オンライン酒蔵留学とは?
オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」が生まれます。
離れて暮らす仲間と「たのしく学ぶ」ことで、いつものお酒がさらに美味しく味わい深くなっていきます。
・酒蔵見学に行ってみたいけど、時間が取れない…
・もっと色んな日本酒の知識を増やしたい!
・日本酒好きの仲間が欲しい!
・酒蔵を応援していきたい!!
こういった想いを抱いている方には是非おすすめの場です!!
第55回 オンライン酒蔵留学

■日時:5月31日(土)19:00~
■登壇者:倉本酒造 七代目蔵元 倉本隆司(くらもとたかし) 氏
今回ご登壇いただいたのは奈良県奈良市にある酒蔵「倉本酒造」。
奈良と言えば「日本清酒発祥の地」。
これまで多くの酒蔵さんにご登壇していただいたオンライン酒蔵留学。
日本酒の推し蔵文化を創造し、応援してきたハンズオンSAKEですが、あろうことか日本清酒発祥の地である奈良の酒蔵さんにご出演してもらうのは今回が初めて。
巡り巡ってようやく基本に戻ってきたという感じです。
そんな倉本酒造さんから、奈良酒の歴史である日本最古の酒母「菩提酛(ぼだいもと)」の話や七代目蔵元が描くこれからの日本酒についてなど、たっぷりとお聞きすることが出来ましたので是非ご紹介いたします!
倉本酒造(くらもとしゅぞう)について

1871年(明治4年)創業。
奈良県北東山間部の大和高原。
標高約500mの厳冬の地・都祁(つげ)に佇む小さな老舗酒蔵。
奈良時代、かつてこの地域には「氷室」が点在しており、平城京長屋王邸宅跡から発掘された木簡からは「都祁氷室(つげのひむろ)」と記載されたものが見つかるなど、氷を朝廷へ献上していたとされる歴史的背景があります。
今も変わらぬ寒冷なこの地で良質な稲を育て、自社の山で採取される山水を汲む。
倉本酒造は、創業以来、地の利を活かした酒造りをしてきました。

倉本酒造で代々醸されてきた地元向けの銘柄が「金嶽(きんがく)」。
蔵のある周りの山々には雲がたなびき、雲の合間から光が差す時、黄金色に輝く遠岫は金の岳を形成する。
この様子から「金嶽」と命名されました。
その後、六代目の代となり、蔵元有志により奈良酒伝統の酒母「菩提酛」が復活。
そして、菩提酛で造られる定番酒「つげのひむろ」が誕生します。
これにより倉本酒造は奈良県でも数少ない菩提酛造りの蔵となったのです。
現在は七代目・倉本隆司氏が杜氏として蔵を率いて、独自で編み出した乳酸菌活用法「FLaP製法」などを用いた新たな日本酒「KURAMOTO」を醸すなど伝統を重んじながら革新的な側面も打ち出した酒造りを行っています。
山は水


「山は水」
こちらは倉本酒造が酒造りを行う際に大切にしているコンセプト。
代々大切に手入れしてきた裏山。
火砕流堆積物の地層でゆっくりと濾過された甘みのあるやわらかな山水は、この蔵だけのものであり、この山と水こそが倉本酒造の礎とも言えます。
その大地の贈り物を手間と時間をかけ、少量ずつ丁寧に醸されたお酒は、地元を中心に愛されてきました。
そして、2021年、改めてこの自然の恵みに感謝し、守っていかなければならないという想いを込め、蔵のロゴマークを「山」と「水の波紋」から着想を得たデザインへと一新しました。
倉本酒造は今後、このマークと共に都祁のテロワールが感じられる唯一無二の地酒で私たちを魅了してくれることでしょう。
奈良酒の歴史「菩提酛(ぼだいもと)」とは?

奈良酒の歴史
「日本清酒発祥の地」である奈良。
現在の日本酒の製造技術の根源となる技術は、室町時代末期の奈良で確立されました。
平安時代には朝廷直属の酒造組織が担っていた酒造りの技術が室町時代にかけて民間の造り酒屋や、大寺院に移ってきた背景があります。
中世の時代、奈良の興福寺、東大寺、正暦寺などの大寺院は、朝廷や幕府の財源の元、教育機関や政治機関のような役割を担っていましたが、やがて室町・戦国時代に入り、応仁の乱以降、各地が天下取りに荒れ、経済状況の変化により寺院も経済的措置を講じなければならなくなりました。
そこで寺院経営のための財源調達の手段の一つとして酒造りが行われたのです。

当時、寺院でつくられるお酒を僧坊酒(そうぼうしゅ)と呼んでいました。
特に奈良市東南の郊外、菩提山町にある菩提山正暦寺でつくられた僧坊酒「菩提泉(ぼだいせん)」は、酒造り諸流の根源とも言われており、現代の酒母造りの原点とも言える「菩提酛造り(ぼだいもとづくり)」が確立されました。
>やがて僧坊酒は「諸白(もろはく)造り」というお酒へと進化を遂げることになるのですが、その「諸白造り」を確立していく過程で、現代の酒造技術の礎となる5つの要素を生み出しました。
・「白米の使用」
・「上槽」
・「火入れ」
・「酒母」
・「段(とう)方式(段仕込み)」
この現代に通じる醸造技術の確立と発展こそ奈良が「日本清酒発祥の地」と呼ばれる由縁であり、“奈良酒”の伝統でもあるのです。
ちなみに上槽(搾り)を経て、清酒となることから当然、樽や搾り袋には酒粕が残ります。
奈良には古くからこの酒粕を利用した漬物「奈良漬」があり、そのネーミングから見て分かる通り、奈良が"日本清酒発祥の地”たり得る証拠だと倉本さんは推測しているようです。
菩提酛の特徴

現代の日本酒醸造に多く用いられている酒母には主に「速醸」「生酛」「山廃酛」があります。
日本酒造りに必要な乳酸を得るために、自然の力で乳酸菌を一から育てる「生酛系酒母」と人工的に作られた乳酸を添加する「速醸系酒母」とに分かれ、どちらも蒸米や麹に乳酸を関与させます。
菩提酛がこの二つと大きく違うのは、蒸す前の生米を水に浸した「そやし水」と言われる酸っぱい乳酸酸性水をあらかじめ造ること。
この「そやし水」を酒母の仕込みに用いることによって、速やかに酸性条件下で酒母を育成することを可能にしました。

こうして日本最古の酒母として室町時代に確立された菩提酛ですが、1910年(明治43年)に速醸造りが誕生して以降、菩提酛造りは衰退の一途を辿り一度途絶えることになります。
しかし、1996年(平成8年)に奈良県の蔵元有志が菩提酛を復活させようと集い、「奈良県 菩提酛による清酒製造研究会(菩提研)」を設立。
1998年(平成10年)には、酒母製造免許が下り、菩提山正暦寺とともに寺院醸造を復活させました。
その後、現在に至るまで毎年共同で菩提酛を造り続け、会員蔵8社がそれぞれ分けて持ち帰り、各蔵独自の菩提酛純米酒を醸しています。
菩提研では菩提山正暦寺で、正暦寺境内の環境、境内より湧き出る岩清水、正暦寺で単離された正暦寺乳酸菌、正暦寺で単離された正暦寺酵母を用いて寺院とともにこれを醸し、室町時代の寺院醸造を現代に再現し、これを文化的側面、科学的側面から後世に伝えていくべき役割を担っているのです。
七代目蔵元が醸すスタンダード酒「KURAMOTO」

現在、倉本酒造七代目蔵人及び専務取締役を務めている「倉本隆司」さん。
蔵を継ぐつもりで東京農業大学 応用生物科学部 醸造科学科に進みますが、当時の蔵はとても継げるような状態ではなかったため、乳酸菌を扱うことに共通点のある森永乳業に入社することになります。
永久就職する予定でしたが、とある一杯の日本酒と出会ったことがきっかけで再び酒造りへの気持ちが芽生えました。
福島県の蔵元が醸すその一杯の日本酒はフルーティーで飲みやすく、心の底から美味しいと思えるようなものでした。
『こんな美味しいお酒が造れるならもっと日本酒を飲んでくれる人が増えるのではないか』
と感じ、2015年に蔵へ戻ることを決意します。

フルーティーな日本酒に衝撃を受けた倉本さんでしたが、蔵に戻り、改めて父が醸すお酒を飲んで菩提酛由来の酸の効いた奈良酒の魅力に気付かされました。
2017年に杜氏となり、翌年の2018年、蔵の歴史と奈良酒の伝統を重んじながら、日本酒をもっと自由に表現していく新しいスタンダードなお酒「KURAMOTO」をスタートさせます。
この「KURAMOTO」の登場により多くの方々に倉本酒造を知ってもらうことになり、一躍フラッグシップ的な存在となりました。
中でも、倉本さんの思い入れのあるお酒が上記写真の「KURAMOTO SE」。
倉本酒造が醸す日本酒の新しい香りを表現したお酒で、ライチやマスカット、グレープフルーツが融合したような香りが特徴。
白ワインのソービニヨンブランや、クラフト系の一部のビールに含まれている、キリっと爽やかな青い香りで、ワインユーザーや日本酒ビギナーの方にも飲んでほしいお酒です。
その飲み口は、爽やかな酸味とバランスのよい甘さが口の中に広がりつつ、後口はスッとキレる。
是非冷やしてワイングラスで飲んでいただきたい一本となっています。
また、ラベルには爽やかな青い香りをイメージしたエメラルドグリーンの箔押しが施されているのも倉本さんのさりげないこだわりです。
ちなみにネーミングの「SE」は、【iPhone SE】などで使われるスペシャルエディション(限定版・特別版)から採用。
誰もが聞き馴染みのある言葉で、特別感のあるお酒を表現し、遊び心と共に日本酒の間口を広げていこうという意味合いが込められています。
KURAMOTO」シリーズには、他にも菩提酛由来の新しい日本酒の味わいを表現した「KURAMOTO R1」や「KURAMOTO AP」があり、いずれもこれまで見たことのない日本酒の世界へと導いてくれます。
倉本酒造が展開する日本酒は、飲んで、見て、想像して、五感をフルに活用して楽しめるお酒なのです。
新しい日本酒の体験「KURAMOTO SDP」

「日本酒をもっと身近に、カジュアルに楽しんでほしい。」
そんな想いから倉本酒造がクラウドファンディングを経て開発したのが、パウチの日本酒飲み比べセット「KURAMOTO SDP」です。
もっと幅広い方に日本酒をの飲んでもらうにはどうしたらいいか?
「休日に自宅でゆっくりコーヒーの味わいを楽しむ」「ちょっと特別なクラフトビールで乾杯する」、そんなシーンを日本酒でつくれないかと試行錯誤しました。
KURAMOTO SDP 3つのポイント
■風味豊かな日本酒3種の飲み比べセット■

Makuake「【伝統×挑戦】創業150年以上の老舗酒造が作る、三種の飲み比べで新しい日本酒体験」プロジェクトページ
難しく考えずに。カジュアルに日本酒の豊かなフレーバーを楽しんでいただけるように、以下の1合×3種類のお酒をセレクトしてセットしました。
・KURAMOTO R1
・KURAMOTO Ym64 SAKE-TEN
・つげのひむろ 菩提酛 純米酒
お気に入りの日本酒との出会いにワクワクしながら、それぞれの日本酒の味わいの差をお楽しみいただけます♪
■気分を高めてくれるパッケージ■

日本酒にあまり馴染みのない方々にも楽しんでいただけるように、従来の瓶容器ではなく、カジュアルでおしゃれなパウチ型のパッケージデザインに仕上げました。
保存も簡単で、ポスト投函も可能なので贈り物に最適です!
■1~2人でも飲み切りやすい1合×3種のセット■

Makuake「【伝統×挑戦】創業150年以上の老舗酒造が作る、三種の飲み比べで新しい日本酒体験」プロジェクトページ
1合×3種類のセットなので、1人でも2~3人でもちょうど飲み切りやすく特別な飲み比べ体験を楽しんでいただけます。
ホームパーティーの手土産や週末の特別な「お疲れ様」にぴったりなセットですので、是非、「KURAMOTO SDP」で大切なあの人との特別な時間をお過ごしください。
この「KURAMOTO SDP」は、クラウドファンディングのみでの限定販売でしたので今後のレギュラー商品化に期待が高まります♪
【倉本酒造】
〒632-0231
奈良県奈良市都祁吐山町2501
TEL:0743-82-0008
FAX:0743-82-1748
HP:https://kuramoto-sake.com/
オンラインショップ:https://kuramotosake.thebase.in/
倉本酒造のパウチ日本酒をレビュー♪

今回のオンライン酒蔵留学でも倉本酒造さんからパウチの容器でお酒をお届けいただきました。
「KURAMOTO-SDP」とは少し内容が異なり、今回は「つげのひむろ」の古酒がセレクトされてましたので早速レビューしていきたいと思います!
KURAMOTO R1

倉本酒造が醸す日本酒の新しい味わいを表現したお酒です。
菩提酛の醸造で欠かせないそやし水。
その際に使用している正暦寺乳酸菌を用いて、倉本さんが独自で開発した「FLaP製法」により醸しました。
この製法は、乳酸菌の持つ力・乳酸の味わいに加え、味をすっきりさせるという点に大きく焦点を当てた製法であり、これからの乳酸菌の使い方でもあります。
口に含むと、乳酸菌由来のまろやかな酸味とバランスの良い甘みが広がり、ライトな口当たりでスッキリとキレる後口。
冷やしてキリッとした状態で飲んで頂けると新しい日本酒の世界が拓けることでしょう。是非、日本酒ビギナーの方にもおすすめです!
ちなみに倉本酒造のお酒では精米歩合が「64%」や「81%」と珍しい数字となっていますが、これはそれぞれ8と9の二乗を表した倉本さんの数字遊びが隠されているのです。
つげのひむろ 菩提酛 純米酒

室町時代(1400年代)に奈良・菩提山正暦寺で創醸された日本最古の酒母「菩提酛」。
1998年(平成10年)に奈良県の蔵元有志(菩提研)主導で、その製法を500年ぶりに復活させました。
正暦寺にて寺領の米と水・正暦寺酵母・正暦寺乳酸菌を用いて酛を造り、菩提研会員蔵が分けて持ち帰るという非常に貴重で少量な酒母。
その持ち帰った酒母を近代醸造法と融合させた甘味と酸味のある濃醇旨口の純米酒に仕上げたのがこの「つげのひむろ」です。
前述の通り、かつて都祁には「都祁氷室(つげのひむろ)」が点在しており、氷を朝廷へ献上していたとされる歴史的背景があります。
その歴史にあやかって銘柄に命名しました。
つげのひむろ 菩提酛 純米酒 十五年古酒

「つげのひむろ」を15年以上熟成させた古酒をブレンドして造られた大変贅沢な大古酒。
長期熟成からくるドライフルーツ系の深みのある複雑な香りとまったりと広がる穀物感。
かすかに残る甘味と酸味が凝縮した旨味と相まって、絶妙なバランス感でゆっくりと口中に広がります。
古酒独特の濃醇な余韻は長くしっかりと感じますが、しつこくなくクリアで綺麗な印象です。
ひとたび口に含めばその熟成された長い年月が刻み込まれて、至福のひと時となることでしょう。
パウチから注がれる琥珀色の古酒が煌びやかで新鮮な感覚で味わうことが出来ました。
倉本酒造Q&A
今回の留学中に挙がった倉本さんへの質問を一部ご紹介します。
- 菩提酛のそやし水に正暦寺の乳酸菌を入れるということは天然ではないのですか?
- 正暦寺の仕込み水から造った乳酸菌を培養しています。
これは各蔵が集まって酒母造りを行うため安全醸造の観点から培養したものを添加しています。 - パウチへの充填は外注でされてるんですか?
- 自社で行っています。容器を変えることで日本酒の魅力が広まってくれれば嬉しいです。
- 倉本酒造さんのお酒には低精白のものが多いですが何かこだわりがあるのですか?
- やはり磨かない方が個性的なお酒が造れることですね。
例えば、奈良の酒米「露葉風」というお米は苦みが特徴なのですが、それを消すのではなく活かしてあげるように心がけています。

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