能登支援シリーズ第2弾 石川県珠洲市【櫻田酒造】今後の再建についてともに考える オンライン酒蔵留学

能登支援シリーズ第2弾 石川県珠洲市【櫻田酒造】今後の再建についてともに考える オンライン酒蔵留学

第42回 オンライン酒蔵留学 レポ

石川県鳳珠酒蔵組合理事長 櫻田酒造4代目蔵元杜氏 櫻田博克氏
1914(大正3)年創業の櫻田酒造は、奥能登の猟師町石川県珠洲市蛸島町にあり、家族4人で営まれている小さな酒蔵です。手がける銘柄は二つ。純米酒の<大慶(たいけい)>と、本醸造・上撰の<初桜(はつざくら)>。どちらも地元のみなさまに愛され親しまれてきたお酒です。奇跡的に残った貴重な<初桜>をお送りいただき、酒蔵再建に向けたお気持ちと現在の珠洲市の状況についてお話しいただきました。

 

2月18日〜21日、ハンズオン代表増田とオンライン司会者コカドの2名で北陸へ。前回ご登壇いただいた七海理事長自らの運転で、櫻田酒造様も訪問。メディアで見る以上の状況を目の当たりにしました。復興どころか、まだ復旧にも至らない能登珠洲市・蛸島町の現状の一部もお伝えします。

今後「私たちに何ができるのか」を考えるきっかけに。

オンライン酒蔵留学レポとは

オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」が生まれます。離れて暮らす仲間と「たのしく学ぶ」ことで、いつものお酒がさらに美味しく味わい深くなっていきます。

 

本記事は、2024年4月27日(土)に能登地震被災地支援シリーズ第2弾として開催。酒蔵の復興をめざす石川県珠洲市櫻田酒造4代目蔵元杜氏・櫻田博克氏のお話を伺いました。大変な状況の中、蔵に残った最後の貴重な本醸造<初桜>を特別バージョンのラベルでお送りいただき、能登の現状やこれからできる支援についてお話しいただきました。

今回オンライン留学をきっかけに、留学生を中心とした<チーム櫻田ファミリア>を結成。2年後2026年の酒蔵再建をめざす櫻田酒造と2026年完成予定のサグラダ・ファミリア。『ガウディという名前のお酒を造ろうかな』と笑顔で話す櫻田蔵元と櫻田酒造を今後もみんなで応援します!

蔵に唯一残った貴重な日本酒<初桜>で乾杯

今回の地震後、毎朝酒蔵の裏手から瓦礫の中に通じる細い通路を通って、無事だったお酒を1本1本取り出していました。今回お届けした<初桜>も残り数本。通常のラベルも瓦礫の下に埋まってしまったため、特別に金沢市の阿部寿雪先生の書でラベルを作成しました。今日のオンライン留学も、私は金沢市で借りたアパートから参加しています。

 

<初桜>は珠洲市で愛されているお酒です。中でも地元蛸島町では「毎日飲む酒はこの酒だけや」と言っていただけるほど、本物の地酒です。

能登の酒蔵は、以前から酒造りにもち米を使用してきた歴史があります。近年は少なくなってきた製法ですが、櫻田酒造では酒造りを始めた当時から伝統的に受け継ぎ、<初桜>も、もち米の甘みと旨みが活きたお酒となっているのです。

4段米として蒸したもち米を入れる際、さわりすぎて餅にならないように、冷ましてそーっと入れる作業が面白くもあります。もち米は糖化しやすく、すぐに溶けて、独特の甘みとコク味になっていくのです。



櫻田さん直伝ペアリング

<初桜>に合うアテをご紹介いただきました。

地元珠洲市蛸島町は漁師町。漁師さんたちとの交流も深く、刺身はマスト

中でも、白身魚やタコがオススメです。たこ焼きにも合いますよ!

 

珠洲市で獲れる魚の九割以上が、蛸島漁協で水揚げされます。漁師さんたちが魚・蟹を持ってきてくれることも日常だったので、お礼に酒粕を配ったりしていました。 

櫻田酒造の看板商品4撰

大慶(たいけい) 

先祖が漁師だったこともあり、地元では大漁だった時に「大慶やった大慶やった!」と言うことにちなんで、縁起の良さから名付けられたお酒です。

「こんなお酒が飲みたいなぁ」とイメージしながら造っていました。

 

山田錦と石川県で生産に力を入れている酒米・百万石乃白のブレンド 

55%精米 純米酒

初桜

石川県産酒米 五百万石

石川県独自の酒米 石川門

もち米

すべて65%精米 本醸造

おだやかなお米の香り

 

4段米にもち米を使用した独特のほのかな甘みと旨みが特徴

地元蛸島町で晩酌酒として親しまれ、毎日飲んでも飽きない味わい

テレビを見ながら2合飲むのもオススメ 熱燗でも

能登の小さな珈琲酒

10年ほど前、リキュールの製造免許を取得。何かおもしろいことをしたいなぁと思い開発した、日本酒ベースの梅酒<能登の小さな梅酒>がヒットしました。

第2弾を考えていた頃、珠洲市の二三味珈琲さんの前を通った時に、ふとコーヒーのいい香りがしてきました。「ビビビッ!これだ!」と来たのです。さっそくコーヒーを買ってきて、日本酒にコーヒー豆を漬けて試作。二三味珈琲さんに「こういうお酒を作りたいんだけどいいかなぁ?」って聞いたら、「いいよー!」ということで販売することに。

二三味珈琲さんのとても美味しいコーヒーと私の直感から生まれたお酒です。お土産にも人気。

能登美人(酒粕石鹸)

酒造りの際に作られる酒粕を配合した自然派石けん

主成分は馬油のため保湿効果も高く、ほんのり優しい香り

「これを使ったら他の石けんは使えない」と他県からのリピーターも

 

近所の方にいただいた酒粕石けんにヒントを得て、豊富にある酒粕を活用。

復興資金につなげるべく、販路情報を絶賛募集中。

 櫻田酒造HP

 

人と人とのつながりで、酒蔵再建をご支援いただいています

桃花鳥


引用元:https://www.makuake.com/project/toukachou/

さくら福姫(石川県珠洲市産 農薬を使わない農法で育てられた酒米)

50%精米

今回の地震以前より、珠洲市を事業拠点の1つにしているアステナホールディングス様から、『農薬を使わない農法で育てられた新しい酒米<さくら福姫>で酒造りをしてほしい』というご依頼がありました。そこで純米大吟醸<桃花鳥>を700本作ったのですが、昨年5月の地震で200本割れてしまいました。「今回の地震で、残りの500本もたくさん割れてるのだろうな…」と予想したのですが、1本も割れていなかったのです。

アステナホールディングスさんから、クラウドファンディングサービス<Makuake>を活用したプロジェクトのご提案をいただき、500本の<桃花鳥>を応援価格で販売。経費を除いた売上金全額を櫻田酒造の復興資金としてご支援いただいたのです。

大変ありがたく、酒蔵再建に向けて背中を押されました。

<能登初桜><共同醸造・大慶><天狗舞+大慶>

画像引用元:車多酒造オンラインショップ

石川県白山市にある創業200年の歴史ある車多酒造さんにご協力をいただき、酒造りやお酒の販売をしています。奇跡的に貯蔵庫に残っていた<初桜>本醸造の原酒3600リットルを石川県酒販連合組合さんが車多酒造さんまで運んでくださり、車多酒造さんの純米酒天狗舞とブレンドして<能登初桜>として販売することができました。石川県酒販連合組合さんでも1升瓶1000本を販売。車多酒蔵さんオンラインショップでも、櫻田酒造の復興支援として販売していただいています。

 車多酒造オンラインショップ

 

また、300俵注文していた酒米のうち、なんとか助かった酒米135俵も車多酒造さんに持ち込み、3月20日頃から泊まり込みで共同醸造させていただきました。純米酒大慶として、9月頃販売予定です。優秀な蔵人さんが大勢いらっしゃって、設備もいい環境での純米酒造り。美味しくなること間違いなしです。今からとても楽しみにしています。1升瓶で2000本ほどですが、鳳珠酒販組合の七海理事長からも『精一杯売らせてもらうよ!』とあたたかなお声がけをいただきました。

さらに、持ち込んだ酒米の一部で造った純米酒天狗舞と瓦礫の中からわずかに救出できた純米酒大慶をブレンドした<天狗舞+大慶>も販売予定。

詳細は車多酒造HPにて随時掲載

 車多酒造HP

 

並行して、<能登初桜>の販売に際して、「初桜」を商標登録されている和歌山県の初桜酒造さんと初めて電話でお話しをしました。『悪用されないように商標登録しただけだから、気にせずガンガン使ってください』とおっしゃっていただいて…泣いてしまいました。

この場をお借りして、ありがとうございます!

いずれ初桜酒造さんともコラボしてみたいという希望を持っています。

 初桜酒造HP

 

一人じゃないから頑張れる

昨年5月に起きた地震で被害を受けた酒蔵の修理がようやく終わり、修理箇所を点検していた時に今回の地震が起きたのです。お正月に間に合うようにと頼んで壁も修理してもらい、「正月ゆっくり休んで、さあ酒を造ろう!」と思っていたタイミングでした。しゃがんだ所に、ちょうどお米を冷やす放冷機があったおかげで、倒壊して梁が降ってきた蔵の中でケガもなく命も助かりました。

しゃがんでいた場所を指す櫻田氏

 

幸い家族もみな無事だったのですが、「酒造りはやめた方が楽やな」と半分思っていました。

避難生活が続く中で、他の能登の酒蔵さんたちとオンラインで話す機会がありました。私も車の中から参加。みんな状況はメタメタだったのですが、驚いたことに「酒造りをやめる」という人は一人もいなかったのです。「絶対やる!」「やるに決まってるわ!」とみんなアツイやつらで、年齢が近いこともあって影響を受けました。誰かが言い出すことで、みんなで一緒にできる。「一人じゃないというのは、いいな」と思いました。

倒壊した酒蔵内部の様子




私は、単純に酒造りがおもしろいのです。だから、また酒を造りたい。

毎年思い通りの酒ができるわけではないのですが、それがおもしろい。

「タンク1本(1升瓶1500本分)どういうふうにやろうか」と悩んで眠れないこともありますが、それもまた楽しいのです。ある日ひらめくこともあります。たまに思った通りにできた時の嬉しさは格別です。

思い通りにできなかったように感じても、意外とお客さんからは『おいしい』と言われたり…。火入れ後に熟成させて待つことでも味が変わり、人にはコントロールできないのですが、とても奥が深い。

 

そして、大変なことがあっても、周りの人に恵まれて助けられ、これまでもなんとかなってきました。だから、「今回もなんとかなるだろう」という自信のようなものがあるのです。本当にありがたいことだと思います。

地震前と地震後の軍艦島

近年、能登は地震が多く、地震のたびに少しずつ軍艦島の景観が変わってしまいました。

地元のシンボルでもありますので、珠洲の人間としては本当にさみしく切ない気持ちです。

七海理事長も私の妻も、言葉を失っていました。

 

 

 

仲間のためにも、酒蔵再建を先導

来週4月29日からようやく解体工事が始まります。櫻田酒造の建物は「周囲に危険を及ぼす状況」ということで、「緊急解体案件」として早い着工となりました。ですが、珠洲市や能登半島全体では、まだまだ解体工事も進んでいない現状です。

櫻田酒造の倒壊状況


周りに先駆けて再建に向けて動き出せていること、また私は鳳珠酒造組合の理事長でもあることから、時間や費用面での目安を後続の仲間に伝えることができるように、「何がなんでも早く再建したい」と考えています。地元珠洲市の設計士さんや建設業者さんにも相談して、「なんとかする」と言っていただき、心強く感じています。費用面では補助金があるとはいえ、1億円は必要となります。2年計画で考えていますが、復旧復興までには、まだまだ課題は山積みです。でも「みんなのために」と思うと、大変なことも全部、楽しい気持ちで取り組むことができるのです。嫁さんを説得して「貯金をよこせー」とか交渉しなければならないのですが(笑)、再建できることに感謝して取り組みたいと思っています。

櫻田酒造全景

また、家族4人(90歳のじいちゃんと81歳のばあちゃんと私たち夫婦)で酒造りを続けてきたのですが、地震をきっかけに、東京で農業大学に通っている息子が家を継ぐことに。日本酒に特化した小売店でアルバイトを始めたり、正月の朝に一緒に飲んだり、冬休み期間中は手伝いをしてくれたり。息子とケンカしながら酒造りをする日が楽しみです。

以前は「新しい家がいい」と言っていた娘も「昔のうちがいいな」と可愛いことを言ってくれたりしています。

更地になるのは本当にさみしいのですが、瓦礫の下には我々の戦闘服である法被(ハッピ)、レジの中の現金や使える道具も残されていますので、これからも少しずつ助け出していきたいのです。什器ボランティアの方にもご協力いただいて、再建に向けた一歩を踏み出そうと思います。
今後ともご支援をよろしくお願いいたします。

SAKEクラファンのみなさまから蔵元様へのメッセージを書いた色紙をお渡ししました

チーム櫻田ファミリア結成

今回、留学生を中心とした<チーム櫻田ファミリア>を結成。2年後2026年の酒蔵再建をめざす櫻田酒造と2026年完成予定のサグラダ・ファミリア。『ガウディという名前のお酒を造ろうかな』と笑顔で話す櫻田蔵元と櫻田酒造を今後もみんなで応援します!

今回は櫻田酒造さんからのリクエストで、酒粕や酒粕を使用した石けん<能登美人>の販売について、留学生もアイデアをシェアしました。

酒粕や酒粕石鹸<能登美人>の販路について、留学生もアイデアをシェア

 

◎大慶と石鹸のセット販売(身体の中からも外からも美人になる)

◎「まれ」で主演の土屋太鳳さんは日本酒好き→能登応援企画で酒と甘酒と石鹸も応援してもらおう!

◎東京のアンテナショップで販売

◎石けんの大きさを半分くらいにして価格を抑える

◎発酵と美容で活動している知人に販売してもらおう!

◎インスタでみんなで泡泡の画像でつながろう!

◎ソープトレイを作ってセットで販売

◎酒粕カステラ

◎フランス人の方が酒粕に興味を持ち「売ってほしい!」と言われた

 →外国の方向けに販売

留学生(参加者)感想

◎櫻田さんに会いたい!

◎汚れてる瓶の<初桜>を入手。みんなで集まって飲んでます!

 ◎3世代コラボ日本酒、楽しみにしています!まさに櫻田ファミリア✩

櫻田さん、ありがとうございました!

次回予告 新潟竹田酒造店十代目蔵元 竹田春毅氏登壇

新潟の地酒というと淡麗辛口のイメージもありますが、甘口にこだわったお酒造りについて詳しくお話をお伺いします。

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