オンライン酒蔵留学とは?
オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」が生まれます。
離れて暮らす仲間と「たのしく学ぶ」ことで、いつものお酒がさらに美味しく味わい深くなっていきます。
45回目となる今回のオンライン酒蔵留学は、岩手県一関市にある「世嬉の一(せきのいち)酒造」から佐藤航社長にご登壇いただきました!
日本酒蔵復活の秘話や、ビール醸造の知見を活かした日本酒造りのことまで非常に興味深いお話をしていただきましたのでご紹介いたします♪
第45回 オンライン酒蔵留学
■日時:7月20日(土)19:00~
■登壇者:世嬉の一酒造 四代目蔵元 佐藤航氏
■参加留学生:21都道府県から48名(内7名初参加)
■留学内容■
<前半>
・世嬉の一酒造についてご紹介
・世嬉の一酒造のお酒で乾杯&ペアリング紹介
・醸造技術についてご紹介
・質問タイム
<後半>
・留学生同士でディスカッションタイム
【ビール好きのための日本酒とは?】
・質問タイム
・まとめ
・次回予告
世嬉の一酒造は、元々造り酒屋として創業しましたが、近年は地ビール蔵として岩手県のビール産業を支えてきました。
地ビール事業が蔵の代名詞となる中、2018年に創業100周年を迎えたことを機に、四代目蔵元「佐藤航」社長が約40年ぶりに日本酒蔵の復活を果たしたのです。
ビール蔵からの転身はかなり珍しい事例であり、そんな魅力満載の酒蔵をハンズオンSAKEでは注目させていただき、佐藤社長のご登壇が実現しました。
事前告知の段階で留学生からの関心も非常に高く、日本酒醸造の在り方を改めて見直すことが出来る場となったのではないでしょうか!
世嬉の一酒造について
創業は、1918年(大正7年)。
岩手県一関市の街中を流れる磐井川沿いに蔵を構えます。
代々受け継がれた古い蔵群を残すおよそ1200坪の敷地内には、郷土料理レストラン、ビール工場や博物館などが並び、蔵を活かした幅広い事業展開で訪れる人々を魅了し続けている酒蔵です。
創業当時は“横屋酒造”という屋号で営んでいました。
もともとこの地には江戸時代から続く「熊文酒造」という蔵がありましたが、大正期に倒産したため、横屋酒造の次男であった初代社長「佐藤徳蔵」氏が引き取る形で新たに横屋酒造を設立しました。
“横屋”とは、通りに面して建物が横向きに建てられていたことが由来とされています。
横屋酒造は皇室や靖国神社などにも奉納する酒屋だったこともあり、1920年(大正9年)に皇族の閑院宮様(写真中央)が蔵を訪れます。
その際、
「世の人々が嬉しくなる一番の酒造りをしなさい。」
との金言を頂戴し、【世嬉の一】というブランドが誕生しました。
そして、1957年(昭和32年)に「世嬉の一酒造株式会社」へと社名を変更します。
その後、戦争、2度の水害、東日本大震災など数々の苦難に見舞われ、何度も経営危機に追い込まれてきた世嬉の一酒造ですが、周囲の人々の支えや蔵人たちの諦めない心により乗り越えてきました。
清酒造りの休業や共同醸造などを経て、1995年(平成7年)に開始した地ビール事業が世嬉の一酒造の新たな代名詞となります。
地元の素材を活かした数々のクラフトビールは、多くの品評会で受賞するほど皆様に愛され続け、今では岩手県で一番古いビール会社となりました。
そして、この度創業100周年を機に、悲願であった日本酒造り再開を約40年ぶりに果たすこととなりました。
日本酒蔵復活の構想は、三代目蔵元の時代からありましたが、借金の返済や震災などの影響により実現することが出来ずに2020年の新型コロナウイルス騒動を迎えます。
蔵の売上は減少し、またも日本酒蔵復活は延期かと思われましたが、事業再構築補助金が認定され、さらにクラウドファンディングによる支援もあり、2023年(令和5年)に見事日本酒蔵再建の夢を果たしたのです。
そうして生まれ変わった清酒「世嬉の一」が誕生し、ビールだけではなく日本酒でも一関市を盛り上げていこうとしています。
かつて低迷期には「お化け屋敷」と呼ばれていた世嬉の一酒造ですが、蔵を解放した施設は一関市の観光名所となり、歴史を継承したお酒造りは人々を喜ばせ続け、現在では岩手県に欠かせない酒蔵へと成長を遂げてきました。
国の登録指定文化財「世嬉の一酒造」
世嬉の一酒造の外観を見渡すと洋風建築のような佇まいをしているのが分かると思います
この蔵を設計したのが、一関市出身の小原友輔(おばらともすけ)氏です。
小原友輔氏は、東京駅を設計した辰野金吾門下で、初代社長である佐藤徳蔵の従兄弟にあたる人物。
広大な敷地内に建ち並ぶ、洋風建築と日本古来の建築が融合した蔵はまさに芸術品。
創業から100年もの間、歴史を刻んできた世嬉の一酒造の蔵ですが、外壁などは一切修繕など行なわず当時のままの姿を保ってきたことから、1999年(平成11年)には現存する7つの蔵群が国の登録有形文化財に登録されています。
もともとは清酒造りが行われていた蔵でしたが、二代目蔵元の時代が終わろうとした時には、会社は倒産寸前のところまで追い込まれており、やむなく他の酒蔵での共同醸造に切り替えることに。
そうして空いた蔵を郷土料理のレストランや博物館などに改築し、有効活用することで蔵の維持へと繋げてきました。
蔵元レストラン「せきのいち」
趣のある蔵の雰囲気を感じながら一関で受け継がれてきた郷土料理が味わえるレストラン「せきのいち」。
もともとは懐石レストラン「藤」でしたが、より地域の良さを伝えるため、1987年(昭和62年)に郷土料理レストランへ変更しました。
代表料理には「果報もち膳」や「手切りはっと膳」などがあり、世嬉の一酒造の地ビールや日本酒と共に楽しむことが出来ます♪
ビール工場
世嬉の一酒造では、ビールの出荷量が日本酒よりも多く、常に稼働しているためいつでもビール工場を見学することが出来ます。
蔵の敷地を活かしたビール工場は必見の価値ありです!
酒の民俗文化博物館
仕込み蔵として使われてきた東北一の大きさを誇る2階建ての土蔵を改装した博物館。
酒造りの工程紹介や実際に使用されていた火桶など1600点を超える道具展示のほか、酒の神・松尾大明神を祀っている杜氏部屋や米造りに関する資料をご覧いただけます。
事前に予約すると係の方が案内してくれるようですので詳しく説明を聞きたい方にはおすすめです。
いわて蔵ビール
1995年に立ち上げた「いわて蔵ビール」は、世嬉の一酒造の酒造りの技と、醸造士の経験と知識により生まれたクラフトビールブランド。
「世の人々が嬉しくなる一番の酒を目指す。」という理念を基に、ビールを通して岩手の良さと素晴らしさをお届けするという想いで醸造しています。
定番品から季節限定品まで幅広いラインナップがあり、これまで多くの国際大会で受賞し、高い評価を受けているまさに【世嬉の一】を体現したお酒と言えるでしょう。
そんな「いわて蔵ビール」から注目の商品をご紹介!
サムシングブルー
「いわて蔵ビール」の名が世間に広まるきっかけとなった幸せを呼ぶ青いシャンパンビア【サムシングブルー】!
“世の人々が嬉しくなる一番の酒造り”の理念から、誰もが嬉しくなる、幸せになる瞬間である結婚式をテーマに、ブライダルシーンで飲めるお酒を開発しました。
ヨーロッパでは昔から結婚式に伝わる花嫁の幸せなアイテムが4つあると言われております。
・なにかひとつ古いもの(Something Old)
・なにかひとつ新しいもの(Something New)
・なにかひとつ借りたもの(Something Borrowed)
・なにかひとつ青いもの(Something Blue)
青は「青い鳥」同様、幸せを呼ぶ色と言われており、忠実・信頼を象徴とされる色でもあり、花嫁の純潔や清らかさを表します。
サムシングブルーの鮮やかな青色は、合成着色料や保存料などは一切使用せず、藻から採取した色素を使用しています。
また、レモン果汁をアクセントにしており、一般的なビールのようなコクや苦みをなるべく抑え、のどを滑り落ち、さわやかな幸せを感じられる味に仕上げているのが特徴です。
三陸牡蠣のスタウト(オイスタースタウト)
岩手県陸前高田市の広田湾で獲れる牡蠣の身と殻を使って醸造した濃厚な黒ビール。
地ビール事業を開始した当時は、麦芽・ホップ共に輸入品を使用していたこともあり、「外国製のビール」と揶揄されていました。
そこで地元の材料を使って地ビールを造りたいと考えた時、古くからイギリスで醸造されていた“牡蠣を使用した黒ビール”の製法を知り、いわて蔵ビールで復活させました。
牡蠣の殻には、ミネラルとカルシウムが豊富なため発酵を促進してくれる役割があり、牡蠣の身に含まれるタンパク質は、泡をきめ細かくし泡持ちを良くしてくれる効果があります。
また、牡蠣のうま味成分が非常に濃厚な味わいを出してくれるため濃いコーヒーのような味わい深さを楽しめるのも特徴です。
2002年の発売以来、数々の世界大会で受賞するなど国内のみならず世界にも岩手の魅力を発信し続けています。
この他にも、お肉料理にぴったりな「レッドエール」やアロマホップの代わりに山椒の実を使った「山椒」など魅力的な地ビールが満載です♪
世喜の一酒造は、東北新幹線「一ノ関」駅から徒歩15分程度と訪れやすい立地ですので、是非、蔵の歴史や郷土料理、地ビールと地酒を味わいに足を運んでみてください!
【世嬉の一酒造】
〒021-0885
岩手県一関市田村町5-42
TEL:0191-21-1144
HP:https://sekinoichi.co.jp/
通販サイト:https://www.sekinoichi.com/
波乱万丈!世嬉の一酒造のこれまでのあゆみ
前述の通り、世嬉の一酒造のこれまでのあゆみには戦争、水害、震災、倒産危機など幾度となく苦難に見舞われてきました。
まさに波乱万丈ともいえる世嬉の一酒造のあゆみをグラフで振り返ってみます。
・1918年(大正7年) 横屋酒造として創業
・1920年(大正9年) 閑院宮様がご訪問
「世の人々が嬉しくなる一番の酒造りをしなさい」と金言を頂戴し、【世喜の一】ブランドがスタート。
・1941年(昭和16年) 太平洋戦争勃発
・1947年(昭和22年) カスリーン台風被害
蔵の裏手にある川(磐井川)が氾濫し、蔵の2階部分まで土石流が流れ込むなど甚大な被害を受ける。
・1948年(昭和23年) アイオン台風被害
再度、磐井川が氾濫し、前年と同様の被害を受ける。
・1955年(昭和30年) 一関初となる自動車学校を設立し、事業を拡大する。
・1957年(昭和32年) 社名を「世嬉の一酒造株式会社」へ変更
・1982年(昭和57年) 経営難のため共同醸造に切替え、清酒造りを休止
紫波酒造店、月の輪、岩手銘醸などにお酒を造ってもらったものを仕入れ、世嬉の一酒造として販売。
・1986年(昭和61年) 一関自動車学校を売却し、蔵を存続させる。
蔵を取り壊し大型商業施設やホテルの開発の話があったが、二代目社長夫人の「蔵を壊すのは勿体ないから残してほしい」という言葉を、息子である三代目社長「佐藤晄僖」氏が受容し、一関自動車学校を売却した資金で蔵の補修、保全、活用を行った。
その後、郷土料理のレストランや博物館などに改装。
・1995年(平成7年) いわて蔵ビール設立
空いていた一つの蔵を活用し、町おこしとして市内有志と共同で取り組む。
後に共同経営を止め、世嬉の一酒造が引き受けることに。
・1997年(平成9年) いわて蔵ビール醸造スタート
・1999年(平成11年) 佐藤航現社長が蔵に戻る
1990年代後半の地ビールブームは数年で廃れてしまい、世嬉の一酒造が大赤字に陥ったタイミングで佐藤航社長が呼び戻される。
・2000年(平成12年) いわて蔵ビール再建のため商品開発に奮起
サムシングブルー、オイスタースタウトなど続々誕生
・2005年(平成17年) 経営が黒字化
・2011年(平成23年) 東日本大震災に見舞われる
津波被害はなかったものの、震度6強の揺れが襲い、7つの蔵は倒壊や損壊の被害を受ける。
この被害により順調だった経営も息詰まることに。
・2014年(平成26年) 佐藤航社長が四代目蔵元に就任
・2018年(平成30年) 世嬉の一酒造創業100周年
・2019年(令和1年) 震災時の蔵修復の返済目途が立つ
・2020年(令和2年) 新型コロナウイルス騒動により売上減少
集客が1/4以下、売上が1/2となってしまったため、岩手県初のクラフトジンやクラフトコーラなどの新商品を開発し、再建に努める。
・2023年(令和5年) 40年ぶりの清酒製造を再開
次の100年へ!佐藤航社長の想い
現在、世嬉の一酒造の蔵元を務める「佐藤航」社長。
日本大学 農獣医学部 応用生物科学課を卒業後、コンサルタント会社に就職。
経営支援を行っていましたが、1999年末に父である三代目蔵元から蔵の経営危機を理由に呼び戻され蔵入りすることに。
蔵に戻った直後、大赤字となっていた地ビール事業の存続か廃業の2択を迫られます。
そこで佐藤社長は一念発起し、たった一人で地ビール事業を継続していくことを決意しました。
ものづくりが好きだった佐藤社長は、ビール醸造にどんどんのめり込み、続々と商品を開発して経営を伸ばしていくのです。
その後、スタッフが成長したため、工場長から常務へ、そして東日本大震災を経て四代目蔵元へ就任します。
2018年に創業100周年を迎えた際、100周年記念イベントを積極的に企画・実施してくれた社員たちの姿を見た佐藤社長は、古い社員の良さを残しつつ、若い社員が自由に活躍できる場が必要だと感じました。
世嬉の一酒造次の100年の第一歩として、老舗企業ではなく、ベンチャー企業のつもりで様々なことにチャレンジしていき、社員を育てていきたいと考えています。
そして、世嬉の一酒造から世界に羽ばたく人を創りあげることが今後のビジョンと捉えています。
また、次の100年への想いは40年ぶりに再会した日本酒造りにも込められています。
2023年に再会した日本酒造りは全行程を佐藤社長が一人で行っており、作業後に工業技術センターへデータを送ってアドバイスをもらうなど熱心にお酒造りと向き合っています。
この姿勢は、地域とのつながりを大事にしている佐藤社長だからこそ。
お酒造りは地域の自然や文化、一次産業などが繋がって出来上がるもの。
この素晴らしいつながりを100年先にも残していきたいと思い、その第一歩として、再開した日本酒を通して地域の魅力を発信していきたいと考えているのです。
人と人を結ぶ「世」嬉の一のロゴ
世嬉の一酒造では、40年ぶりに日本酒「世嬉の一」を自社で復活させたのをきっかけにラベルのロゴも新たにデザインしました。
もともとは、アメリカに本社を構える企業ブランディング会社「ランドーアソシエイツ」の日本支社と縁があり、いわて蔵ビールのロゴなどをブランディングしてもらっていました。
そして、この度40年ぶりに日本酒を復活させるということで再度依頼したところ、積極的に引き受けてもらい新たな世嬉の一のロゴが誕生したのです。
新たなデザインは、以前使用していた世嬉の一のロゴをモチーフに、人と人が繋がるイメージを蝶々結びで表現されています。
ラベル自体も波打った形でデザイン性を高めていて、ロゴの背景の模様も、純米大吟醸は流水、純米酒は田んぼをイメージした模様となっているなど細かいこだわりが散見されます!
今宵は豪華4本セット!クラフトビールと日本酒3種で乾杯!!
今回は佐藤社長の粋な計らいで、いわて蔵ビール1本と純米酒3種、計4本のお酒で乾杯♪
しかも日本酒に関しては、今回の酒蔵留学のためだけに普段は扱いのない300ml瓶を特別にご用意いただきました!!
佐藤社長、本当にありがとうございました!!
それでは、早速それぞれのお酒についてご紹介していきます!
【1本目】 限定醸造 「こビール」 ウェストコーストIPA
“岩手のホップで岩手らしいビールを”という想いで誕生したのがこの限定醸造の「こビール」!
岩手の方言には、「ちょっとの休憩」「おやつの時間」を意味する【こびる(小昼)】という方言があります。
その「こびる」と「ビール」を掛けて、親しみやすくかわいらしい【こビール】と名付けられました。
岩手県はホップの生産量日本一を誇る産地です。
特に遠野地区での栽培が盛んで、こビールには遠野産「IBUKI」というホップをメインに使用しており、グラスに注ぐと心地よいフルーティーなホップの香りが印象に残ります。
モルトには、ペールモルトをベースに、カラメルモルトをアクセントに配合することで旨味がプラスされて非常に飲みやすいビールに仕上がっています。
インディア・ペールエール(IPA)というスタイルは、18世紀末のインドがイギリスの植民地だった頃、在印イギリス人にペールエールを送るために誕生したしたもの。
冷蔵保存が出来ない長期の海上輸送に耐えられるよう、防腐剤の役割を持つホップを大量に投入することによりホップの強い香りと苦み、高めのアルコールが特徴のペールエールとなりました。
時代とともにホップの苦さではなく香りを強化するスタイルへと変化していき、世嬉の一酒造でも岩手のホップの香りを活かしたインディアペールエールを醸造することになったのです。
発売以来、ホップの香りと食事にも合う飲みやすさが人気を博し、ジャパングレートビアアワードでシルバーメダルを受賞するなど岩手を代表する地ビールへと成長してきました!
【2本目】 (新酒)特別純米酒 世喜の一
色々な食事に合わせられるお酒を造りたいと考え、一関産の食用米「ひとめぼれ」を60%まで磨いて出来上がったのがこちらの特別純米酒。
酵母には岩手県で開発された「ゆうこの想い」を使用しており、柔らかく温かみのある味わいに仕上がっています。
口に含んだ時にひとめぼれの香りと旨味がふわっと広がり、さらっとした後味でクリアな印象を受けます。
日本酒造り再開から1年目で既に完成された味わいですが、まだまだ試行錯誤の段階とのことなので、佐藤社長が思い描く酒質になるまで日々の研究に余念がありありません。
しかし、そんな未完成なこの特別純米酒が2024年6月に行われた【MILANO SAKE CHALLENGE】のテイスティング部門でなんと最高賞であるプラチナ賞を受賞したのです!!
日本酒造りを再開して早くも世界に認められた佐藤社長の手腕は確かなものと証明され、今後の進化にも大きな期待が出来そうです♪
「(新酒)特別純米酒 世嬉の一」と相性の良いおつまみは!?
(新酒)特別純米酒 世嬉の一 ペアリング
- イカの腑焼き
- ホヤの塩辛(ばくらい)
お酒はあまり強くないけどおつまみは大好きな佐藤社長に厳選していただいたペアリングがこちら!!
イカの腑焼きとホヤの塩辛!
岩手県は海産物が豊富なため日本酒に合わせるおつまみが豊富になるのは必然。
どちらのペアリングも塩味と磯の旨味が楽しめるおつまみですので、辛口の純米酒がすっきり洗い流してくれる最高のパートナーとなります♪
【3本目】 スパークリング純米酒 世嬉の一
岩手県の食用米「いわてっこ」を使用したスパークリング清酒。
日本酒度-3.0と少し甘めですが、酸もあるのでさっぱりとした味わい。
柔らかい発泡感が舌を包んでくれるので非常に飲みやすいスパークリングに仕上がっています。
また、アルコール度数も13%台なのでお酒の弱い方や女性の方など幅広い層にお楽しみいただける一本です♪
一般的にスパークリング日本酒は、シャンパーニュと同じ「瓶内二次発酵」という方法で醸造されます。
しかし、世嬉の一酒造のスパークリングは、詳細は後述させていただきますが、ビール醸造の知見を活かした斬新な方法を採用しているのです!
この世嬉の一酒造オリジナルの方法により、冷蔵保存が必須だったスパークリング日本酒が常温保存でも可能となり、開栓後の発泡感も持ちが良くなりました。
こちらのスパークリング純米酒に関しても先日行われた【MILANO SAKE CHALLENGE】にてシルバー賞を受賞しました!!
是非一度ご賞味ください♪
「スパークリング純米酒 世嬉の一」と相性の良いおつまみは!?
スパークリング純米酒 世嬉の一 ペアリング
- トマトクリームパスタ
- アンチョビとバジルのピザ
- フライドポテト、チップスなど
甘めのスパークリング純米酒には、酸味とコクのあるトマトクリームパスタや塩味と香りのあるアンチョビとバジルのピザなどが相性抜群です!
そして何といってもスパークリング系にはフライドポテトやチップスなどは外せないペアリングですね♪
【4本目】 純米大吟醸 世嬉の一(結の香)
酒米の王様「山田錦」にも引けを取らない岩手県産の酒米「結の香(ゆいのか)」を使用した純米大吟醸。
南部流の酒造の原点である
“いかに澄んだ旨味を出すか”
これを体現してくれるのが大吟醸用に開発された結の香。
そこに岩手県の酵母「ジョバンニの調べ」と岩手県の麹「ルーツ36」を合わせています。
地元で日本酒造りを復活させる際に、『岩手の原材料で地酒を造たい』という佐藤社長の想いが込められて誕生した純米大吟醸です。
大吟醸らしく華やかな香りに、甘すぎない爽やかな飲み口で透き通った上品な旨味が感じられます。
「純米大吟醸 世嬉の一(結の香)」と相性の良いおつまみは!?
純米大吟醸 世嬉の一(結の香) ペアリング
- 白身魚系のお刺身
- 白身や野菜の天ぷら
香り高いすっきりとした日本酒に仕上がっているので、香りを邪魔しないような白身魚のお刺身や野菜の天ぷらを塩で食べるとお酒を引き立ててくれます♪
一関市はシイタケ王国と言われるほど栽培が盛んで美味しいので葉物やシイタケの天ぷらとの相性は佐藤社長も太鼓判を押すほど!
瓶内二次発酵とは違う!ビール醸造の技術を活かした日本酒造りとは?
世嬉の一酒造のスパークリング日本酒は、一般的に採用されている瓶内二次発酵での醸造ではなく、タンク内で二次発酵を行う方法で醸造されています。
これは、ビール醸造出身である佐藤社長の“タンクでスパークリングを造りたい”という想いにより実現されました。
瓶内二次発酵とは?
日本酒における瓶内二次発酵とは、発酵中の醪(もろみ)を荒く搾り、火入れせずに生の状態のまま瓶詰めし、瓶内でさらに発酵(二次発酵)させ、炭酸ガスを発生させる方法です。
これは、スパークリングワインのシャンパーニュと同じ方法で、日本酒においてもきめ細かくまろやかな炭酸となるのが特徴です。
一見、単純な方法に思えるかもしれませんが、安定した商品の提供には、炭酸ガスや風味の調整、温度管理等のノウハウが重要となります。
また、商品化した後の取り扱いも注意が必要です。
二次発酵によりガス圧が高まっているため保存環境によっては瓶が割れてしまう危険性も。
スパークリング日本酒を保管する際は冷蔵庫で静かに冷やし、開栓時は泡が吹き出さないように様子をみながらゆっくりと開ける必要があります。
ビール醸造の応用!日本酒のタンク内二次発酵に迫る!
こちらが世嬉の一酒造で日本酒造りに使用されているタンクです。
内部は二重構造になっており、圧力の管理やチラーによる温度調整も可能で、1.5気圧まで耐えられる造りになっています。
そのため一度発酵が終わったタンクに、酵母を加えて二次発酵させ、そのままタンク内で澱引き(おりびき)をしてから瓶に詰めることが可能です。
見た目はビールタンクとほぼ同じように見えますが、要所要所にしっかりと日本酒用として設計されている部分があります。
まずこちらの配管用の資材ですが、ビールでは口径が1.5s規格を使用していますが、日本酒だと入り口部分に醪が詰まる可能性があるため倍の3.0s規格を使用しています。
タンクの底部にもビール醸造と日本酒醸造の違いがあります。
ビールの場合は、コニカルという円錐の形をしているのですが、世嬉の一酒造の日本酒タンクはお椀の様に歪曲しているのが特徴です。
これは、醪が循環しやすいようになっているのとチラー液が一番下まで届くことによりタンク内の温度を冷やしたり温めたりするのを目的としています。
佐藤社長が10年以上前から酒蔵復活の実現に向けて色々な酒蔵見学をしてきた際、日本酒造りにおいて「酸化をあまり気にしない」ことにビール醸造出身の身として疑問を感じていました。
そこで酸素を遮断できるタンクとして現在使用しているタンクの構造に辿り着いたのです!
こちらは瓶詰め機ですが、もともとビール用の瓶詰め機を日本酒用に改造したもの。
世嬉の一酒造では、スパークリング日本酒を瓶詰めする際、酸化防止策として窒素置換を行っています。
瓶詰め機に瓶を設置した時に、いきなりノズルから液体が出るのではなく、窒素が注入され、瓶内に充満すると液体が出てくる仕組みです。
ビールの場合は、二酸化炭素を注入しますが、日本酒の場合、二酸化炭素は液体に溶けやすいため窒素に置換し、打栓することによって酸素と触れ合うことなく酸化しにくくなるとのこと。
世嬉の一酒造のスパークリングは常温保存可能!
今回、留学生より
「なぜ世嬉の一酒造のスパークリングは常温保存可能なのか?」
という質問が挙がりました。
これにはタンク内二次発酵ならではの秘訣があったのです!
通常の瓶内二次発酵では、瓶内でガスが発生しているため冷蔵庫などで保管、クール便での出荷など扱いに気を付けなければなりません。
しかし、世嬉の一酒造のスパークリングは、タンク内で既に澱引きを済ませているため瓶詰めした時にはガスを発生させる酵母は少なく、破裂や噴きこぼれの心配がないので常温保存が可能というわけです。
冷やして保存しなくてもしっかりとしたスパークリングの発泡感があり、さらに泡の持ちが良い。
まさに日本酒の常識を覆す「次世代に受け入れられる日本酒」が誕生したと確信しました!
【ディスカッションタイム】ビール好きのための日本酒を考案しよう!!
オンライン酒蔵留学の魅力の一つでもあるディスカッションタイム!
今回のテーマは『ビール好きのための日本酒を考案しよう』です!!
現在、ビールのマーケットは3兆円、これに対して日本酒のマーケットは4千億円ほど。
単純に考えると、日本国内にビールを飲む人の方が日本酒を飲む人より7、8倍多いという計算になります。
これは『ビール好きの人のための日本酒』を勧めれば、日本酒のマーケットの幅が広がるチャンスでもあるのです!
そこで!留学生の皆さんにはビール好きのための日本酒をグループで考えてもらい意見を発表してもらいました。
-
分かりやすい日本酒
(純米や吟醸などスペックが難しくないもの) -
缶仕様の日本酒
(ビール缶に馴染みがある、新幹線など移動時に飲める) -
300ml瓶の日本酒
(コンビニなどに陳列しやすい、手に取りやすい) -
バラエティーな飲み方のできる日本酒
(炭酸割り、ロックなど飲み方を固定しない)
世嬉の一酒造Q&A
今回の留学中に挙がった佐藤社長への質問を一部ご紹介したいと思います。
- 世嬉の一酒造さんで使用されている打栓はしっかりした印象ですが、オリジナルのものなのでしょうか?
- 使用している栓は流通されているものです。
何回かに分けて飲まれることを想定して一升瓶と同様の栓にしたかったのと、酸化を防ぐためにしっかり閉まるものを選びました。 - 世嬉の一さんのお酒は北陸などで販売される予定はありますか?
- 実は自社の直売所と通信販売のみで、まだどこにも販売していなんです。
ビール畑出身なので地酒を置いてくれる酒屋さんとお付き合いもなく、以前は共同醸造だったため余計に繋がりが薄いのが現状です。
これから販路を広げられるように頑張ります。 - 今回ご用意してもらったそれぞれのお酒の酵母を教えてください。
- 純米酒は「ゆうこの想い」を使っていて、純米大吟醸には「ジョバンニの調べ」、スパークリングの一次発酵には「ゆうこの想い」、二次発酵には「7号酵母」を使用しています。
- 「澱引き」とはシャンパンでいうデゴルジュマンなのでしょうか?
- シャンパンだと瓶の中で澱引きをするのですが、当社のタンク内で行う澱引きとは方法が違いますが、澱を抜く原理は同じです。
- 世嬉の一酒造さんで缶仕様のお酒は作れるんでしょうか?
- 実は缶で造ろうと思って缶詰め機を既に購入済みなんです。
ただ、日本酒の醸造機械は高価なのでビールの缶詰め機を購入したら350ml缶規格だったので、150ml缶用に改造しないといけないなぁと思っています。
【佐藤航社長】オンライン酒蔵留学に登壇してみた感想
日本酒のオンラインの会は初めてだった佐藤社長ですが、ご自身のブログ(蔵元だより)でも今回のイベントの宣伝をしていてくれて楽しみにされている様子が伺えました。
ご登壇いただいている最中もビール醸造の知識を惜しげもなく披露してくれたり、留学生の意見を真摯に受け止めるなど非常に勉強熱心でチャレンジを楽しんでいるのがすごく伝わってきました。
是非、次回は留学生としてのご参加をお待ちしております!
そして、ビール好きのための日本酒の開発にも期待しています♪
まとめ
今回、佐藤社長のお話を伺って印象的だったのは、やはりビール醸造の知見を活かした日本酒造りでした。スパークリング日本酒の常識と思われていた瓶内二次発酵を超えるタンク内二次発酵に目を付けたのはさすがのビール醸造出身としか言えません。
そのほかにも細かいところでビール醸造視点の考えが伺えて、やはり造り手・飲み手ともに畑違いのお酒の世界を知ることが大事なんだろうと感じました。
一方で、機材の価格や流通の差などビール醸造と日本酒醸造の格差が浮き彫りになった気もします。
日本酒醸造の閉鎖的な現状を打開するためには、留学生の皆さんが考案したビール好きのための日本酒の実現が急務となるでしょう。
今回は、今後の日本酒の未来を考えさせられる非常に価値ある留学内容になりました!
引き続きチャレンジングな世嬉の一酒造を推していきたいと思います!!
また次回のオンライン酒蔵留学でお会いしましょう♪
佐藤社長、留学生の皆さん、今回はご参加いただきありがとうございました!
参加後の感想まとめ
- 今回初回の参加で、最初の紹介にも「今回は特別」という話がありましたが、事前に送られてきたお酒のボリュームに驚きでした。
ビールも日本酒も複数味わうことができてとても充実していました。 - 二次発酵タイプのスパークリングを常温保管してもokということがびっくりしました。
タンク内二次発酵という発想はビール醸造家だからこそ生まれた製造法であって目から鱗でした。
佐藤社長の話を聞いた後、みんなこれすれば良いのにと思うほど、一つの正解が見えた気がします。同時に日本酒業界は狭いところでやっていて他の業界との交わりにより、もっと発展するのではないかと感じました。 - お酒が4種類もある上に佐藤社長と直接お話ができる贅沢すぎる時間でした!
- 平均:5.0
- 平均:5.0
- 平均:4.6
- とても雰囲気よくオンラインの場を作ってくださっていて、初めてでしたが参加しやすかったです。
今後も機会があれば参加してみたいなと思いました。 - スパークリングのタンク内二次醗酵の技術にも驚かされましたが、私は「特別純米酒」の優しくて柔らかくて心地よい香りに感動しました。
今ある日本酒の当たり前を変え、今後の日本酒業界発展につながる世嬉の一酒造、佐藤社長をこれからもっと応援したいと思いました!
これからも美味しい日本酒を造ってください!期待しています!!ありがとうございました。
<次回予告>第46回 オンライン酒蔵留学 東鶴酒造・六代目蔵元 野中保斉氏
■次回日時:8月31日(土)19:00~
■登壇者:東鶴酒造 六代目蔵元 野中保斉氏
次回のオンライン酒蔵留学は、佐賀県の「東鶴酒造」から野中社長が再登場!
オンライン酒蔵留学が始まった当初の2021年、野中社長にはいち早くご登壇いただきました。
今年の5月に行われた第2回月間推し蔵ランキング(母の日におすすめの日本酒)で東鶴酒造さんが見事1位に輝いたことから再度注目させていただき、リバイバルという形で登場していただきます♪
平成元年を境に休業を余儀なくされた東鶴酒造を見事復活させたのが現六代目当主である野中保斉さん。
酒蔵復活の秘話やお酒造りに対する想いなどをお話ししていただきますので是非お楽しみに!
つくり手さんと「つながる」
つくり手さんの想いを「のぞく」
自分たちの世界観を「ひろげる」
次回もハンズオンポーズで乾杯!
※過去のレポート記事はこちらから!!