒的なスター性と艶っぽい歌唱力で多くのファンを魅了してきました。
そんなジュリーを思わせるファッションや雰囲気から、近藤嘉郎さんは地元で「愛媛のジュリー」と呼ばれているのです。
日本酒イベントでは鮮やかなピンクのジャケットで知られ、来場者と笑顔で写真に収まるその姿は、一度見ればまず忘れられない。

派手なことが好きな目立ちたがり屋?というイメージが先行されるかもしれませんが、あくまでこれは日本酒と蔵のためのパフォーマンスなのです。
「まず、目立って覚えていただくことが大切だと思うんです」と、近藤社長は笑います。

「ジュリー」と呼ばれるようになったきっかけは、実はちょっとした“ノリ”から始まったものでした。
近藤社長がキリンビールに勤めていた頃、九州へ転勤となり、ある商品のイベントやキックオフパーティーに参加していたときのこと。
その商品のCMには沢田研二さんが起用されており、会場で司会者が「今日は 沢田研二さんが来ています!」と場を盛り上げたものの、当然本人がいるわけもなく……。
そこで先輩からの「お前出ろ!」といった無茶ぶりで、急きょステージに立つことに。

会社の先輩の奥さんから赤いセーターを借りて、金ボタンを付けた即席の衣装で、ジュリーをイメージしたパフォーマンスを披露したのが始まりでした。
この出来事をきっかけに、現在、イベントなどでも“ジュリースタイル”を続けるようになってしまいました(笑)。

そんな近藤社長、キリンビールという酒類業界の最前線でビール造りや業界のノウハウを吸収していましたが、実家の蔵が酒造りを休止し、蔵の火が消える光景を目の当たりにしたとき、蔵を復活させたいという想いを父(4代目)にぶつけます。

「もう一度、なんとか酒造りを始めないか」

しかし父から返ってきた答えは厳しいものでした。
杜氏を雇う費用、米の手配、設備、銀行からの資金といった問題が山積していたからです。
「急に言うな。そんな簡単な話じゃない」と、父はそう言って取り合わなかったのです。
正月に再び話を持ち出したときも、「正月に仕事の話をするな」と言われてしまいます。
ただ、そう言った4代目も忸怩たる思いだったはず。それほど当時の業界は厳しかったのでしょう。
それでも近藤社長は諦めませんでした。
そう、キリンビールを辞めたのです。安定した大企業での生活よりも、近藤酒造の復活を選択することを決意しました。

その後、1998年末からは国税局の醸造研究所に講習生として入り、日本酒造りの猛勉強をスタート!日中は醸造の勉強に打ち込み、夜は仲間たちと酒を酌み交わしながら、
「どんなお酒を造りたいか」と夢を語り合う日々を過ごしたそうです。

そしてついに1999年に実家の近藤酒造へ入社。
まず実行したのは、全国の酒蔵に電話をかけ、復活した酒蔵の事例のリサーチ。 自己流で動くのではなく、成功例(データ)を集め、再現性を高める戦略性と堅実さは、キリンビールで培ったビジネスマンとしての鋭い感覚が活かされています。
派手なピンクのスーツ姿とギャップを感じてしまいますね(笑)

やがて酒蔵復活の記事や資料のコピーがFAXで送られてくるようになると、それらを読み込み、実際に酒蔵を訪ねて話を聞く。
こんな試行錯誤を3年間続けた末、小さなタンクから、酒造りを再開することになります。
しかしながら再スタートを切れたのも束の間、近藤社長にはどうしても頭から離れない悩みがつきまとっていました。それは――
"流行の酒に合わせるべきか、それとも自分の味を貫くべきか。"

そんな時、ある酒販店さんに酒を飲んでもらう機会があったと言います。するとその店主はこう言ったのです
「おう、このタンク一升瓶100本分、全部買うから、この味を残してくれ」
この言葉で近藤社長は、はっと気づきました。
「無理して流行を追う必要はない。自分の酒を造ればいいんだ、と。好きだと言ってくれる人に届ければいい。それが酒蔵の仕事なんだ」と。

大企業のマーケティングと、様々な小さな酒蔵の復活例を知ったうえで、酒を醸してきた近藤社長の目標は実にシンプルです。
「この味を、次の世代に残すことなんです」。

流行ではなく、蔵に受け継がれてきた技術を守ること。
「80歳までは現役で酒を造りたい」と語る近藤社長は、今日も「愛媛のジュリー」という異名を持ちながら、「いち杜氏として、蔵元として」真摯に、一途に酒を醸しています。

「愛媛さくらひめ酵母」と愛媛の酒米「松山三井」

愛媛さくらひめ酵母
※愛媛さくらひめ酵母 ロゴ
画像引用元:愛媛酒造組合 愛媛さくらひめシリーズページ


近藤酒造の日本酒にはそんな愛媛ならではの酵母と酒米が使用されています。

花から生まれた香り「さくらひめ酵母」――

愛媛県オリジナルの「さくらひめ酵母」は、県産の花「さくらひめ」から生まれた特別な酵母。

もともと愛媛県産酵母は、1998年に開発された「EK-1」というちょっと味気ない名前でした。
対して四国内でも徳島県では「LED酵母」、香川県では「オリーブ酵母」などといったユニークで県の産業やイメージを表現した酵母名があり、
近藤社長は、
「愛媛県の酵母、『EK-1』も名前を付け直して、PRしていただけないかと、県庁の方に投げかけたんです」。

その当時、愛媛県は桜姫(さくらひめ)という花を県全体で推していたという背景も手伝って、東京農大と愛媛県産業センターと蔵元との3者連携で花から酵母を分離して取ったのが、この愛媛産の酵母「さくらひめ酵母」になったのです。

近藤社長いわく、

「香りは華やかでも、食事を引き立てるバランスを大切にしています」とのこと。

「さくらひめ酵母」のタイプは4種類あり、軽やかなものからコクのあるものまで幅広く展開。
メロンやリンゴ、イチゴのようなフルーティーな香りに、爽やかな酸味が重なり、瀬戸内の魚介とも心地よく調和し、上品な余韻を残します。

近藤酒造 米作り
※近藤酒造五代目蔵元 米作りの様子
画像引用元:近藤酒造Instagram


この香りを支えるのが、愛媛の米「松山三井」。もともとは食用米なのですが、酒造りにも適した特性を持っていることで、使用しています。
というのも、粒が大きく高精白に耐えられ、タンパク質が少ないため雑味の少ない仕上がりになるとのこと。

「派手さはないけれど、酒を綺麗にまとめてくれる米です」と杜氏が語る通り、シャープでキレのある淡麗辛口に仕上がります。

さらに、この米をもとに「しずく媛」という酒米も誕生しています。
華やかな香りの「さくらひめ酵母」と、キレのある味わいを生む「松山三井」。
この組み合わせが、愛媛らしい上品で飲み飽きしない日本酒を生み出すのです。

"日常の食卓にさりげなく花を添える”。そんな酒を醸すための、あたかも道端にそっと咲く花のような酵母や米が、近藤酒造の本質かもしれません。

仲間と醸す”少量多品種”

近藤酒造 蔵人
※近藤酒造 蔵人
画像引用元:近藤酒造Instagram

「どんなメンバーと一緒に酒造りをされているのか教えてください」と問いかけると、近藤社長は少し照れくさそうに、けれどどこか誇らしげに蔵の仲間たちについて語り始めました。

「今はこの画像の3人と、私を入れて4人で酒造りをしています。もうね、本当にこのメンバーやからこそ、今の酒があると思っています

まず名前が挙がったのは、画像一番奥に写っている蔵長の存在でした。近藤社長が生まれるよりも前からこの蔵を支え続けてきた人物です。
「蔵のことは何でも知っとるんですよ。蔵や機械の癖も。蔵を復活させたっていうのは、僕が表に立っとるだけで、実際はこの人がおったからできたことなんです」
蔵長は現在は80歳を超えながらも、酒造りの季節になると当たり前のように蔵に立つ。その姿に、近藤社長は深い敬意をにじませます。

「酒造りが始まるとね、やっぱり楽しいんでしょうね。ずっと来てくれるんですよ」

続いて語られたのは、現在杜氏を務める奥様の存在。大学時代の後輩であり、最も苦しい時期を共に乗り越えてきたパートナーでもあります。
実は、蔵を復活させた当初、周囲の理解は決して十分ではありませんでした。当時は酒造りはほぼ休止状態、主たる業務は酒の配達(卸し)だったからです。
そうなると、昼間は配達業務に追われ、酒造りに使える時間は早朝と夜だけ。近藤社長には、体力的にも精神的にも極限に近い日々が続いていました。
「正直、誰もが応援してくれとったわけじゃなかったんですよね」と語ります。
それでも酒造りを諦めきれず、「迷惑はかけません」と頭を丸めて覚悟を示した若き日の自分。その姿を、誰よりも近くで支えてくれたのが奥様でした。

夜中の麹管理では、「この温度になったら起こしてほしい」と頼み、睡眠を削る日々。そんな生活が数年続いたある朝のこと、
「起きたら7時やったんですよ。『なんで起こしてくれんかったんや』って妻に言ったら、妻は『あの温度と香りやったら大丈夫や』って言ったんです
その一言に、近藤社長は気づきました。
「もうね、その瞬間に“麹は妻に任せられる”って思いました(笑)」
酒造りは五感の仕事。目で見て、鼻で香りを取り、耳で音を聞き、口で味わい、手で触れる。奥様はその感覚が鋭く、そんな共有できる存在が増えたことで、酒の質は大きく変わりました。

「それまで1人でやっとったのが、2人になっただけで全然違うんですよ。4つの目、2つの鼻、2つの口になるんですから」
その積み重ねが、やがて全国新酒鑑評会での金賞受賞という結果へとつながります。
「彼女がおらんかったら、ここまで来れとらんと思います」と言います。

そしてもう一人、副杜氏として蔵に加わった女性蔵人の存在も欠かせません。愛媛の大学で発酵学を学び、各地の酒蔵で経験を積んできた実力派です。
実は最初、地元の同級生を通じて、彼女を蔵に入れてほしいと依頼を受けたのですが、近藤社長はためらったといいます。
「実際体力的にも大変な仕事やし、もっと大手のほうががいいんじゃないかって思って、別の蔵を紹介したりもしたんです」
結局彼女は、徳島県の蔵などで8年間修業を積んだのち、2年前(2026年時点)に酒造りのメンバー入りを果たします。
「ちょうど蔵長が80歳を超えて、無理はさせられないといった時だったので、タイミングが全部合ったんですよね。これはもう来てもらうしかないなと。縁ですね」
今では副杜氏として、蔵を支える大切な存在になっています。

そして何より近藤社長が嬉しそうに語るのが、なぜかチーム全員の“味の方向性が一致している”こと。
「みんな、しっかり旨みのある酒が好きなんですよ。そこが一緒っていうのは本当に大きい」。
酒の設計や搾りのタイミングなど、重要な判断も自然と同じ方向へと収束していくといいます。
一人で酒造りをしていた頃は、流行に心が揺れることもありました。例えば、
「今こういうのが流行っとるから、そっちに寄せた方がいいんかなって思ったり」
しかし、そんな迷いを断ち切ってくれるのが仲間の存在。
「『何言ってんの、そんなのどこでもあるやないの』って言われるんです。『うちの酒はこれやろ』って」(笑)
そんなメンバー達の言葉に、何度も救われてきたといいます。

長年蔵を守り続けてきた蔵長、鋭い五感を共有する妻、そして新たな風を吹き込む副杜氏。それぞれが互いを信頼し、同じ方向を向いて酒造りに向き合う——。
「このメンバーやからこそ、今の酒がある」と近藤社長は語ります。

このように、日本酒造りの本質は"五感”と“経験”にあります。
教科書だけでは身につかない感覚を、実際に手を動かし五感で確かめながら積み重ねていく。
ただし、日本酒は基本的に一年に一度の仕込み。30年続けても経験は30回に限られ、この少なさが継承の難しさの一因でもあります。
そこで近藤酒造が取り入れたのが、小タンクでの仕込み。
小分けにすることで手間は増えますが、一年の中で複数回の醸造が可能となり、メンバーみんなが経験値を効率よく積み重ねることができます。
さらに小仕込みは、新たな挑戦をしやすい面があります。
「量が少ない分、いろいろ試せるんですよね」
この言葉通り、新しい酵母や製法にも挑戦しやすく、"少量ずつ多品種の個性豊かな日本酒"が生まれていきます。
経験を重ねる工夫と挑戦する姿勢。その積み重ねが、より魅力ある酒造りへとつながっているのです。

愛媛特産みかんを使ったジンとリキュール

仲間と共に”少量多品種”で醸している近藤酒造では、清酒だけではなくジンやリキュールなどの種類も製造しています。
愛媛特産のみかんを使ったスピリッツは、いまや近藤酒造のもう一つの顔とも言える存在です。

愛媛みかんプレミアムジンリキュール

近藤酒造 愛媛みかんプレミアムジンリキュール
※近藤酒造 愛媛みかんプレミアムジンリキュール
画像引用元:近藤酒造オンラインショップ
 

このリキュールの主役は何といっても"、ひとつひとつ手摘みされ、”丁寧にハンドプレスされた愛媛県産のみかん"。

ベースとなるのは、そのみかんをボタニカルに使用した「近藤酒造オリジナルのクラフトジン」。
そこにさらに濃厚なストレート果汁を注ぎ込むという、まさに「プレミアム」の名にふさわしい贅沢な造りになっています。

グラスに注いだ瞬間に広がるのは、もぎたてのみかんを剥いたときのような瑞々しい香り♪
そして口に含むと、ジンの爽やかな風味と、みかん本来の濃密な甘みが重なり合い、とってもフルーティーな味わいが楽しめます。

その確かな美味しさはプロの目にも留まり、2026年2月に開催された「第39回グルメ&ダイニングスタイルショー春」の新製品コンテストでは、見事ビバレッジ部門で大賞に輝きました。

500mlのボトルにアルコール度数は18度と少し高めですが、その分味わいはとってもリッチ♪

氷を溶かしながらゆっくりと香りの変化を堪能できるロックや、シュワッとはじける泡がみかんの香りをさらに引き立ててくれるソーダ割りがお勧め!
愛媛の恵みが詰まった特別なギフトとしても、きっと喜んでいただけるはずです。

クラフトジン PACHI PACHI(パチパチ)

近藤酒造 クラフトジン PACHI PACHI(パチパチ)
※近藤酒造 クラフトジン PACHI PACHI(パチパチ)
画像引用元:近藤酒造オンラインショップ
 

酒造りを通して地域を巻き込みたい——そのために近藤社長が考えていたこと。それは、
「難しいことじゃなくて、周りから『なんか楽しそうにやっとるなー』って思ってもらいたかったんですよ」。
そんな想いから社長は愛媛を象徴する“みかん”に着目し、コラボレーションしたのは、段々畑でみかんを育てる地元農家さんたち
冬の風物詩として知られるみかんですが、農家さんとしても「冬だけじゃなく、一年中楽しめる形にしたい」という想いから、みかんを使ったクラフトジンの開発をスタートします。

ただ、問題としては、当初の近藤酒造にはスピリッツ製造の免許すらなく、蒸留の経験もゼロ。まさに手探りの状態からのスタートとなりました。
「免許もない、蒸留もしたことない。ほんとゼロからでしたね」

それでも、みかん農家と販売店、そして近藤社長の3人で蒸留器の前に立ち続けます。朝から夕方まで、何度も試作を繰り返し、みかんの皮や果実の香りを一つひとつ確認していきました。
その地道な積み重ねが、みかんのクラフトジン「PACHI PACHI」(パチパチ)です。
この印象的なネーミングには、愛媛のみかん農家の風景そのものが込められています。 まず、みかんは収穫時に2度ハサミを入れるそうです。1回目は枝を傷つけないように「パチッ」と。2回目は身を傷つけないように「パチッ」と丁寧に摘み取られていく——。
だから、農家の方に「みかんの音って何ですか?って聞いたら、“パチパチかな”って答えが返ってきたんです」。
その瞬間、名前は決まりました。生産者がみかん畑に響く音を酒の名前にするという、シンプルでありながら強いストーリー性を持ったブランドといえます。

『愛あるリキュール』 愛媛みかんde酒

近藤酒造 『愛あるリキュール』 愛媛みかんde酒
※近藤酒造 『愛あるリキュール』 愛媛みかんde酒
画像引用元:近藤酒造オンラインショップ
 


そして、このクラフトジンをベースに誕生したのが「『愛あるリキュール』 愛媛みかんde酒」です。 もともと展開していた"みかんリキュール"をさらにブラッシュアップし、味わいの完成度を高めた一本。ついにその品質が認められ、グルメショーのビバレッジ部門で大賞を受賞するまでに至りました。 ジンの爽やかなボタニカルに、みかんのジューシーでやさしい甘みが重なり、ソーダ割りやジントニックでも楽しめるバランスの良さが魅力♪

さらにその味わいだけでなく、ラベルのデザインにも、しっかりとした役割分担とメンバー各自の得手不得手を見極めてきた近藤社長の判断が生かされています。
というのも、このラベルデザインは、愛媛県のデザイナーと、近藤社長の奥様が中心となって制作されました。
「僕が入ると、どうしても“日本酒っぽい”デザインになってしまうんですよね(笑)」
その言葉通り、あえて固定観念を外し、女性目線で“愛媛らしさ”を表現。洗練されたデザインは、ギフトやお土産としても人気だそう。
松山空港でも取り扱われており、国内外の旅行者の目を引く存在となっています。直行便がある韓国や台湾からの観光客にも買っていただけているようです。

そんな近藤酒造の『愛あるリキュール』は、単なるリキュールではありません。地域の農家、販売店、そして蔵元が一体となって生み出した、“愛媛のストーリーそのもの”と言えるでしょう。
「うちの蔵だけで作ったわけじゃなく、農家さん、デザイナーさん、地域のみんなで作った酒なんですよ」という近藤社長の言葉の通り、一杯の中に込められているのは、みかんの香りに端を発した人と人とのつながり、そして挑戦の軌跡と言えますね。

 

【近藤酒造】

792-0802
愛媛県新居浜市新須賀町1丁目11番46号
TEL:0897-33-1177
HP:https://kondousyuzou.com/
オンラインストア:https://kondousyuzou.shop-pro.jp/

近藤酒造の日本酒をご紹介

華姫桜 華ラベル 松山三井

近藤酒造 華姫桜 華ラベル 松山三井
近藤酒造 華姫桜 華ラベル 松山三井
画像引用元:近藤酒造オンラインショップ


「華姫桜 華ラベル 松山三井」は、地元・新居浜の風土をそのまま映し出した純米酒。
使用する酒米は、新居浜・旦の上(だんのうえ)で育てられた「松山三井」を100%使用。古くから良質な米の産地として知られるこの土地の米を使い、吟醸造りで丁寧に醸されています。

仕込みには、愛媛県が開発した「さくらひめ酵母」を採用。
4種類ほどある酵母の中でも本作では、華やかな香りが特徴の“タイプ1(トロピカル)”を使用しており、洋ナシを思わせるフルーティーな香りがふわりと広がります。

その味わいは、お米本来の旨みを感じながらもすっきりとした仕上がり。冷酒で爽やかに楽しむのはもちろん、少し温めて旨みを引き出すのもおすすめです。

ちなみにインパクトのある花魁ラベルには、お酒は20歳から楽しめる大人の飲み物ということで”いやらしくない花魁”という意味合いが込められているのだとか。
今では地元で”お姫様ラベル”や”華ラベル”と呼ばれるほど馴染んできているようです。

そんなストーリーが垣間見える華ラベルは、地元の米、地元の酵母、そして蔵元の技術が重なって生まれたまさに“新居浜の地”を味わえる純米酒といえるでしょう。

また、近藤社長がこのお酒と合わせるペアリングには、えんどう豆のスナック「ビーノ」やパセリの素揚げ、カマンベールチーズなど少し塩味のあるものを挙げていました。

さらに水産王国・愛媛ならではの真鯛などの白身魚と合わせるとその旨味を最大限に引き出してくれますよ!

■華姫桜 華ラベル 松山三井 スペック■

原材料 米(国産)・米麹(国産米)
原料米 松山三井100%
精米歩合 60%
酵母 愛媛さくらひめ酵母 TYPE-1
アルコール度 15度

華姫桜 にごり原酒

近藤酒造 華姫桜 日本酒 にごり原酒

画像引用元:近藤酒造オンラインショップ


代表銘柄である『華姫桜(はなひめさくら)』のラインナップの中でも、ひときわ個性が光るのが、この「にごり原酒」です。

にごり酒特有のトロリとした濃厚な質感がありながら、実はこのお酒には、地元・新居浜の食文化から生まれた、ちょっとした楽しみ方が隠されています。
一般的ににごり酒といえば、キリッと冷やしてデザートのように楽しむイメージが強いかもしれません。
近藤社長も言うように、もちろん冷酒でも十分に美味しいのですが、社長がお勧めするのは「お燗」にして飲むスタイル。
実はこの飲み方、新居浜に多い焼肉屋さんや焼き鳥屋さんといった、地元の食の現場から誕生したようです。
もともとお店では、濃いタレの味に負けないようにと、にごり酒をロックで出すのが定番だったそうです。
そんな中、お店の方から、

「温かい料理に寄り添うようなお酒はないだろうか」と言われたこともきっかけで、試しにこのお酒を温めてみました。
すると、お燗にするとで香りが穏やかになり、その代わりにお米のふくよかな旨味が「ふわーっ」とお口の中で豊かに広がっていくことが感じられたのです。
まるで焼肉と一緒にホカホカのご飯を頬張っている時のような、安心感のある心地よさ、という感じでしょうか。お肉の脂やタレのコクを、お米の力強い旨味が優しく包み込んでくれる、組み合わせになりました。

この噂は瞬く間に広がり、遊び心で出品してみた"全国燗酒コンテスト"では、見事に「特殊ぬる燗部門で入賞」を果たすことになります。
雪のように白い見た目からは想像できないほど、懐の深い「華姫桜 にごり原酒」。
冷やしてその濃厚さを堪能するのはもちろん、今夜はお燗にしてみてはいかがでしょうか。お米の持つ本当の優しさと力強さに、きっと心まで温まるはず。

購入する

■華姫桜 にごり原酒 スペック■

原材料 米(国産)・米麹(国産米)・醸造アルコール
精米歩合 70%
酵母 協会7号
アルコール度 18度以上19度未満
日本酒度 -7
酸度 1.5

近藤酒造FAQ

愛媛県新居浜市にある近藤酒造の代表銘柄「華姫桜(はなひめさくら)」の名前の由来は何ですか?
「華姫桜」の名前は、愛媛の地名が天女(お姫様)が舞い降りたという伝説から、“姫を愛する国”という意味で名付けられたという由来にちなんでいます。近藤社長は、この地域の歴史とロマン、そして愛媛という土地への深い愛情を込めて、あえて「媛」ではなく「姫」の字を選んで名付けました。
近藤酒造の五代目蔵元である近藤嘉郎社長が「ジュリー」と呼ばれるようになったきっかけは何ですか?
近藤社長がキリンビール勤務時代、沢田研二さんを起用した商品のイベントで、先輩からの無茶ぶりで急遽ステージに立つことになりました。その際、赤いセーターに金ボタンを付けた即席の衣装でジュリーをイメージしたパフォーマンスを披露したのが始まりです。以来、イベントなどで“ジュリースタイル”を続けるようになり、「ジュリー」と呼ばれるようになりました。
近藤酒造は、かつて酒造りを休止していた時期があったそうですが、どのようにして再開したのですか?
日本酒需要の落ち込みにより、近藤酒造は一時的に酒造りを休止していました。しかし、キリンビールを退職した五代目蔵元の近藤嘉郎社長が、蔵の復活を強く決意。国税局の醸造研究所で日本酒造りを猛勉強し、全国の復活した酒蔵の事例を研究した後、1999年に実家へ入社。そして2001年、600リットルの小さなタンクから酒造りを再開しました。

まとめ

明治11年創業の近藤酒造は、かつて日本三大銅山の一つとして栄えた新居浜に唯一残る酒蔵。
一時は日本酒需要の低迷により「休蔵」の危機にありましたが、5代目・近藤嘉郎社長がキリンビールを退職して帰郷し、2001年に自ら杜氏として酒造りを再開させました。
ピンクのスーツとハットがトレードマークの近藤社長は、地元で「愛媛のジュリー」の愛称で親しまれ、その派手なパフォーマンスは、すべて「蔵と日本酒を知ってもらうため」。

社長を子供の頃から知っている80歳を超えるベテラン蔵長、五感を共有する奥様(杜氏)、そして経験豊富な女性副杜氏という信頼できる4名のチームで、「小タンク・少量多品種」の酒造りに励んでいます 。

近藤酒造が大切にしているのは、地の米・地の水・地の酵母。
平成の名水百選「つづら淵」と同じ水脈の伏流水や、愛媛県産の花から生まれた「さくらひめ酵母」、地元産の米「松山三井」を使用。
さらに地元農家と連携したクラフトジン「PACHI PACHI」や、2026年2月に大賞を受賞した「愛媛みかんde酒」など、日本酒の枠を超えた挑戦も高く評価されています。

ぜひ味わってほしい二本は、
「華姫桜 華ラベル 松山三井」洋ナシのようなフルーティーな香りと、お米本来の旨みが楽しめる純米酒です。もう一本は「華姫桜 にごり原酒」。
濃厚な旨みが、焼肉などの濃い味付けの料理と絶妙にマッチします。
「姫を愛でる国=愛媛」の伝説を名に冠した『華姫桜』。
他の酒にも一度は消えかけた灯を再び灯した、造り手たちの深い郷土愛が込められています。

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とも 日本酒ライター ラジオ番組制作者を経て、Web・EC事業に長らく携わっています。
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じゅん 日本酒ライター ものづくりに携わっている傍ら日本酒ライターをしています。
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