オンライン酒蔵留学レポート
オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」、そして「推し蔵」が生まれる場となります。
本記事では、これまでオンライン酒蔵留学にご出演していただいた酒蔵さんをご紹介!
この記事を通して、酒蔵さんの想いやこだわりについて是非触れてみてください♪
今回は、第28回オンライン酒蔵留学にご出演いただいた溝上酒造(福岡県)をご紹介いたします♪
溝上酒造(みぞかみしゅぞう)について

北九州の”日本酒の防人(さきもり)”とも言える存在。それが溝上酒造です。
弘化元年(1844年)に大分・中津の地で創業。
天空に舞う鶴を吉兆とし、「鶴天心」を銘柄としていました。
のちに1931年(昭和6年)に北九州市・皿倉山麓で清らかな湧き水を発見して蔵を移転。以降、銘柄を「天心」と改め現在に至り、北九州では唯一に近い規模の日本酒蔵として醸造を続けています。
豊かな自然環境に囲まれ、北九州市民にとっては「地元の酒」として長年親しまれてきた溝上酒造が大切にしているのは、派手な技術でも流行の香りでもありません。
彼らが代々受け継いできた理念―― 「基本に忠実に、誠実な心で酒造りに向き合う」 という、極めてシンプルでありながら一番難しい姿勢です。
蔵の規模自体は大手と比べれば決して大きくはありません。
しかしその分、ひとつひとつの工程にしっかり目が行き届き、丁寧な手造りをしていることが一番の特徴です。
蔵元の溝上家が代々受け継いできた「誠実な酒造り」という姿勢は、地域から強い支持を受けています。
「日本酒の味を決めるのは、最後は“人”である。」
現在、8代目蔵元を務める「溝上智彦」社長は語ります。
どれほど良質な米を選び、名水を求め、最適な環境を整えたとしても、最終的に一杯の味わいを形づくるのは造り手の判断と感性。
それは洗米から蒸米、麹づくり、発酵管理のどれを取っても妥協しない姿勢として現れています。
「地元愛、職人技、歴史」。
この三つが調和した蔵であり、北九州の酒文化の象徴的存在ともいえるでしょう。

代表銘柄は「天心」(てんしん)。
控えめな香りと食事に寄り添う味わいを中心に、日常酒から贈答向けまで幅広いラインナップを展開しています。
ラベル色の違いで「赤天心・黒天心」などの通称で呼ばれるファンもいるようです。
この「天心」の文字は、宝酒造の本格焼酎「よかいち」の文字を書いたことで知られる、かの有名な書道家「榊莫山(さかきばぐざん)」氏によるもの。
溝上酒造が意図して莫山氏に依頼したものではなく、たまたまお願いした印刷会社に無名だった頃の莫山氏が在籍しており、筆を執ったとのことです。
これもまた不思議な縁が呼び寄せた幸運。
天心のラベルの背景にある”幸運の連鎖”もまた天心の魅力を支えていると言えるでしょう。
また、この蔵が特に重視しているのは“食中酒”としてのバランス。
香りが華やかな酒が増えてきた現代においても、溝上酒造は「食事とともにあって完成する味わい」を何よりも大切にしています。
その誠実さが生み出す味わいは、決して主張しすぎず、しかし確かな旨味と透明感を備えています。
そして目指すゴールはただひとつ。
“食事とともにあってこそ輝く、究極の食中酒”
”米と水と技術、そのすべてを丁寧に積み重ねながら、最後に「造り手の心」が味を完成させる――。
溝上酒造の一杯には、その哲学が静かに息づいています。
豊かな水資源を求め北九州へ。皿倉山の麓で行われる「寒造り」

溝上酒造の酒には、皿倉山の水が導いた“奇跡の物語”が流れています。
前述のとおり、溝上酒造の歴史は大分・中津の地で始まりますが、のちに大きな転機が訪れます。
1901年、北九州市に八幡製鉄所が設立されると同時に溝上酒造もその近辺に支店を構えることに。
日本酒需要の多かった時代、中津から北九州まで馬車を利用しながら時間をかけて酒を運んでいました。
しかし、運搬事情がままならない状況となった当主は北九州市への移転を計画。
そこで、皿倉山麓を訪れたの際に清らかに湧き出る水へ惹かれるように足を止めたといいます。
この水こそが、現在の「天心」の味わいを形づくる大切な源泉でした。
酒造りにもっとも重要な要素である“水”との出会いは、当主にとってまさに運命的。
“この水で酒を造りたい”という一大決心をし、蔵そのものを現在の場所に移築をしたと伝えられています。
さらに周囲は冬に冷気がたまりやすい地形で、”寒造り”に適した環境でもありました。
寒造りとは、12月から2月頃の寒い冬場に日本酒を造る方法のこと。
気温が低く雑菌が繁殖しにくいため、発酵をゆっくりと管理しやすいという利点があり、品質の高い酒が造られます。
以降、溝上酒造は皿倉山麓と共に歩み、地元で愛される酒蔵へと成長していきます。
地域の発展とともに姿を変えながらも、蔵の根底には「水との出会いが運んできた酒造り」が息づいています。
心強いパートナーとの米作り

溝上酒造が何より大切にしているのは、「どんな米を使うか」よりも“誰がその米を作っているか”という点です。
蔵元はこう語ります。
「うちが扱う米のほとんどは北九州市内産なんですが、何よりのこだわりは農家さんそのものなんです。真面目に、きちんと、誠実に米づくりをしてくれる方にお願いしたい。それが一番ありがたいですね。」
現在、同蔵で主に使用しているのは「山田錦」「夢一献」「吟のさと」の3種類。
山田錦と夢一献は長年信頼を寄せる同じ農家が栽培し、吟のさとは別の農家から仕入れています。
蔵元は、その理由をこう続けます。
「お酒って、結局は人の口に入るものですよね。だからこそ、しっかりした人の手で育てられた原料じゃないと、本当に良い酒にはならない。ものづくりって全部そうだと思うんです。」
米の品質だけを追うのではなく、“誰がその米を作っているのか”という人への信頼こそが、溝上酒造の酒の味を支える柱になっているのです。
「天心」唯一無二の味わい。麹造りと酵母の混合培

麹造り
“天心らしさ”とは何か?”を 一言で表すなら、穏やかさと輪郭の美しさが共存する、唯一無二のバランスです。
派手な香りでインパクトを出すわけでもなく、厚みだけを追う酒でもありません。
一見控えめでありながら、口に含むと旨味が静かに立ち上がり、後味は驚くほど澄んでキレが良い。
食事をそっと引き立てる「食中酒」の理想形のような味わいが、天心の最大の魅力!
そのカギを握る一つが麹造り。
麹は、日本酒の味わいを決める“心臓部”といえる存在であり、蔵元はその重要性をこう語ります。
「麹は味を決める場所なんです。発酵の状態も左右します。香りは酵母が大きく担っていますが、味を作るのは麹。
酵母を変えるだけで酒質は簡単に変わりますが、それをしっかり扱えなければいい酒にはならないんです。」
麹づくりでは、米の吸水率、温度、湿度、蒸し時間、菌の種類——すべてに細かい職人の判断が必要になります。
種麹には様々な種類があり、選ぶものによって酒の風味は微妙に変化します。
「水分の吸わせ方ひとつ、時間の違いひとつで、まったく違う酒になります。」
蔵元は、全国の酒蔵で同じ米・同じ酵母・同じ精米歩合を使っても、同じ味には絶対にならない理由をこう説明します。
「たとえば福岡の夢一献を60%まで磨いて、9号酵母で仕込むとします。米も酵母も同じ、精米歩合も同じ。それでも、出来上がった酒は蔵によって全然違う。
原因は“麹を自社で作っているから”なんです。」
麹は日本酒における唯一の“蔵元自作の原料”。
水も米も同じ条件をそろえれば似たものになりますが、麹だけは蔵の個性と職人の技が如実に反映される唯一の要素です。
「うちのマニュアルを他の蔵でそのまま再現しても、同じ酒にはなりません。
料理本どおりに作っても、プロと同じ味にはならないのと同じです。ちょっとした火加減、少しの時間差、その“わずかな違い”が味を大きく左右します。」
だからこそ、麹づくりは酒蔵にとって最も繊細で、最も技術やセンスが問われる工程。
そしてその積み重ねが、「天心」にだけ宿る唯一無二の味わいを支えているのです。
酵母の混合培養
「天心」の中には、「天心 純米酒」のように単一酵母ではなく、酵母を混合培養して仕込まれる商品も存在します。
蔵元は「酵母同士に"歩調を合わせてもらう"」と語ります。
一体どういうことなんでしょうか。
ご存じのように、酵母はアルコールと香りの成分を生み出す微生物です。
日本酒づくりでは「協会酵母」と呼ばれる種類がよく使われ、原則、発見された順番の数字で「◯号」と表現されます。
酵母には、発酵中に泡をたくさん出す泡あり酵母と、号数の後ろに「○○01」と番号が付く泡なし酵母があります。
泡あり酵母は発酵の様子を泡の状態で読み取りやすい一方、泡が多いほど掃除が大変になり仕込み量も制限されまることから、近年では管理しやすく効率の良い「泡なし酵母」が多くの蔵で採用されているとのこと。
「天心 純米酒」は、1801号酵母と1401号酵母の2種類を混合培養し、両者の特性を巧みに生かしています。
「カプロン酸エチル系の1801号と、酢酸イソアミル系の1401号。この2つを酒母にバランスよく入れています。」と、蔵元。
1801号はリンゴやメロンのような華やかな果実の香りを生む酵母で、味に軽やかさと明るい表情を与えます。
一方の1401号は、発酵を安定させつつ落ち着いた香りを出すタイプです。
この2つは発酵力がほぼ同じため、どちらかが主張しすぎることなく、均整のとれた発酵が進みます。
蔵元はこの併用の理由をこう明かします。
「9号や7号のような強発酵タイプを混ぜると、そちらが勝ってしまうんです。しかし18号と14号なら、同じ歩調で発酵してくれるんです。」
この“歩調の一致”こそが、天心の味わいに表れていると言えます。
天心 純米酒の「飲みやすく、味わいがある」という個性は、微生物の世界で起きている小さな変化がもたらしたものなのです。
突然の蔵元就任。地酒蔵の使命を託された「溝上智彦」社長

現蔵元は、もともと酒造りとはまったく縁のない人生を歩んでいました。
けれど、その“まっさらな出発点”こそが、後に唯一無二の酒「天心」を生み出す原動力になっていきます。
「正直、酒蔵を継ぐなんて考えてもいませんでした。というより、そういう可能性が自分にはないと思っていました」と蔵元は笑います。
当時、父は酒の卸業を営んでおり、造り手の世界とは別の仕事に携わっていました。
一方、溝上酒造は祖父が社長を務め、父の弟が専務として会社を支えていたそうです。
ところが、ある時その叔父が蔵を辞めることになり、「誰か来てほしい」という声に背中を押されるように、平成7年、蔵元は溝上酒造に入ることになります。
「正直、酒造りの知識はゼロでした。経営のこともまったく分からなくて、最初は“何から手をつけていいのか”という状態でした。」
入社した当時、蔵では杜氏も次々に辞めてしまい、まさに空っぽの状態。
急遽、兵庫・丹波からベテラン杜氏を呼びましたが、すでに70代で、翌年には体力の限界を迎え、もう来られないと言われてしまいます。
「誰もいないなら、自分がやるしかない、、、」
そんな思いで、蔵元は杜氏を引き受けました。
もちろん、酒造りの経験はありません。
最初の頃はまさに「教科書を片手に酒を造る」ような日々。
「ちゃんと発酵してアルコールが出てくれたら、それだけでホッとする、そんなレベル。最初の数年は、酒を“美味しくする”よりも、“ちゃんと酒になること”が何よりの目標でした。」
転機が訪れたのは、杜氏になって3年ほど経った頃です。
県の酒造組合で開かれた会合に初めて参加し、各蔵が酒を持ち寄る場に自作の大吟醸を出したときのこと。
「同じ山田錦を使って、同じくらいの精米歩合なのに、他の杜氏さんたちの酒と比べてまるで別物でした。ショックでした。」
そのとき感じたのは、深い悔しさと、純粋な疑問でした。
「なぜ同じ条件なのに、こんなにも味が違うのか」。
そこから、「もっと美味しい酒を造りたい」という強い気持ちが生まれたといいます。
それが、蔵元にとって酒造りへの“目覚め”の瞬間でした。
それからというもの、蔵元は独学で酒造りを学び続けました。
「私は醸造学を専攻したわけでも、修行で他の蔵に入ったわけでもありません。わからないことがあれば試験場や先生方に聞くくらい。完全に自己流でした。」
ただ、その自己流こそが、溝上酒造の酒に新しい風を吹き込みます。
理屈や数字だけではなく感覚を信じ、香りや温度の“気配”を頼りに仕込む。
少しずつ、自分の理想の味を見つけていったのです。
「やっと“人に喜んでもらえる酒”が造れるようになってきたと感じたのは、ずっと後になってからでした。」
「素人」から始まった蔵元の酒造りは、むしろ常識やセオリーに縛られないからこそ見える景色があったのです。
「教科書の正解より、自分の舌を信じてきました。だからこそ、毎年チャレンジを続けられる。酒造りって、少し変えるだけでガラッと味が変わるんですよ。そこが面白いんです。」
蔵元は今も試行錯誤を重ねながら、酒の味を磨き続けています。
それは、“初心を忘れない杜氏”としての誇りでもあります。
しかし一方で、日本の酒造蔵やメーカー、我々日本酒愛好家にとって、決して明るいとは言えない現実があります。
日本酒人口の減少、若い世代のアルコール離れ。
それでも蔵元の声には、どこか前を向く力がありました。
「正直に言えば、日本酒業界は今も厳しい状況が続いています。それでもやっぱり、日本酒を残していきたいという気持ちは強いです。」
そんな蔵元が今、目指しているのは「四季醸造」という新たな挑戦。
一般的に日本酒造りは冬の寒い時期に集中して行われますが、溝上酒造では、年間を通して酒を仕込む“通年醸造”の体制づくりに力を注いでいます。
「冬だけの酒造りって、実はとても非効率なんです。例えば搾り機なんて1年で30回ほどしか使わない。それなのに高価な設備を維持しなければならない。」
この現実に向き合い、蔵元は「どうすれば、もっと持続的な蔵になるか」を真剣に考え続けています。
それが、”四季を通じて造る蔵”というビジョンにつながりました。
しかし、課題は設備だけではありません。
「やっぱり一番の問題は“人”ですね」と、蔵元は続けます。
日本酒造りの現場は、冬の仕込み時期に人手が集中し、夏には仕事が減るという極端な季節労働の構造があります。
結果として、毎年人員の確保に苦労し、安定した酒造りの体制を維持するのが難しいということになります。
「季節ごとに人が入れ替わるような働き方では、技術も心も続かない。だからこそ、通年で仕込みができる蔵にして、正社員だけで酒を造る体制をつくりたいんです。そうすれば、一年中安定して酒を造れるし、働く人にとっても安心できる環境になります。」
この挑戦は、単に効率化を目指すものではないでしょう。
蔵元が見つめているのは、“日本酒を未来へ残すための形”です。
「お客さんに、いつでも“絞りたての新酒”を届けたい。季節を問わず、いつでも新鮮な『天心』を味わってもらえたら、きっと日本酒の楽しみ方も広がると思うんです。」
北九州の地に根を張る溝上酒造。
その一歩一歩は、静かに、しかし確実にこれからの日本酒を支えていきます。
【溝上酒造】
〒805-0047
福岡県北九州市八幡東区景勝町1-10
TEL:093-652-0289
FAX:093-652-3936
HP:https://sake-tenshin.co.jp/
溝上酒造の日本酒「天心」を飲み比べ♪

今回、溝上酒造さんにご用意してもらったのは「天心 純米酒」と「天心 音~OTO~ 純米酒」の2種類!
こちらの2本は、使用している酒米と精米歩合が同じで、酵母のみが違います。
酵母一つでどれだけ酒質に変化があるのか?
留学生の皆さんと共に飲み比べをし、その違いを体験しましたのでそれぞれご紹介していきます!!
天心 純米酒

「天心 純米酒」は、北九州市・八幡で収穫された酒米「夢一献」を使用。
軽やかな香りを感じられながら味わいはどっしりと重みのある辛口。ほどよい酸味が全体の輪郭を引き締めています。
口に含むとすっと馴染み、穏やかに旨味が広がり、派手さはありませんが、”食事とともに寄り添うようなやさしさ”が感じられます。
こちらの「天心 純米酒」の最大の特徴は酵母!
単一酵母ではな、1801号酵母と1401号酵母の2種類を混合培養したもので仕込んでいます。
梨やメロンのような香りが特徴のカプロン酸エチル系の1801号と、バナナを彷彿させる酢酸イソアミル系の1401号。
この2つを酒母にバランスよく配合することで主張しすぎることのない食中酒が完成するのです。
両者の特性を活かしていることもあり、飲む人によってはカプロン酸エチル系の9号酵母を思わせる香りとなっています。
新酒の場合は、冷や(常温または少し冷やして)で味わうのがおすすめ♪
みずみずしい口当たりが引き立ち、清らかな米の風味が感じられます。
一方で、少し時間を置いて熟成が進んだものは、ぬる燗にするのもおすすめです。
温めることでふくらみのある旨味とまろやかさが増し、より落ち着いた印象の味わいに変化します。
ただし、出来立ての新酒を燗にすると独特の香りが立ちやすい傾向があるとのこと。
熟成が進んでからの燗のほうが、より飲みやすく、美味しく感じられるでしょう。
おすすめのペアリングは、海の幸との組み合わせ!
新鮮な生牡蠣やお刺身など、海の香りを感じる料理とよく合います。
すっきりとした味わいが、魚介の旨味をさっぱりと包み込み、後味を心地よく締めてくれます。
■天心 純米酒 スペック■
| 原材料 | 米(国産)・米麹(国産米) |
|---|---|
| 原料米 | 夢一献(福岡県産) |
| 精米歩合 | 60% |
| アルコール度 | 15.5度 |
| 日本酒度 | +5 |
| 酸度 | +1.4 |
天心 音~OTO~ 純米酒

「天心 音~OTO~ 純米酒」は、香りが主張しすぎない、穏やかな香りが特徴です。
冷やした時と温度が上がった時ではまったく印象が変わり、特に口に含んだ瞬間にふわりとメロディーを奏でるように鼻腔へと広がる香りが魅力。
穏やかな香りと適度な酸味が心地よく調和し、飲み疲れしない軽やかな純米酒に仕上がっています。
気になる使用酵母は、「1401酵母」。
「金沢酵母」とも呼ばれるもので、バナナやメロンの酢酸イソアミルを多く生成し、酸が繊細なのが特徴です。
「天心 純米酒」と酒米も精米歩合もアルコール度数も同じなのに、印象ががらりと違う。
これは、酵母の個性によって生まれる部分が大きく、酵母を変えることで酸がしっかり出るタイプにも、穏やかに仕上がるタイプにもなります。
そのため、「音~OTO~」は”香りは控えめ・味わいはしっかり”という天心シリーズの中でも少し個性のあるポジションに位置しています。
目を引くラベルは、福岡県出身のイラストレーター「イフクカズヒコ」氏によるもの。2021年の「ペントアワード」という世界的なパッケージデザインコンペでブロンズ賞を受賞しています。
デザインコンセプトは【ハッピー】。
”コロナ禍で家飲み用の300mlの商品をつくりたい”
”せっかくなら、気持ちが明るくなるような賑やかなラベルにしよう”
と企画した蔵元が知人を介してイフクカズヒコ氏に出会いました。
実際にお酒を飲んでもらったところ、”味に、メロディーが流れるような重なりを感じますね”と感想を受け、その言葉から自然と「音」というテーマが浮かび上がったのだとか。
鍵盤のようなデザインや、彩りのリズム感も、そこから形になっていきこのラベルと共に「天心 音~OTO~」が完成したのです。
そんな運命のような出会いによって生まれた「天心 音~OTO~」におすすめなペアリングが、北九州の郷土料理「ぬか炊き」。
ぬか炊きとは、イワシやアジなどの青魚を米ぬかでじっくり煮込んだ、江戸時代から続く伝統料理。
小倉藩の城主が広めたとされ、家庭ごとに味が異なるほど根付いた料理ですが、県外での知名度はまだそれほど高くありません。
魚はおよそ7時間かけて煮込まれ、骨までやわらかく、まさに“丸ごと食べられる”ほどの柔らかさに仕上がります。甘辛く濃厚な味わいで、青魚特有の香りをぬかがほどよくまろやかになるとのこと!
音は、このぬか炊きの濃い味付けをすっきりと受け止め、口の中を心地よくリセットしてくれます。まさに「地元の料理に地元の酒」という理想のペアリングです。
天心シリーズの中でも少し個性のある「音」は、北九州の味と合わせることでその魅力がいっそう引き立ちます。
地域の味とともに楽しむ、そんな一杯としておススメ!
■天心 音~OTO~ 純米酒 スペック■
| 原材料 | 米(国産)・米麹(国産米) |
|---|---|
| 原料米 | 夢一献(福岡県産) |
| 精米歩合 | 60% |
| アルコール度 | 15度 |
| 日本酒度 | +4 |
| 酸度 | +1.7 |
溝上酒造Q&A
今回の留学中に挙がった溝上社長への質問を一部ご紹介します。
- 天心一献会とはどのような会なのですか?
- ひと言で言うと “地元・八幡で天心を愛する方々が集まる交流会” のような場ですね。
八幡の企業さんや信用金庫さん、飲食店さんなど、地域でお世話になっている方々が中心で、毎回80名ほど集まってくださいます。
皆さん「天心が好き」で来てくださっていて、会の間は“天心しか飲まない”という徹底ぶりなんです(笑)。蔵としても本当に励みになりますよ。 - 溝上酒造さんが目指す酒造りはどのようなものなのでしょうか?
- うちのお酒は、出荷先のほとんどが地元・北九州市なんですよ。市内だけで7割ほどを占めていると思います。
これは意図的に「地元だけに絞っている」というわけではなく、結果として、地元の皆さまに長く愛されてきた証なのかなぁ、と思います。
だからこそ、まずは常日頃から天心を飲んでくださっているお客様に喜んでいただける酒を造りたいという思いがありますね。
「今年はさらに美味しくなった」と言っていただけるように、毎年、丁寧に酒造りを重ねています。
ただ、現状として、全国の方が手に取る機会はかなり少なく、「初めて見ました」という声も本当に多いのは確かです。
県外への流通がほとんどない分、地元で愛され、地元で磨かれてきた銘柄と言えると思いますが、県外の方々にも味わっていただきたい銘柄でもあります。
オンライン酒蔵留学に参加するには?

「もっと酒蔵さんの想いを知りたい!」「オンライン酒蔵留学に興味がある!」という方は、下記よりご参加ください!
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是非皆さんのご参加お待ちしております!
オンライン酒蔵留学の流れ

①事前にお酒が届く!
・オンライン酒蔵留学をお申し込み後、ご自宅にお酒をお届け。
②オンライン酒蔵留学に参加!
・つくり手さんと乾杯!(ZOOMまたはYouTube LIVE)
・前後半に分けて皆さんと交流しながら推し蔵ポイントを探る。
③全国に飲み友達が出来る!
・オンラインで全国の日本酒ファンと情報交換し、飲み友達が出来る。
過去のオンライン酒蔵留学の様子をまとめたレポートは記事はこちらからご覧いただけますので、是非参考にしてみてください!
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つくり手さんと「つながる」
つくり手さんの想いを「のぞく」
自分たちの世界観を「ひろげる」
次回もハンズオンポーズで乾杯!
※過去のレポート記事はこちらから!!

