オンライン酒蔵留学とは?
オンライン酒蔵留学は、おうちにいながら地方のお酒の作り手さんとダイレクトにつながって、一緒に乾杯できる日本酒通販サービスです。
作り手さんの想いや人柄も味わうことができ、日本酒を通して「人生の学び」や「新たなつながり」が生まれます。
離れて暮らす仲間と「たのしく学ぶ」ことで、いつものお酒がさらに美味しく味わい深くなっていきます。
・酒蔵見学に行ってみたいけど、時間が取れない…
・もっと色んな日本酒の知識を増やしたい!
・日本酒好きの仲間が欲しい!
・酒蔵を応援していきたい!!
こういった想いを抱いている方には是非おすすめの場です!!
第54回 オンライン酒蔵留学

■日時:4月26日(土)19:00~
■登壇者:足立農醸 代表 足立洋二(あだちようじ) 氏
皆さんは「団地酒蔵」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?
大阪府高槻市にある富田団地。
その団地のわずかな一室に、世界進出を目指す大阪唯一のクラフトサケ醸造所があります。
それが「足立農醸」です。
日本酒に魅せられ、日本酒を世界に広めたい。
そして、農家さんをもっと前面に出して、農家さんが潤うお酒造り(農醸)をしたい。
代表の足立さんの言葉を聞いた時、「こんなまっすぐな人が成功する世の中にしなければならない。」そう強く思い、オンライン酒蔵留学にご登壇いただきました。
今回は、定番クラフトサケ「MIYOI(美酔)」とともに足立農醸の夢と魅力をたっぷりお届けします♪
足立農醸(あだちのうじょう)について


和食、そして日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録され、海外での日本酒需要が伸びている昨今。
日本国内では、新しいジャンルのお酒「クラフトサケ」の醸造所が徐々に増えてきており、注目を浴びています。
クラフトサケとは、日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら従来の『日本酒』では法的に採用できないプロセス(フルーツやハーブなどの副原料)を取り入れた新しいジャンルのお酒。
現在の酒税法では、需要と供給のバランスの均衡維持のため日本酒(清酒)製造免許の新規発行は原則認められていません。
こうした背景から、「日本酒を造りたい」という醸造家たちが日本酒に極めて近い醸造酒として、日本酒の製造過程に副原料を加えた「クラフトサケ」を誕生させました。
(※日本酒(清酒)は、「米、米こうじ、水を原料として発酵させて、こしたもの」とされるため、クラフトサケは法的には「その他の醸造酒」として区分されます。)
このクラフトサケは、オレンジやブルーベリーなどの果物をはじめ、ホップや塩など様々な副原料を使用することが出来ることからあらゆる可能性を秘めたお酒です。
その味わいも多種多様で、日本酒が苦手な人でもライトに楽しめるとして、市場で人気が高まっています。

そんな話題のクラフトサケですが、2021年(令和3年)、新たな醸造所「足立農醸」が誕生しました。
立ち上げたのは足立農醸代表の足立洋二さん。
場所は、大阪府高槻市にある富田団地。
昭和40年代から開発された総戸数およそ2600戸の団地の一画に、足立さん自らDIYでリノベーションしたマイクロブリュワリー。
大阪府唯一のクラフトサケ醸造所。そして「団地酒蔵」として今注目を集めています。
海外で日本酒の魅力を知った足立さんは、日本酒をもっと世界に広めたいと思い、青森県と兵庫県の酒蔵で日本酒造りを学びます。
そして、"世界を架ける日本酒を”をモットーに2021年に足立農醸を設立。
足立さん自らが耕作放棄地を復田し、米作りから壮大なプロジェクトはスタートしました。
目標はスイスでの酒造り。
その一歩目として2023年(令和5年)にクラウドファンディングを経て、富田団地にカフェと併設したクラフトサケの醸造所をオープン。
わずか8坪のスペースに最新鋭の機器を揃え、海外輸出向けの清酒とクラフトサケ「MIYOI(美酔)」の醸造を行っています。
足立さんが富田団地を選んだのは、一人で酒造りをするにはちょうど良い規模であるほか、水質が良いことが要因。
富田は、かつて24の酒蔵が存在していた酒造りの街。
きれいな水が豊富で、現在でも団地の3割の水が地下水から汲み上げられているほど酒造りに適した環境です。
こうして自ら土地を選び、自ら稲作をし、自ら酒を醸す。
足立農醸のお酒はまさに風土を伝える地酒そのもの。
そこに地域の農産物を掛け合わせることで、農家さんの想いを前面に伝えることが出来る。そして、新たな酒造りの魅力も伝えられる。
足立農醸は"農を醸す”というこだわりが詰まった酒蔵なのです。
足立洋二が海外で知った日本酒の魅力と課題

世界が驚くようなことをやってのける自称「ぶっとび男」。
熱い情熱があれば、何でも成し遂げられる。そう本気で想ってどんなことでもチャレンジしていく足立洋二さん。
足立さんが日本酒と出会い、ここに至るまでどのようなきっかけがあったのでしょうか?
1990年生まれ。大阪府出身の足立さんは、学生の頃より水泳選手として活躍してきました。
2009年(平成21年)、高校卒業後にさらなる水泳の道を目指しアメリカ・テキサス州の大学へ留学。
トライアウトに合格し、鳴り物入りで飛び込んだ足立さんでしたが、現地の環境や言葉の壁に直面し挫折を味わうことになります。
その後、水泳選手としての道を諦め、アメリカで大学や学課を変えながら自分探しの期間を過ごすことに。
そして、時が経ち2013年(平成25年)、足立さんが23歳の時でした。
当時アルバイトとして働いていた日本食レストランにて日本酒を提供したことがきっかけで日本酒の美味しさと魅力に気付きます。
目覚めたきっかけとなったのが東北銘醸(山形)が醸す「初孫」の純米酒。
あまりの美味しさに強烈なインパクトを受けたのだとか。

当時のテキサスでは日本酒の認知度が低く、扱いや飲み方も雑なものとされていました。
足立さんは、日本酒の本当の美味しさを広めていきたいと思い、日本酒担当の責任者として飲み比べの企画をプロデュースします。
これが見事に現地の人々にハマることに。
流通の悪い中、自ら厳選した日本酒を提供することで、現地の人々からは
「こんな美味しいものがお米から出来ているとは思えない!」
「なぜこんなにもフルーティーに仕上がるのか?」
などのリアクションをもらい、感動を与えました。
そして、この時、日本酒への可能性を感じ、日本酒が世界でブームになると確信したのです。

日本酒に希望を見出した足立さんは、2015年(平成27年)に大学を中退し、日本へ帰国。
神戸の日本酒バーで働きながら数々の日本酒をテイスティングし、日本酒の勉強に励む日々が続きました。
日本酒での道を模索している時、ある飲食店から「陸奥八仙」を醸す八戸酒造が大学生のインターンを受け入れていることを聞きつけ、同社の酒造りを1週間体験することに。
このことがきっかけで足立さんは、体験から2か月後に八戸酒造の蔵人として就職し、南部流の酒造りを学ぶこととなります。
入社1年目から酒造りを任され、新たな企画に携わるなど順調な蔵人生活を送っていた足立さんでしたが、転機が訪れます。
新婚旅行で訪れたフランス、スイス、ドイツのワイナリーやクラフトビール醸造所を巡った際、造り手から「日本酒はなぜあんなに不味いのか?」と思ってもみなかった言葉を問いかけられたのです。
当時のヨーロッパでは、飲食店で中国酒が日本酒として売られているような状況だったことから日本酒の認識自体誤ったものとされていました。
この現状を目の当たりにした足立さんは、「日本酒を世界に広める」「スイスにSAKE醸造所を設立して世界との懸け橋になる」と心に決めたのでした。
ゼロからの挑戦!足立農醸一歩目のチャレンジ酒「KOYOI」

海外での日本酒の現状を知り帰国した足立さんは、地元・大阪で酒造りを展開しようと八戸酒造を退職。
独立を前提に兵庫県丹波市の西山酒造場に勤めながら起業の準備を進め、2021年(令和3年)に足立農醸を設立。
ここから足立農醸第一歩目となる日本酒造りのプロジェクトが始まります。
まずは6年ほど使われていなかった丹波市の耕作放棄地を復田。
西山酒造場の農機を借り田圃を整え、害獣対策のため750坪の土地に電柵を一本ずつ打ち込んでいく日々。
ようやく息を吹き返した田圃で、米作りがスタート。
海外での酒造りを見据えて、対応力、可能性を広げる為、あえて食米であるコシヒカリを選択。
害獣被害を避けるため夜も見回りながら大切に育てていき、足立さんは酒造りで必要となる独自のお米、約1トンの量を完成させました。

こうして自ら育てたお米は、古巣である八戸酒造の協力のもと、委託醸造という形で使用し、足立農醸の第一弾となる日本酒が出来がりました。
その名も「KOYOI ラ・プレミア・アネー」。
目指したのは"磨かず綺麗であり、ワイングラスに合う日本酒”
口当たりと深みを両立させるため、精米歩合は普段口にする白米に近い80%に。
丁寧に仕込んでいき昔ながらの「袋吊り」で搾ることで洗練されたクリアな味わいに仕上げました。
口に含むと葡萄を想わせるほのかな香りが広がり、酒米とはまた違ったコシヒカリの優しい甘みを感じられる、今までにない日本酒の世界観が楽しめます。
様々な方々から支援を得て完成させた「KOYOI」は、なんと「ルクセンブルク酒チャレンジ2022」でいきなりの銅賞を受賞。
獣害被害が多発する地域での米作りや、コシヒカリでの日本酒造りは難しいと言われていた中、目標とする海外での醸造を見据え、どんな品種の米からでも美味しいお酒を作れるようチャレンジしたお酒。
この受賞により足立さんの努力と情熱が認められた形となりました。
団地酒蔵発!!クラフトサケ「MIYOI(美酔)」

足立農醸は、次の歩みへと進みます。
2022年(令和4年)に西山酒造場を退職した足立さんは、翌年の2023年(令和5年)にクラウドファンディングを経て大阪府高槻市にある富田団地にクラフトサケ醸造所を開設。
ここに日本初の団地酒蔵が誕生したのです。
前述の通り、現在の酒税法では清酒製造免許の新規発行が認められていませんが、海外での日本酒需要が高まってきた近年、2021年(令和3年)4月より、例外として海外向けの日本酒製造に限り規制緩和で新規参入が認められました。
そのため足立さんは、この団地酒蔵でクラフトサケに加えて、当初の目標であった海外輸出向けの日本酒を醸造できることとなったのです。

大阪産のお米と果物などを使って醸される足立農醸のクラフトサケ。
その名も「MIYOI(美酔)」。
これからはストーリー溢れる酒を楽しく、美しく酔う時代になってくるんじゃないかと。
そういう想いを込めて「KOYOI」から「MIYOI」へと昇華させました。
そして、はじめて造ったクラフトサケがこちらの「MIYOI Craft KIWI(ミヨイ クラフト キウイ)」。
使用しているのは、大阪府出身で情熱のある香川県のキウイ農家「深山のキウイ」さんの品種。
これまで日本酒のみ製造してきた足立さんにとって、発酵中のタンクに副原料を投入する行為には抵抗があったそうです。
しかし、剥いたキウイをドバドバと投入した瞬間、頭の中で何かが弾けるような衝撃が走り、クラフトサケ醸造家として気持ちが切り替わったとのこと。
完成したキウイのクラフトサケは、お米特有のキレイな甘味とキウイの酸味がバランスよく、プチプチと微発砲で白ワインのような口当たりが特徴のお酒へと仕上がりました。
その後もブルーベリーやコーラ、みかんなどを使用した「MIYOI(美酔)」を出品するなどチャレンジングなお酒造りで日本酒の間口を広げています。

「MIYOI(美酔)」のコンセプトは、"ワイングラスに合うお酒”。
華やかで飲みやすい酒質を目指すため白麹を使用するなど、大部分で八戸酒造で培った技術がベースとなっています。
フレンチやイタリアンなどと相性が良く、お米の旨味とフルーツなどの酸味や甘みが口の中をすっきりとリフレッシュさせてくれます。
ロックやソーダ割りなど様々な飲み方を楽しめるのもクラフトサケの醍醐味です。
スイスでの酒蔵設立を目標に掲げながら、国内でクラフトサケの道を選択した足立さんは、様々な農家さんと出会うことで刺激を受け、ものづくりの新しい可能性を実感しました。
農家さんの想いを直接聞いて、それを味わいやラベルに乗せていくことができる。
それはクラフトサケならではの楽しさ。
「MIYOI(美酔)」は、わずか8坪の団地酒蔵から農家さんの想いと造り手の楽しさが詰め込められたお酒なのです。
世界初!?たこ焼きに合うクラフサケとは!?

数ある日本酒及びクラフトサケの中で、いまだかつて「たこ焼きに合うお酒」というものがあったでしょうか?
ハンズオンSAKEが運営する日本酒特化型クラウドファンディング「SAKEクラファン」にて足立農醸がそれを実現させちゃいます!!
プロジェクト名は「たこ焼き3.0」
消費者がタンクオーナーとなり、1から酒質設計して酒蔵と共に新しいお酒をプロデュースするこのプロジェクト。
粉もんシリーズ第一弾として大阪名物「たこ焼き」に合わせるクラフトサケ開発に着手。
足立農場では初めての試みとして「麦麹」や「麦芽」を使ったお酒を開発していきます。
世界初?のたこ焼きに合うお酒。一体どんなお酒が出来がてくるのか楽しみです!
※たこ焼き3.0プロジェクトの詳細はこちらからご覧いただけます!
↓ ↓ ↓
今回のオンライン酒蔵留学では、留学生から「お祝い時のオリジナル酒」や「47都道府県各地の副原料を使用したクラフトサケ」などを開発しても良いかもというアイディアが出されました。
マイクロブリュワリーの足立農醸だからこそ実現できるお酒がある。
今後、私たちにどんなワクワクするお酒を魅せてくれるのでしょうか?
期待が高まります。
【足立農醸】
〒569-0855
大阪府高槻市牧田町7番55-109
HP:https://adachi-noujo.com/
足立農醸のクラフトサケをレビュー♪

MIYOI(美酔)ライチ12°

足立農醸唯一の定番酒。
「MIYOI(美酔)」は基本的に国産の果物を使用しているため季節商品となりますが、このライチは、主に台湾産などの輸入品を使用しているので年間通して造ることが出来る主力商品です。
お米には高槻産キヌヒカリを使用し、搾る直前にライチの果汁を添加。
フワッとライチの華やかな香りを楽しみながら、食事の邪魔をしないようキレのある一本に仕上がっています。
今回お届けいただいたのは、3月半ばに搾ったばかりの商品でしたのでピチピチフレッシュな味わいをお楽しむことが出来ました♪
足立さんおすすめのペアリングは、「ささみの梅肉和え」や「グレープフルーツと新玉ねぎのサラダ~塩麹ドレッシングがけ~」。
ライチの酸味と梅や柑橘系の酸味が同調して豊かなハーモニーを奏でてくれます♪
足立農醸Q&A
今回の留学中に挙がった足立さんへの質問を一部ご紹介します。
- フルーツはどの段階で投入するのですか?
- フルーツの種類によりますが、搾る当日や前日など直前に投入します。
早くに投入すると香りが飛んでしまうことがあるので、今は直前にしています。 - フルーツは果汁のみですか?果肉も投入するのですか?
- ミキサーにかけた果肉も投入します。
パイナップルなどの繊維質のものは残ってしまうので一度火入れをすることで、繊維が破壊されて香りも立ちます。 - 足立農場のラベルにはカエルがよく登場しますが、何か意味があるのですか?
- 起業した際に田圃一枚から始まって、害獣対策の夜回りなどしんどい時にカエルの鳴き声が唯一の癒やしだったので、カエルをモチーフにしています(笑)
<次回予告>第55回オンライン酒蔵留学 倉本酒造 七代目蔵元 「倉本隆司」氏

■次回日時:5月31日(土)19:00~
■登壇者:倉本酒造店 七代目蔵元 「倉本隆司」氏
倉本酒造株式会社は、1871年(明治4年)に創業された奈良県奈良市都祁吐山町に位置する老舗の酒蔵です。
奈良の山間部、標高約500mの地にあり、寒暖差の大きい気候と自家栽培の酒米、裏山から湧き出る軟水を活かした酒造りを行っています。
ご登壇いただくのは七代目の倉本隆司さん。
杜氏として蔵を率いている蔵元さんから日本最古の酒母「菩提酛」について詳しく学んでいきたいと思います。

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次回もハンズオンポーズで乾杯!
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