京都 松井酒造 神蔵 日本酒 ハンズオンsake オンライン酒蔵留学

【京都府京都市・松井酒造】香りと味わいが高次元に調和する日本酒「神蔵KAGURA」。創業300年!洛中最古の酒蔵は最先端な都市型酒蔵へ~オンライン酒蔵留学~

オンライン酒蔵留学レポート

オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」、そして「推し蔵」が生まれる場となります。

本記事では、これまでオンライン酒蔵留学にご出演していただいた酒蔵さんをご紹介!
この記事を通して、酒蔵さんの想いやこだわりについて是非触れてみてください♪

今回は、第23回オンライン酒蔵留学にご出演いただいた松井酒造(京都府)をご紹介いたします♪

松井酒造(まついしゅぞう)について

松井酒造 京都 酒蔵 日本酒 神蔵 kagura
松井酒造 鴨川蔵正面
※蔵元提供画像

京都の市街地、かつて「洛中」と呼ばれたエリア――

明治中期には"131軒もの酒蔵が軒を連ねていた"といいます。
しかし都市化の流れで、その数は激減。
現在まで酒造りを続けているのは、"わずか2軒のみ"となっています。
その貴重な一軒が、今から約300年前の享保11年(1726年)創業の松井酒造です。

創業当初は、但馬国高木城主家臣であった四代目当主 松井治右衛門(じえもん)により現在の兵庫県香美町で酒造りを行っていました。
さらに創業時の松井家は「天神丸」「八幡丸」という2隻の船で北海道と交易をしており、酒を積んで向かった先は北海道「千歳」。

同蔵の代表銘柄である「富士千歳」の名に、その当時の背景をうかがうことができます。
その名に込められているのは、「霊峰富士に航海の安全を祈願し、お客さまの千歳の幸せを願った」という縁起だと伝えられています。しかしその縁起の底には、当時は過酷であった船旅への切実な感情も伝わってきます。

300年という長い歴史を持つこの松井酒造の道のり。他の歴史ある酒造の例にもれず、決して順風満帆ではありませんでした。

同蔵の長い歴史をさかのぼると、時代に翻弄されては何度か移転を余儀なくされたのです。
現在の松井酒造は"マンションの1階"という、一見すると酒蔵とは思えない場所にあります。
しかしここに戻るまでにも"40年”という歳月がかかっているのです。

純米大吟醸 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(白)
純米大吟醸 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(白)
画像引用元:松井酒造"X"



そんな都市型の場所で、「蔵=年季の入った木造や土蔵」という日本人のイメージを覆し、どのようにして国内外のファンを獲得してきたのか。

その一翼を担っているのが松井酒造の看板商品である「神蔵KAGURA」
昔からお酒は神様からの贈り物と言われてきたように、”神様への感謝を忘れない”よう名付けられたこのお酒は、香りと味わいが高次元に調和する清酒。

一般的に日本酒は、香りを求めるとお米の旨味が犠牲になり、お米の旨味を求めると香りが犠牲になる傾向になりがちですが、この「神蔵KAGURA」はその両方の良さが見事に引き出されていて、飲んだ人の心を癒し喜びを深めてくれるのです。

最先端の酒蔵でありながら伝統技術が垣間見える。
食事との相性も良く、決して派手ではないが日常に寄り添ってくれる存在。それが多くのファンを魅了し続けているのでしょう。

その歩みには、"酒造りだけではなく、多くの日本の伝統文化や事業に通じるヒント"が詰まっていると思えてなりません。

一方で、京都という地は、あらゆる人々が寺社仏閣と密接に生活してきた土地。
当然ながら松井酒造は昔も今も京都の神社仏閣と深く結びつき、育ってきた蔵。
節分祭発祥の地・吉田神社をはじめ、金閣寺、銀閣寺、そして酒造りの神様を祀る松尾大社など、名だたる社寺の御用酒を務めてこられたそうです。

40年の時を経て、まず蔵が現在の場所で復活した際に松尾大社から贈られたのは「旧京都市内に残る酒蔵としては一番古い酒蔵」という言葉とともに掲げられた御用達の看板でした。

松井酒造 京都 酒蔵 日本酒 神蔵 kagura
松井酒造 御用達看板
画像引用元:松井酒造HP


他にも臨済宗相国寺派大本山相国寺など、歴史の重みと日本が世界に誇る文化財でもある様々な寺の看板を賜っているのです。
そんな厳かな伝統の中で、松井酒造は“祈りと願いのそばにある酒”を、今も変わらず造り続けています。

伝統をしっかりと継承しつつ、松井酒造は2022年、酒蔵と直営店舗の"大規模なリニューアルを実施"しました。約300年の歴史を持つ老舗蔵は、現代の日本酒ファンや観光客に向けた“体験型の酒蔵”へと進化しています。
京都の新たな観光スポットとして、新鮮な気持ちで訪れてみてはいかがでしょうか♪

創業300年!酒造り断念から太陽光発電導入まで~都市型酒蔵へと進化した軌跡~

松井酒造
※松井酒造の皆さん
画像引用元:松井酒造Instagram


松井酒造は、創業から12代目に至るまでは、現在の兵庫県香美町で酒造りを行い、代々松井治右衛門の名を踏襲してきました。

その後、江戸末期に蔵を京都・洛中(現在の中京区河原町通下丸屋町)へ移します。しかし、それからは幕末の混乱や東京への遷都などがあり、京都の街とともに松井酒造も翻弄される時代が続きます。

蔵を焼失するといった絶望的な出来事。また大正年間から昭和後期にかけて、京都で路面電車を走らせるための拡張工事の影響で、さらに移転を余儀なくされます。
そこで当時の13代目当主は、酒造りの要である"良質な水を求め"、現在の蔵の所在地である「左京区吉田河原町」へ移ることを決めたのです。
この決断によって、後に松井酒造の酒は大変評判になり、相国寺、金閣寺を始めとした高名な寺社仏閣よりご用命をいただくようになりました。
しかし、間もなく日本は戦争の時代へと進みます。戦時中、蔵は解体、併合され、一時、社名は大和酒造と改名し、軍へ支給する酒を造り続けるという役目を負うこととなったのです。

しかし「良質な水」を求めて移転を決意した13代目の意思をさらに覆すかのような時代の波に翻弄されます。
それは1970年代、"近隣で進められた地下鉄(京阪電車)延伸工事の影響"です。
酒造りの要ともいえる井戸水に深刻な状態が生まれました。
この出来事を現当主の松井社長はこう語ります。

「『水が出なくなるかもしれない。出たとしても水質が変わるかもしれません』という話もありました。あと、ちょうど日本酒市場が芳しくない時期でもあったので、私の親父の代で一旦この地でのお酒造りは閉じているんです。その後は洛中には戻れず、伏見に移ってお酒造りを続けていた期間が40年ぐらい長く続いていました。」

原点ともいえる地で酒造りはできず、長い長い空白のような時間が流れます。
しかし、14代目の決断により、2009年に現在の地で、再び本格的な酒造りを復活させることになります。
これは運命か必然か。
実はこの「40年」こそが、今の松井酒造を全国の蔵でも唯一無二の存在へと押し上げる大きな原動力となります。

2022年、松井酒造はショップやテイスティングスペースが一新され、落ち着いて試飲や酒選びを楽しめる空間に生まれ変わり、また設備の強化により、代表的な銘柄をよりベストな状態でいつでも提供できるようにもなりました。
また外観やエントランスも刷新され、京町家の風情とモダンな要素を融合させた佇まいが、京都の街並みに自然に溶け込んでおり、古きよきものと現在進行形のみずみずしい感性が漂っています。

この松井酒造の2022年のリニューアルは、伝統と革新を両立させながら、日本人のDNAに長く刻まれた文化を次世代へつなぐための素晴らしい一歩でもあります!

300年前に元の蔵があった地で、現代に生まれ変わった松井酒造ですが、復活までには随分と課題が山積していました。

【都市にある酒造の水問題】

最大の課題はやはり「水」。1970年代に路面電車や地下鉄工事の影響で酒造りを断念し、当時蔵のあった場所は休造期間中にマンションに建て替わってもいます。そこの1階で良質な水を確保したい。
「昔は15メートルくらいの浅井戸だったんですが、それだと地下工事の影響を受けるんです」と松井社長。

そこで10メートルごとに水質分析を行い、ようやく最も酒造りに適した地点を探し当てたのです。現在使っている水は、"地下50メートルから汲み上げた"水で、硬度は平均すると35、ミネラル分の含有量が大変少ない「超軟水」です。

松井酒造さんの公式サイトによると、実は京都の地下には、琵琶湖に匹敵する水量が蓄えられていると言われているそうです。
比叡山に降った雨が長い年月を経てろ過された結果、不純物が取り除かれた清らかな水。
40年間、同蔵が翻弄されてきた水問題ですが"伏見の水にも近い良質な地下水"にたどり着いたのです。

【安定した酒造りには電力問題の難問が...】

水の問題はクリアしたものの、次に生じたのは、安定した日本酒を醸し、なおかつ保存するための「電力」。
松井酒造の敷地はわずか40坪ながら、発酵タンクは5基あり、すべて温度管理可能なサーマルタンクです。つまり「完全な四季醸造」となり、蔵内も貯蔵タンクも常に厳密な温度管理が求められます。当然ながら、"電力消費は膨大"になります。
松井社長曰く、
「このスペースで、中堅酒造会社レベルの電力を使ってしまうんです」とのこと。

そこで"導入したのが太陽光発電"でした。現在、製造に使う電力のおよそ60%を、太陽光でまかなっているとのこと。

「あと少しでも、環境への負荷を減らせたらと考えています」

ちなみに同蔵の酒のボトルに記されている「美酒如日輪(びしゅ にちりんのごとし)」という言葉。 これは「太陽のように美味しい酒」という意味であると同時に、この太陽光発電の思想を重ねた言葉でもあるそうです。

【外国人を惹きつける酒と環境】

松井酒造のもう一つの特徴が、"公用語を英語にしている"こと。
製造チームは5名(※2026年公式サイト記載)。実は日本人スタッフに加え、アメリカ出身のジョージ・ナバレテさんが加わっています。

「ジョージは今、日本語を勉強中なので、製造の際のコミュニケーションは英語が多いですね」
さらに驚かされるのは、ジョージさんの経歴。
ジョージさんは、かつてニューヨーク・ウォール街の金融機関で長く勤務していた人物。数字とスピードが価値観の世界でキャリアを積み、いわば“最前線のビジネスの現場”に身を置いていました。
そんな彼が日本酒と出会ったのは、仕事の合間に訪れた日本での体験がきっかけとのこと。
ワインとはまったく異なる造り方、米と水と微生物が織りなす複雑な発酵、そして何より、酒の背景にある文化と物語。

「日本酒は、ただのアルコールじゃない。文化そのものだ!」

そう感じたことをきっかけに金融の世界から離れ、日本酒を本気で学ぶために来日。そしてたどり着いた先の一つが、京都・松井酒造でした。

蔵の中では英語は特別な言語ではなく、必要だから自然に使われている、そんな空気感です。
「ジョージにも、英語で酒蔵の案内をしてもらえるので、すごく助かっています」
英語での蔵見学ができるという情報を見て、足を運ぶ外国人も少なくなく、蔵併設のテイスティングルーム「酒中仙」を訪れるお客様の約7割は外国人だそう。

【自分のペースで楽しめる、テイスティングルーム】

松井酒造 京都 酒蔵 日本酒 神蔵 kagura テイスティングルーム 酒中仙
テイスティングルーム「酒中仙」
※蔵元提供画像


松井酒造のテイスティングルームは、"「今日はどんなお酒を飲もうかな」と考えながら、ご自身のタイミングで日本酒を楽しめる場所"です。
まずは専用カードにチャージをして、日本酒サーバーから好みの銘柄と量を選べる仕組み。 神蔵や京千歳など、松井酒造の定番酒が並び、少しずつ飲み比べることができます。

松井酒造 京都 酒蔵 日本酒 神蔵 kagura テイスティングルーム 酒中仙 日本酒サーバー
日本酒サーバー
※蔵元提供画像


香りがふわっと立ち上がり、日本酒の表情がより分かりやすくなるので、ワイングラスで味わっていただきます。

「日本酒は詳しくないけれど、ちょっと試してみたい」
そんな方にも、気軽に楽しんでもらえる空間になっています。

またカウンター席のそばには、蔵の中の様子を映すモニターがあり、仕込みの様子を眺めながら味わう一杯は、まさしく体験型。

他に、リニューアルで加わった「電子窓」も都市型の蔵ならではのアイデア。電子窓には川の流れる音や自然の風景が映し出され、15分ほどで屋久島など、さまざまな景色へと切り替わっていきます。
「壁だけでは少し味気ないから」という蔵元の発想から生まれたしかけです。

"静かで落ち着いていて、それでいて少し新しい”。松井酒造らしい感性が息づくテイスティングルームと言えるでしょう。

さらにお土産づくりにも一工夫。
"酒造りのストーリーを英語で解説したTシャツ"などがあり、“軽くて割れないお土産”として人気です。
松井社長いわく、
「ワイン文化に慣れている方は、『お酒は文化』という感覚で、すごく興味を持ってくれますね」とうれしそうに語ります。

お酒造りにまつわる設備、サービスも時代に合わせた柔軟性に加えて、経営スタイルも実に現代的で、"勤務時間は9時から18時。"繁忙期を除けば、無理な長時間労働はありません。
これについて松井社長は、 「伝統に甘えてはいけない、と思っています。守るべきものと、変えるべきものは別です」と語ります。

伝統にあぐらをかいて権威ぶってはいけない。本当に敬意を持つならば、守るべきものと変革するべきものをしっかりと見極め、未来につなげていく。
これが令和の時代を突き進む「松井酒造」の現在形だといえるでしょう。

15代「松井治右衛門」を支える道高杜氏の教え。

松井酒造 十五代蔵元 松井治右衛門
※松井酒造 十五代蔵元 松井治右衛門
画像引用元:松井酒造HP

様々な改革を成し遂げてきた"現十五代目当主・松井治右衛門(まついじえもん)"さんですが、いわゆる「酒蔵の跡取り」として育ったわけではありません。
むしろ本人いわく、酒造りとは距離のある学生時代を過ごしていました。

「生まれた時点で、ここではもうお酒を造っていなかったんです。だから、日本酒のことも全然わからなかったですね」

大学は法学部へ進学し、東京で大学院生活を送る日々。周囲の友人たちは法曹の道を目指し、自身もその延長線上に将来を描いていました。
そんな折、父からの一本の電話が、人生の向きを大きく変えます。

「親父から『松井酒造を復活させるから、帰ってこい』って言われたんです」
当然、迷いはありました。今まで学んできた法曹の道を捨てることへの未練がなかったわけではありません。
けれど、父からかけられた一言が、心に残ったそうです。

「弁護士になれる人間は他にもいるけど、松井酒造の酒はお前にしか造れない」
加えて、知らないうちに実家では設備投資が進んでいたといいます。

「もう帰らない、という選択肢はなかったですね。どんどんお金が使われていくので(笑)」

決意を固めた松井社長は2008年、東京を離れ、京都へ。
「大学生の頃は、日本酒と焼酎の区別もついていなくて...」と松井社長は恥ずかしそうに語ります。

酒造り未経験の状態から、松井酒造の復活のプロローグは始まりました。
ゼロから学ぶために、まず向かったのは、伏見の老舗・黄桜。大学のOBという縁から、手造り酒を行う「三栖蔵」で修行する機会を得ます。

酒造りは基本的には分業制です。限られた工程しか経験できない中で、松井社長は空いた時間を見つけては、別の作業を見せてもらうなど、酒造りの全体像を必死に吸収していきました。

「自分の酒を造れるようになるには、短期間で全部を知らないといけなかったんです」
そんな1年間の修行ののち、2009年、松井社長はいよいよ吉田に帰ります。

道高杜氏
※道高良造杜氏
画像引用元:松井酒造HP

吉田の地で酒蔵を復活させる――。
そのタイミングで師として迎えたのが、能登杜氏の重鎮・道高良造(みちたかりょうぞう)氏。
当時すでに80歳を超えていた大ベテランの杜氏です。

「道高さんには、蔵の始まりから泊まり込みで一緒にやっていただきました」と松井社長。
道高さんは40年以上の杜氏歴を持つ、まさに“職人中の職人”
ただし、その教え方は決して親切とは言えなかったといいます。

「本当に、なかなか教えてくれないんですよ」
細かな説明はなく、手取り足取りでもない。基本はひたすら「背中を見て覚えろ」というスタイルでした。
それでも松井社長は、 「でも、そのおかげで今の型になったと思っています」
特に道高杜氏が貫いていたのは、能登流の酒造りです。
そのキーワードは、「米の味わいをしっかり出す」こと。
当時は、淡麗辛口が主流になり、「米をあまり溶かさない」造りが増えるなかで、あえて真逆とも言える考え方を大切にしていました。

「どうせ、せっかくお米を使うなら、ちゃんと溶かして酒を造りたい」
という松井社長の思いが、能登流の酒造りと重なったのです。
そしてもう一つ、道高杜氏から松井社長の心に深く刻まれた教えがあったといいます。

「人間の都合に、酵母や麹を付き合わせるな」

酒造りの主役は、人ではなく微生物。人間の生活リズムに合わせるのではなく、 酵母や麹の声に耳を澄ませることが何より大切だという哲学でした。
実際、道高杜氏は夜中の2時、3時、4時でも一人で起きて作業をする人だったそうで、 ある朝、松井社長が「おはようございます」と部屋を訪ねると、すでに作業が終わっていた、ということもあったとのこと。

「これじゃ、いつまで経っても教われないなと思って」

そこで松井社長が取った行動は、実にシンプル。杜氏が寝泊まりしている部屋の前に寝袋を敷き、起きる気配があればすぐに分かるようにしたのです。

「当時の自分はもう、半べそかいてたと思います(笑)」
それでも、その時間があったからこそ、酒造りの根っこにある考え方が身体に染み込んでいったのでしょう。

「道高さんの指導を受けた」ということそのものが、今でも松井社長の“心の拠り所”だといいます。
教えを学んだ松井社長は、2012年から蔵元杜氏として独り立ちすることになり、2019年には代表取締役社長に就任します。
同時に、十五代目「松井治右衛門」を名乗る決意を固め、さらに改革を進めていきます。

伝統を重んじ次世代に響かせる!「神蔵KAGURA」のボトルと「カグラ様」

松井酒造 日本酒 神蔵KAGURA AR対応ボトル
※松井酒造 神蔵KAGURA AR対応ボトル
画像引用元:松井酒造オンラインショップ


松井酒造の代表銘柄「神蔵KAGURA(かぐら)」。
ボトル中央には、目が不自由な方でもすぐに認識できる"点字"で「サケ」の文字という配慮。
そして裏面には、スマートフォンをかざすと酒造りの様子が映し出されるARの仕掛けがあります。
「家にいながら、酒蔵見学をしたり、酒造を想像してもらえるといいなと思って」とのこと。

伝統的な日本酒の世界に、最先端の技術を無理なく取り入れる姿勢。それは話題づくりのためではなく、
"あくまで酒の背景や造り手の思いを、きちんと伝える"現当主としての責任と、先人たちの想いを伝えるため、たまたま現代的な技術や手法を活用したのだと言えるでしょう。

松井酒造 神蔵KAGURA ボトルデザイン
※松井酒造 神蔵KAGURA ボトルデザイン
画像引用元:松井酒造"X"


そういう意味では「神蔵KAGURA」のボトルは、単なる器ではありません。
松井酒造の歩みと、これからの日本酒の可能性が、デザインや技術といったものの力を借りて、そっと飲み手に寄り添う1本になったものではないでしょうか。 その存在感は、ボトルを手に取った瞬間から伝わってきます。
一見すると、洗練された和モダンなデザイン。
しかしその奥には、単に若者受けするというデザインではなく、松井酒造が自らの体験から大切にしてきた
「伝統を漫然とそのまま残すのではなく、今の時代にどう生かすか」という考え方が、静かに流れています。

神蔵の季節酒は、もともと冬のお酒からスタートしたそうで、 「最初に出したのは冬のお酒で、その時は"あの伊藤若冲さんの白い象"をラベルに使わせていただきました」と松井社長。

京都という土地、日本酒という文化、伊藤若冲という日本が世界に誇る日本画家、その全てに敬意を払った選択でした。
やがて、松井社長が、春夏秋のお酒も造りたいと考える中で出会ったのが、「日本画家・中島潔(なかしまきよし)氏」です。
以前から作品のファンだった松井社長。思い切ってラベルの使用をお願いしたといいます。

「たまたまご縁があって、お願いしたところ、快く引き受けてくださいました」
日本画を“飾り”として使うのではなく、酒と同じように深く味わってもらいたいという思いが、ラベル全体から伝わってきます。
◆中島潔さんのWebサイト

一方で、「神蔵KAGURA」のボトルデザインについて語るのに欠かせないのは、モチーフになっている「金継ぎ(きんつぎ)」。その理由を松井社長は、
「傷を隠すんじゃなくて、その傷も歴史の一部だと思ったんです」と。
300年という歳月、人と人とのリレー、災害、困難、克服...すべてがあって"今"につながっている...。
さらに松井社長は"瓶が割れる時の割れ方"までプロに尋ね、そのラインを意識して美しく煌びやか、上品にデザインされたボトルには、
“完全であること”よりも“積み重ねてきた時間”と”今”を大切にする気持ちが表れています。

松井酒造 カグラ様
※松井酒造 神蔵KAGURAキャラクター カグラ様
画像引用元:松井酒造"X"

 

松井酒造「神蔵(KAGURA)」には、その味わいと同じくらい大切に育てられてきたもうひとつの“物語”があります。
その象徴が、神蔵シリーズのキャラクター 「カグラ様」 です。

この取り組みの背景には、十五代目蔵元・松井社長自身の原体験があります。
世代的にいうと、「子どもの頃に出会ったゲームや物語の世界」です。友だちの家に集まり、テレビ画面の中の冒険を一緒に楽しんだ時間は、今も松井社長の中に大切な記憶として残っているそうです。
かつて「子どもの遊び」として見られていたゲームやアニメですが、ご存じの通り今では世代や国境を越えて人と人をつなぐ文化になり、日本のコンテンツのクオリティは世界を席巻しています。
蔵を訪れる海外のお客様の中には、「日本のアニメが好きで日本語を覚えた」という方も少なくないそう。

そんな幼少期からの経験から、松井社長は「ゲームやアニメは、日本が世界に誇れる文化」だと感じるようになり、創業300年を見据えたこれからの松井酒造の姿を考える中で、神蔵と日本のコンテンツ文化を結びつけてみようと考えます。

そこで、大ファンだったイラストレーター・米山舞さんに思い切って声をかけたところ、これも日本画家の中島さん同様にご縁がつながり、神蔵の女神として誕生したのが"カグラ様"です。
◆米山舞さんの公式Xアカウント

「神蔵に、こんな素敵な女神さまがついてくれたんだなと、うれしくなりました」と松井社長。

カグラ様は、もともと蔵の井戸に宿っていた女神さま。お酒好きが高じて、今では神蔵と松井酒造を見守る存在、という設定です。
さらにご縁は広がり、カグラ様に声が吹き込まれることになりました。
担当してくださったのは声優「相羽あいな」さん。
◆相羽あいなさんの紹介Webサイト

アニメ「BanG Dream!」の湊友希那役や「けものフレンズ」など、数々の人気作品に出演してきた実力派声優さんです。
相羽さんの声は、ARアプリ 「COCOAR」(ココアル) でカグラ様を読み取ることで聞くことができ、まるで女神が語りかけてくるような体験が楽しめます。
◆「COCOAR」(ココアル)のダウンロード

そんなカグラ様には姉妹がいて、三女にはリキュールの妖精「蜜葉(ミツハ)ちゃん」も登場します。

こうした世界観は、ラベルやショッパー、SNSなどを通して、少しずつ広がっています。

「日本酒」+「日本のアニメやゲーム」。
一見すると意外な組み合わせですが、先人が継いできた伝統と、日本の子供たちに愛され、子供たちが育ててきたカルチャー。

「大人の日常の中に、自然と日本酒がある風景をつくりたい」というのが松井社長の思い。
神蔵とカグラ様は、日本酒をもっと身近に、もっと自由に楽しむための、やさしい入り口と言えます♪

松井酒造新たな挑戦”循環型蒸留”日本酒にまつわるスピリッツをご紹介!

松井酒造 京都ラム 輪廻
※松井酒造 京都ラム 輪廻
画像引用元:松井酒造"X"
 

歴史ある日本酒蔵の松井酒造が、ラム酒といったスピリッツを造ろうと思ったきっかけ。それを、松井社長はこう説明してくれました。
「コロナ禍で、どうしても出荷のタイミングを逃してしまったお酒がいくつかあったんです。それを廃棄するのではなく、蒸留してもう一度命を吹き込みたいと思いました」

日本酒として世に出すことはできない。けれど、手間も時間もかけて造った酒を、ただ終わらせてしまうことはしたくなかった。そんな気持ちから、蔵に小さな蒸留機を導入します。 「捨てない酒造り」への第一歩でした。

清酒そのものだけでなく、副産物として生まれる酒粕も再発酵・蒸留し、新たな酒へと生まれ変わらせていく。松井酒造が目指したのは、無駄を出さず、"酒を最後まで使い切る循環型のものづくり"です。
まず始めたのが柚子のリキュール。そこから、種類を増やしていきたいという想いもあり、北海道の牧場さんとのご縁もあって、ヨーグルトのリキュールも造り始めました。
この流れの中で、松井社長には、さらに新しい想いが生まれました。

「"京都らしい"スピリッツを造れないだろうか」。
そうして辿り着いたのが、ラム酒です。
しかしラム酒の原料はサトウキビ。日本酒とはまったく異なる酒ですが、松井社長は、
「京都で造る意味」を大切にしたいと考え、着目したのが、京菓子に欠かせない「和三盆」です。

和三盆は、日本独自の砂糖で、竹糖から作られます。その製造過程で生まれる糖蜜をラムの原料として使うことで、京都ならではのラムができるのではないか——そんな発想でした。
和三盆の糖蜜に、日本酒造りで培った発酵技術を掛け合わせる。
そしてじっくりと発酵させることで、やさしく透明感のある味わいを目指しました。
こうして生まれた松井酒造のクラフテッドラムは、上品で無垢な透明色。
蜂蜜を思わせる穏やかな香りが立ち、口当たりはなめらか。甘さは主張しすぎず、すっとキレよく消えていきます。

「正解のラムかどうかは、正直わかりません」と松井社長は言います。

それでも、日本酒蔵として積み重ねてきた時間と思想、そして“捨てない”という選択が、この一本には詰まっています。 熱帯の酒であるラムが、"京都の空気をまとったラム"へ。
ここにも松井酒造の伝統と革新の精神が表現されています。

 

【松井酒造】

06-8305
京都府京都市左京区吉田河原町1-6
TEL:075-771-0246
HP:https://matsuishuzo.com/
オンラインストア:https://matsuishuzo.com/?mode=f3

松井酒造の日本酒とペアリングをご紹介♪

純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ)

松井酒造 日本酒 神蔵kagura 純米 ルリ
※松井酒造 神蔵KAGURA 純米 無濾過 無加水 ルリ
画像引用元:松井酒造"X"

松井酒造の信念がそのまま反映されたかのような一本。
精米歩合65%という数字だけで想像できる味わいではなく、低温でじっくり丁寧に醪(もろみ)を育てる造りによって米の旨みをしっかりと引き出すとのこと。

特徴は、無濾過・無加水・生酒というフレッシュさ。
ろ過も加水もしないことで、酵母の躍動感や米本来の香りがダイレクトに伝わり、活き活きとした果実香と豊かな旨みが感じられます。

酒米は「祝(いわい)」という"京都ならではの品種"で、もろみに溶けやすいため、時々によって味わいが変化する表情豊かさもこの酒の魅力だそうです。
また仕込みのタイミングや季節によって、香りやふくよかな旨みが柔らかく立ち上がります。
飲み口はしっかりとしていながらも軽やかで、後味に米の余韻がほどよく残るバランスの良さ。冷やして楽しむのはもちろん、常温でも米の旨みと香りが穏やかに広がっていきます。


■純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ) スペック■

原材料 米(国産)・米麹(国産米)
原料米 祝(京都府産)
精米歩合 65%
酵母 松井オリジナル
アルコール度 15度-17度

「純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ)」におすすめのペアリング

松井酒造 日本酒 神蔵KAGURA 純米 ルリ おつまみ ペアリング 料理 ハンズオンsake オンライン酒蔵留学
※純米 神蔵KAGURA 無濾過・無加水・生酒(ルリ)に合うペアリング


フレッシュさの中にほどよい酸と旨みを感じる一本。その個性を素直に楽しめるペアリングとして、松井社長が挙げたのが、少し意外性のある料理たちでした。
まずは「秋茄子とツナのトマト煮」。
神蔵(ルリ)に感じられるやわらかな酸味が、トマトの酸ときれいに重なり、後味を軽やかにしてくれます。重すぎず、つい杯が進む組み合わせです。

続いて「サンマのコンフィ」です。
低温でじっくり火を入れることで、サンマの旨みとワタのほのかな苦味が引き立ちます。新酒ならではの若々しさや、神蔵(ルリ)に感じるわずかな苦味と呼応し、秋らしい余韻を楽しめます。

そしてデザート感覚で合わせたいのが「桃のモッツァレラ」。
神蔵(ルリ)のフルーティーな香りが、果実の甘みと自然につながります。

さらに手軽なおつまみなら、蔵のテイスティングルームでも提供されている「えいひれ」もおすすめ!
しっとりとした口当たりが、生酒のやさしい旨みを引き立ててくれます。

"気負わず楽しむ"――
それが神蔵(ルリ)らしいペアリングかもしれません。

富士千歳 純米にごり酒

松井酒造 日本酒 富士千歳 純米にごり酒
※松井酒造 富士千歳 純米にごり酒
画像引用元:松井酒造オンラインショップ

モダンな印象の「神蔵(かぐら)」に対して、どこか懐かしさを感じさせるクラシックな一本。酒米には五百万石を使用し、"昔からの製法を大きく変えずに造り続けられてきた純米酒"です。

白く濁った見た目どおり、米の旨みをしっかり感じられるやさしい味わいが特徴。
まろやかさがありながら、重たさはなく、穏やかなのど越し。
冬場には生にごりが登場することもありますが、現在は火入れタイプが中心とのことで、安定した味わいを楽しめます。

またこの「富士千歳」は、「節分祭発祥の地」とされる京都・吉田神社の御神酒としても知られており、蔵のある左京区吉田河原町は、その吉田神社の名を受け継ぐ土地で、地域と深く結びついたお酒でもあるのです。
毎年2月2日・3日に行われる節分祭は、吉田山一帯に屋台が立ち並び、京都の老舗も数多く参加する賑やかなお祭り。
松井社長も「機会があれば、ぜひ一度足を運んでほしいですね」と語ります。
無病息災を願う節分の一杯として、また日常に寄り添うお酒として、松井酒造の“変わらない味”を現代に伝える1本です。

■富士千歳 純米にごり酒 スペック■

原材料 米(国産)・米麹(国産米)
原料米 五百万国
精米歩合 70%
酵母 松井オリジナル
アルコール度 14度

「富士千歳 純米にごり酒」におすすめのペアリング

松井酒造 日本酒 富士千歳 純米にごり酒 おつまみ ペアリング 料理 ハンズオンsake オンライン酒蔵留学
※富士千歳 純米にごり酒に合うペアリング

 

「富士千歳 純米にごり酒」は、にごり酒ならではの米の成分がたっぷり残ったお酒です。

まず、松井社長が挙げてくれた料理は「フグの白子の白焼き」。
白子の濃厚でまったりとした旨みを、にごり酒のやさしい甘みと丸みが包み込み、口の中で一体感のある味わいを生み出します。白子の“白”と、にごり酒の“白”という見た目の相性も美しく、冬らしい組み合わせ。
なかなかご自宅では味わえないペアリングではありますが、濃厚でクリーミーな料理を包み込んでくれるのがこの酒の魅力の1つ。

そしてもう一つが「イチジクの生ハム巻き」。
イチジクの持つ独特の甘みとコクに、生ハムの塩気が加わることで、にごり酒の穏やかな甘口がより引き立ちます。フルーツの個性を受け止めつつ、後味をきれいにまとめてくれるのです。
「甘味と塩気」という2つの味を同時に引き受けつつ、しっかりと酒の味と旨味を感じる。

紹介したようなちょっと特別な食材はもちろん、日常の食卓でも、意外な相性の良さを楽しませてくれる一本となっています。

松井酒造Q&A

今回の留学中に挙がった松井社長への質問を一部ご紹介します。

松井オリジナル酵母の由来と特徴を教えてください。
まず、オリジナル酵母だけを使っている、というわけではないです。協会酵母を使うこともありますし、京都府が開発している「京の琴(きょうのこと)」という酵母を使うこともあります。
何でかというと、"お酒ごとに、その都度、合う酵母を選んでいる"というのが実際のところなんです。
ただ、蔵を復活させてから13年ほど経つ中で、「これは良いな」と思えるもろみが、いくつか出てきました。
「あ、この感じは好きだな」と、後から振り返って思えるような仕上がりです。
そういうもろみの味わいや香りを、できるだけ毎年再現できるようにしたいと思っています。
なので、良かったもろみの酵母を取り出して培養して、次の酒造りに使うようになったのが、いわゆる"松井酒造のオリジナル酵母"なんです。
今回の神蔵(ルリ)は長期低温発酵であれば特別純米のスペックになると思うんですが、敢えて純米にしている理由は何ですか?
確かに造りだけを見ると「特別純米」と言えてしまうお酒だと思いますが、あえてそう名乗っていません。
僕はずっと、「特別純米の“特別”って何なんだろう」と引っかかっていまして、精米歩合なのか、造りなのか、役所などに聞いてもはっきりした答えはありませんでした。
一応、多くの場合、吟醸クラスまで磨いた純米酒を「特別純米」と呼びますけれど、でもそれって、飲み手からすると分かりにくいと思うんです。
だからシンプルに「純米酒」としています。説明するより、味で感じてもらえたら、それで十分かな、と思っています。
マンションの1階と限られたスペースで作業する上でメリット・デメリットはありますか?
メリットとしては、微生物を扱う仕事なので、やはり衛生管理と温度管理が品質に直結します。掃除がしやすい環境というのは、古い酒蔵と比べてもかなり助かっていますね。
デメリットとしては、「マンションの1階で造っているお酒なんて美味しいわけないだろう...」と思われてしまうことですかね(笑)

オンライン酒蔵留学に参加するには?

 

「もっと酒蔵さんの想いを知りたい!」「オンライン酒蔵留学に興味がある!」という方は、下記よりご参加ください!
毎月異なる酒蔵さんとダイレクトにお話が出来る貴重な場となりますので、推せる蔵が見つかるかもしれませんよ♪
是非皆さんのご参加お待ちしております!

オンライン酒蔵留学に参加する

オンライン酒蔵留学の流れ

①事前にお酒が届く!
・オンライン酒蔵留学をお申し込み後、ご自宅にお酒をお届け。

②オンライン酒蔵留学に参加!
・つくり手さんと乾杯!(ZOOMまたはYouTube LIVE)
・前後半に分けて皆さんと交流しながら推し蔵ポイントを探る。

③全国に飲み友達が出来る!
・オンラインで全国の日本酒ファンと情報交換し、飲み友達が出来る。

過去のオンライン酒蔵留学の様子をまとめたレポートは記事はこちらからご覧いただけますので、是非参考にしてみてください!
↓ ↓ ↓

つくり手さんと「つながる」
つくり手さんの想いを「のぞく」
自分たちの世界観を「ひろげる」

次回もハンズオンポーズで乾杯!

※過去のレポート記事はこちらから!!

友だち追加
この記事を書いた人


アイコン
とも 日本酒ライター ラジオ番組制作者を経て、Web・EC事業に長らく携わっています。
趣味:立ち飲み、ロックバー巡り、ジム、料理、映画
アイコン
じゅん 日本酒ライター ものづくりに携わっている傍ら日本酒ライターをしています。
日本酒の美味しさに目覚め、すっかり虜になりました。
是非、日本酒の文化を広めていきたいです♪

趣味:ガラス細工、旅行、フットサル
FOLLOW ME
ブログに戻る

コメントを残す